桃太郎 後編

こうして、桃太郎と三匹のお供は、鬼ヶ島にやって来ました。

鬼「ガハハ、よく来たな、桃太郎!お前の名前は、聞いている。しかし、俺たちを征伐しようなんて、生意気な考えを持つのが、お前みたいなチビ助だとは。俺たちも、舐められたものだな!」

桃太郎「よし、いいぞ。鬼達は、私達が子供と、獣たちだと知って、侮っている。これなら、勝機はあるかも知れない。どんなに力があったとしても、敵を侮っていては、勝てる戦いも、勝つことは出来ないのだから。よし、行くぞ皆んな!力の限り戦って、鬼達を征伐するんだ!」

しかし、お供の三匹は動こうとしません。桃太郎はイライラして、呼びかけました。

桃太郎「どうしたんだ、お前達?何をグズグズしている。今、その持てる力を発揮しなかったら、いつ発揮するんだ?」

犬「アイタタタ、持病の腰痛が…。」

猿「てやんでえ!そういや、急用を思い出した。今日は、親父とお袋の三回忌だった…。」

雉「いきなり戦うなんて、モラルに反します!先ずは、話し合わないと…。」

桃太郎「何ということだ、このけだものどもめ!今まで散々大きな口を叩いておいて、いざ戦いの場に望んで尻込みするとは!頭に来たぞ。こうなったら、この吉備団子を、全部私一人で平らげてやる!思い知れ、この畜生どもめ!」

しかし、桃太郎が吉備団子を食べると、体から不思議な力が湧いてきました。

桃太郎「何だ、この感じは…。体の底から力が、湧いてくる。この吉備団子は、何か特別な物だったんだろうか?いや、今はそんな事を考えている時では、ない。よし、鬼どもめ、かかってこい!この桃太郎、たった一人でも、力が尽きるまで戦うぞ!」

こうして、桃太郎は鬼達を征伐し、金銀財宝を手にして、帰路に着きました。

桃太郎「お前達は何もしなかったんだから、支払う物は何も無いよ。このまま、元の生活にお戻り。」

しかし、三匹は酷い侮蔑だと憤慨して、口々に叫びました。

犬「何を言ってるんですか、桃太郎さん!私達は、あなたに着いてはるばる鬼ヶ島まで、来たんですよ。その分の旅賃と、時間給をもらわないと!」

猿「そのとおりだ。裁判所に、訴えて出るぞ!」

雉「契約不履行です。あなたをブラックな経営者として、ネット上で炎上させますよ?」

桃太郎は、もうどうにでもなれといった気持ちに、なりました。

桃太郎「わかった、わかったよ。皆まで言うな。三匹とも食べたいお店に行って、好きなだけ食うといい。」

こうして三匹は、それぞれがそれぞれに、行きたいお店に行って、お店が閉店するまで、食べました。

こうして、桃太郎は鬼ヶ島から持ち帰った金銀財宝を、全て使い果たしてしまったのです。

桃太郎「わざわざ鬼ヶ島まで行って、鬼を残らず征伐したというのに、金銀の一欠片も、持ち帰ることが出来なかった。情けなくて、二人に会わせる顔がないが、ともかくそこが我が家なのだから、帰らないことには仕様がない。」

桃太郎は、しょんぼりと戸を開けました。

桃太郎「桃太郎です。今、戻りました。」

おじいさんとおばあさんは、大喜びで迎えます。

おじいさん「桃太郎、よく帰ってきた。鬼達を征伐することは出来たのか?」

おばあさん「おかえり、桃太郎。どこも怪我はないのかい?」

桃太郎「二人のくれた、名刀と吉備団子のおかげで、無事鬼達を征伐することができ、私はその事でかすり傷一つ、負っていません。しかし、私が愚かであったばかりに、金銀財宝は全て失う羽目に、なりました。

私は恥ずかしくて、もうこの場で命を絶ってしまいたい…。育ててくれた恩義に、何も報いる事が出来なかったのですから。」

おばあさん「バカなことを、言ってはいけません。私達の金銀財宝は、もうすでにこの手にあるのです。」

桃太郎「何を言っているのですか?

私は、何も持ち帰れなかったのですよ。」

おばあさん「私達にとっての金銀財宝は、他でもないあなたです。あなたさえ、無事に戻ってきたくれたのだったら、私たちには何も言うことは、ありません。」

おじいさん「うん、お前の言うとおりだ。私達は血はつながってこそいないが、お前は立派な息子だ。金銀財宝などを求めるより、いつか孫の顔でもみせてくれれば、わしは満足だよ。」

おばあさん「ほら、そんなところに立っていないで、早くお上がりなさい。ここはお前の家なのだから。何もないけれど、吉備団子ならいくらでもあるから。いつ、お前が戻ってきてもいいように、こしらえておいたんだよ。」

桃太郎は、吉備団子を一口食べて、つぶやきました。

桃太郎「美味いなあ…、美味い美味い。私はこの味を、生涯忘れないだろう。」


テーマ曲 「ごめんね」ふくろうず

ふくろうず「ごめんね」 - YouTube






おまけ

どうも、こんにちは。

オートマールスムです。

正教会で、洗礼を受けてます。

この作品の元ネタは、榎本俊二先生の「えの素」。

最初に再話した、作品です。

寝ていたら、きびだんごに文句を言い出す、犬、猿、雉、というのが思い浮かんで、一気に書き上げました。

ぼくは桃太郎、いい奴だなって、思うんです。

思い上がったところも、あるけど。

最後のシーンが、とても好きです。

でももしかしたら、偉いのは、おじいさんとおばあさんかも、知れませんね。

それでは、さようなら👋。