伝次郎は、またアリスを部屋に、呼びました。
そして、今日の顛末を、残らず聞かせたのです。
アリス「それは、何とも恐ろしい事を…。しかし、伝次郎様。私、思い上がったことを、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
伝次郎「聞くが、いいだ。遠慮はいらねぇよ。」
アリスは、少し黙って、それから伝次郎の目をまっすぐに見て、言いました。
アリス「それはこの、アリスの為でございますの?」
伝次郎は、大笑いしました。
伝次郎「ワッハッハッハ!お前さんは、面白いことを言うべなぁ。このおらが、女子の為に命を賭ける…。クックック。そんな、男に見えるだか、このおらが!?」
アリスは、頬を赤らめて、静かに頷きました。
それきり、伝次郎も黙ってしまいました。
しばらく時が過ぎてから、突然アリスは叫びました。
アリス「抱いて下さい、伝次郎様!」
伝次郎「えっ!?」
アリス「この私めに、女としての悦びを、教えてください!」
アリスは、伝次郎にすがりつきました。
しかし伝次郎は、アリスを優しく引き離し、こう言いました。
伝次郎「ダメだど、アリス。おら達は夫婦じゃねぇだ。夫婦じゃねぇのに、そんな事やらかしたら、きっと天の神様が、おら達にバチを、当てるだで…。」
アリスは、目を伏せました。
その頬には、涙が伝いました。
アリス「では、伝次郎様…。私達二人が、もしこの館を出られたら、私めを、このアリスを妻に迎えて下さいますか!?」
伝次郎は、ニッコリ笑って、こう言いました。
伝次郎「おお、もちろんいいだよ。ウチとしても、助かるだ。ウチのおっ母は、体が悪くてな…。もし、お前さんが来てくれるっちゅうなら、大大歓迎だべ!」
アリスは、喜びに身を震わせて、こう言いました。
アリス「伝次郎様…。今のお言葉でこのアリス、ルシファーと戦う覚悟が、決まりました。」
アリスは、堪えるようにうつむき、しばらくして、口を開きました。
アリス「伝次郎様、あなたは心の強いお方…。しかし、これから私はあなた様に真実を、お話申し上げようと、存じます。
伝次郎「うん、そうか。じゃ、頼むだ。」
アリスは、厳かな調子で、語り始めました。
アリス「お気を強く持って下さいまし、伝次郎様…。私が語るのは、ルシファーの、この館の、そして…。」
伝次郎「うん?」
アリスは、再び目を伏せて、こう言いました。
アリス「この私達の、真実でございます…。」