真夏の夜の夢 8

伝次郎は、またアリスを部屋に、呼びました。

そして、今日の顛末を、残らず聞かせたのです。

アリス「それは、何とも恐ろしい事を…。しかし、伝次郎様。私、思い上がったことを、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

伝次郎「聞くが、いいだ。遠慮はいらねぇよ。」

アリスは、少し黙って、それから伝次郎の目をまっすぐに見て、言いました。

アリス「それはこの、アリスの為でございますの?」

伝次郎は、大笑いしました。

伝次郎「ワッハッハッハ!お前さんは、面白いことを言うべなぁ。このおらが、女子の為に命を賭ける…。クックック。そんな、男に見えるだか、このおらが!?」

アリスは、頬を赤らめて、静かに頷きました。

それきり、伝次郎も黙ってしまいました。

しばらく時が過ぎてから、突然アリスは叫びました。

アリス「抱いて下さい、伝次郎様!」

伝次郎「えっ!?」

アリス「この私めに、女としての悦びを、教えてください!」

アリスは、伝次郎にすがりつきました。

しかし伝次郎は、アリスを優しく引き離し、こう言いました。

伝次郎「ダメだど、アリス。おら達は夫婦じゃねぇだ。夫婦じゃねぇのに、そんな事やらかしたら、きっと天の神様が、おら達にバチを、当てるだで…。」

アリスは、目を伏せました。

その頬には、涙が伝いました。

アリス「では、伝次郎様…。私達二人が、もしこの館を出られたら、私めを、このアリスを妻に迎えて下さいますか!?」

伝次郎は、ニッコリ笑って、こう言いました。

伝次郎「おお、もちろんいいだよ。ウチとしても、助かるだ。ウチのおっ母は、体が悪くてな…。もし、お前さんが来てくれるっちゅうなら、大大歓迎だべ!」

アリスは、喜びに身を震わせて、こう言いました。

アリス「伝次郎様…。今のお言葉でこのアリス、ルシファーと戦う覚悟が、決まりました。」

アリスは、堪えるようにうつむき、しばらくして、口を開きました。

アリス「伝次郎様、あなたは心の強いお方…。しかし、これから私はあなた様に真実を、お話申し上げようと、存じます。

伝次郎「うん、そうか。じゃ、頼むだ。」

アリスは、厳かな調子で、語り始めました。

アリス「お気を強く持って下さいまし、伝次郎様…。私が語るのは、ルシファーの、この館の、そして…。」

伝次郎「うん?」

アリスは、再び目を伏せて、こう言いました。

アリス「この私達の、真実でございます…。」