金太郎 前編

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昔々あるところに、男の子とそのお母さんが、住んでいました。
男の子の名前は、金太郎と言います。
お母さんは、一人息子の金太郎を、それはそれは大事に育てました。
ある時お母さんは、金太郎に、とても大きな腹掛けを、与えました。
お母さん「金太郎や、その腹掛けを身に付けなさい。」
金太郎「でもお母様、この腹掛けは私には、大き過ぎる様です。ほら、私の全身が、すっぽり収まってしまうでは、ありませんか。」
お母さん「金太郎、あなたにはこの母の愛が、わからないのですか?これはそなたが、一刻も早く大きくなれる様、母が願を掛けて縫ったものです。これからは、寝てる間も、覚めてる間も、その腹掛けを身に付けて過ごしなさい。」
金太郎「わかりました、お母様。」
またある時は、大人でも持ち上がらない程、重たい鉞を与えました。
お母さん「金太郎やこれからは、この鉞を使って、薪を割りなさい。」
金太郎「でもお母様、この鉞は、私には重過ぎる様です。だってほら、見てください。私には、ぶら下がることは出来ても、とても持ち上げることは、出来ませんよ。」
お母さん「金太郎よ、あなにはこの母の愛が、わからないのですか?この鉞はそなたに、誰よりも強くなって欲しいと、願をかけて与えるのです。これからは、毎日この鉞を使って、薪を割るのです。」
金太郎「わかりました、お母様。」
こうして金太郎は、誰よりも大きく強く、育っていきました。
さて、金太郎の友達といえば、人間の子供達ではなく、動物の子供達でした。
子ダヌキや、子ギツネ。
子ウサギに、子リスといった仲間達と、いつも楽しく遊んでいました。
ある時金太郎は、仲間達につぶやきました。
金太郎「なあ、お前達。私には、わからないことがある。私のお母様は、何故あんな無理難題ばかり、私にふっかけるのだろう?私といえば、たった一人のお母様だから、深く、深く愛してやまないのに…。」
この問に、ある者は、それは母の愛だ、と答えました。
またある者は、愛していないからだ、と答えました。
しかし仲間の内で、最も賢い子ギツネは、こう答えたのです。
子ギツネ「それはね、人間だからですよ。人間というものは、ずる賢くて、汚いものなのです。だって、思い起こして、ご覧なさい。人間達ときたら、山で何をします?山を荒らす、私たちの命をとる、やりたい放題じゃありませんか。金太郎さん、失礼ですが、あなたもその人間の仲間なのです。子供のうちは、いい。でも大人になって、悪い心が芽生えてくると、きっと他の人間達と、同じ事をするでしょうよ。」
金太郎は恥ずかしくなって、その場から逃げ出しました。
そして一人になって、こう天に向かってつぶやいたのです。
金太郎「何で私は、こんな汚らわしい人間に、生まれたのだろう?私はあの、誇り高い熊に生まれたかった。実際、熊といえば、山の王者だ。どうしたら、あんな風に生きられるのだろうか…?」
あくる日から金太郎は、山の仲間達と連れ立って、人間相手に悪さを始めました。
山に入ってきた猟師を、自慢の怪力で投げ飛ばしたり、人間達が苦労してかけた橋を、鉞を振るって、粉々にしたりしたのです。
しかし、金太郎のお母さんは、日々の忙しさにかまけて、金太郎の変化に、何一つ気づきませんでした。