「何だいこのぐらいの傷、ぼくはまだ全然へこたれてなんかいないよっ!!」
ガバッと勢いよく起き上がる聖戦士クリムは、「おおトロの剣」を構えます。
「私だって、こんなの気にしませんから!」
「アタシだってそうさ、"炎のヘクトム"なんかで決着がつくと想われたら困るのよね!!」
神官マルミも魔女ケレナも、まだまだ元気いっぱいでした。
「おとなしく観念すれば、それだけ苦しみも少なくなると云うのに。まぁよいであろう、私もまだなぶる愉しみが足りんトコロではある。踏みにじって叩き潰してやろう、炎のヘクトム!」
呪文を唱えた女帝ゾフィネーヌのてのひらから、再び6発の火の玉が魔女ケレナに向かって放たれます。
「ケレナさんこれで防いで、う〜さ〜ぎ〜お〜いし〜か〜の〜や〜ま〜」
神官マルミが理力を詠唱すると、魔女ケレナのすぐわきにバリアーが出現しました。
「ありがとマルミ、アタシって一方的にやられるの性に合わないの、炎のヘクトム重ねがけ!!」
神官マルミの用意したバリアーに守られながら、魔女ケレナも魔法で応戦します。女帝ゾフィネーヌと魔女ケレナがお互いに撃ち合った魔法の火の玉が、空中で激突し爆発しました。魔女ケレナが撃ち墜とし切れなかった炎のヘクトムは、バリアーに当たってぼよんぼよん跳ね飛ばされます。
「ケレナ、ゾフィネーヌから距離をとるんだ。格闘するのは、ぼくに任せて!」
魔女ケレナの後方から、聖戦士クリムが猛然とダッシュをかけました。
「オッケー、アタシは後方から援護するわ。クリム、任せたよ!!」
聖戦士クリムと魔女ケレナは、すれ違いざまにハイ・タッチを交わします。
「ゾフィネーヌいくよ、"おおトロの剣"の威力みせてあげる、灼熱の旋風!」
走り込んだ聖戦士クリムは、そのまま体を炎の渦と化させました。
「フン、全くツまらんな。全く見飽きたと云うモノだ、その灼熱の何とやらは。私は神になるのだ、神はお前のようなちっぽけなる存在に斟酌せん!!」
無数の剣が、女帝ゾフィネーヌと地獄の破壊ねこ「メギムトゥ」の周りを回転し始めます。炎をまとって回転する聖戦士クリムと、無数の刃の竜巻が激突しました。
「勇者とやら、その程度の力なのか?退屈であくびがでそうだ、どれもう少し剣を早く回してやろう」
「もう少し、もう少しなんだ。あと少し、ぼくに力があれば」
聖戦士クリムの「灼熱の旋風」と女帝ゾフィネーヌの「剣の舞い」の激突はは、「剣の舞い」に軍配があがりそうです。全力で回転する聖戦士クリムですが、徐々に徐々に押し返されていきました。
「クリムさんがんばって下さい、さ〜い〜た〜さ〜い〜た〜チューリップのは〜な〜が〜!」
理力を神官マルミが歌うと、女帝ゾフィネーヌの周りを金色の輪が取り囲みます。
「ええいうっとしい、こんなモノが何になると云うのだ!!」
女帝ゾフィネーヌは金色の輪を掴むと、そんまま力任せにねじ伏せました。しかしその時、ほんの一瞬ですが「剣の舞い」の回転スピードが、わずかに落ちたのです。
「よし今がチャンスだ、いくよこれがぼくの全力全開だ!」
そのほんのわずかなチャンスを逃さず、聖戦士クリムは無数の剣の竜巻を突破していき一撃を加えました。
「ぐ、ぐわ〜、神である私が、こんなちっぽけなる存在に傷を負わされただと。これは冒涜である、決してあってはならんコトだ!!」
地獄の破壊ねこ「メギムトゥの唸り声と、女帝ゾフィネーヌの怨嗟の苦しみが、マルトム・クルメ城の大広間に響き渡ります。