クリスマスの奇跡 3

お春、得意げに。

お春「じゃあ私に、ヴィト⚪︎のバッグを下さい。でなければ、コー⚪︎でもいいわ。」

キリスト、面食らって。

キリスト「ええ!?お前はおばあさんなのに、そんな物を欲しがるのかい?」

お春、すましながら。

お春「あら、何もわかってらっしゃらないのね。女というのはね、いくつになっても女なの。それにね、おばあさん、おばあさんって、言わないでくれる?私にはね、お春っていう立派な名前があるの。失礼しちゃうわ。」

キリスト、情けなそうに。

キリスト「さっきはつい、お金を出すなんて言ってしまったが…。クリスマスに、ヴィ⚪︎ンのバッグを贈るなんて、その辺の若造じゃないんだからなぁ…。」

お春、ツンとして。

お春「神様なのに、願いを選り好みしますの?ケチな神様ね。じゃあ、いいですわ。ウンとまけて、と⚪︎屋の羊羹を下さいな。私は、甘い物が大好きですし、今日はずいぶん疲れました。甘い物を食べて、疲れを取りたいと思います。」

キリスト、慌てて。

キリスト「いかん、いかん。そんな事を祈ったら、天にいるお父様に何を言われるか、わからない。大体おかしいだろう?私が、天にまします我らの神よ、この者に美味しい⚪︎ら屋の羊羹をお授けください、なんて祈ったら。値段の高い安いじゃ、ないんだよな。そういうのは、お店に行けば買えるんだから。もっと神様にしか出来ないような、そんな願いを頼むよ。」

お春、困って。

お春「異国の神様って、ずいぶん注文が多いのね。」

お春、悩んで。

お春「そうだ!私には、果たしたい思いがあるのだった。しかし、庄助さんを亡くしたばかりだというのに、そんな事を願っても、果たして赦されるものだろうか?」

キリスト、威厳を取り戻して。

キリスト「どんな願いでも、いい。

私が祈れば、それはたちまち叶うのだから。」

お春、心に決めて。

お春「では、キリスト様。私を、若い頃に戻してください。私には、思い残した事があるのです。それを、何としても取り戻したい。」

キリスト、考え深い表情で、少し間を置き。

キリスト「よし、わかった。とりあえず、今晩は寝なさい。そうして明日、目が覚めたら、お前は若い自分に、戻っている。でも、その事で何が起ころうとも、お前は自分で、その責を負わねばならない。わかっているね?」

お春、決意は固い。

お春「どんな事が起ころうとも、決して後悔は致しません。」

キリスト「よかろう、じゃあ寝なさい。」

キリスト、退場する。

お春、床に着く。