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クリスマスの奇跡 2

トントンと、戸を叩く音がする。

キリスト「ごめんくださーい!」

お春「おや誰だろう、こんな時間に大きな声を出して。お客さんは皆帰ってしまったし…。誰かうっかりした者が、忘れ物でも取りに戻ってきたんだろうか?」

キリスト、堂々と登場し、客席を向いて。

キリスト「私は神の子、イエス・キリストである。」

お春特に気にとめる様子もなく。

お春「あら、何ですか、あなたは?何だか黒く光っていて、胡散臭い…。」

キリスト、カッとなって。

「神に向かって、胡散臭いとは何事だ。お前には、恐ろしい神罰が下るであろう!」

お春、ムッとして。

お春「神罰が下るって、それはバチが当たるといういう事ですの?それなら、やってごらんなさい。うちは真言宗ですから、きっと大日如来様が、お守り下さいますわ。」

キリスト、悔しそうに。

「うむむ…、それを言われると、弱い。他の神様とは、正直もめたくないんだよなあ。人間達はそれを理由に、すぐ宗教戦争をおこすから。その度に、こっちは天にいるお父様から、こっぴどく言われるんだ。」

お春、イライラして。

お春「で、一体何の用ですの?」

キリスト、ハッとして。

キリスト「うん、そうだ。今日は、私の誕生日なんだ。めでたいだろう?」

お春、そんな事言われても、といった様子。

お春「あなたが神様だって言うなら、めでたいんでしょうね?」

キリスト「そうなんだ。だから、そんな日にお葬式を出しているお前さんが、可哀想だと思ってね。何か、願いを叶えてあげようかと思って、訪ねたんだよ。」

お春、キッパリと。

お春「結構です。確かに私は悲しいですけど、見たこともない神様に同情されるほど、惨めな生き方はしていません。」

キリスト、困りながら。

キリスト「いや、そうじゃないんだよ…。これは神の愛だから、人間の安っぽい同情とは、訳が違うんだよ。わからないかなあ…。」

お春、再びキッパリと。

お春「結構です。お引き取り下さい。」

キリスト、ずるそうに。

キリスト「わかった。じゃあ、お金をあげよう。それも、沢山。これから生活していくのに、お前には必要だろう?」

お春、怒りながら。

お春「許せない!あなたは私を、馬鹿にしているのね。そんな人を誘うようなことを言って…。とても、神様とは思えない。人を誑かす、狐狸妖怪の類ね。」

キリスト、憤慨して。

キリスト「なんて事だ!私は神に祈る事で、人々の為にそういったものを、滅ぼしてきたというのに!もう、嫌だなあ…。早く天国に帰りたいよ。でも天のお父様が、このおばあさんの願いを叶えてあげなさいと言うから…。こっちの苦労も知らないで。天のお父様も、自分でやればいいのに。」

お春、同情して。

お春「私、何だかこの人が、可哀想になってきたわ。根は悪い人じゃなさそうだし…。あら、そういえば人じゃなくて、神様だったわね。でもそんな事、この際どっちでもいいわ。わかりました、キリスト様。あなたに、私の願いを叶えて頂きたいと、思います。」

キリスト、喜んで。

「本当かい!?それは、よかった。じゃあ早速、願っておくれ。」