鶴の恩返し 後編

鶴美はそれからも、ずっと家でごろごろしていました。

しかしその割には、よく食った。
鶴美は、寿限無の家で、寝泊りしている内に、どんどん肌ツヤが、良くなっていきました。
その様子を見て、寿限無は心配になりました。
寿限無「鶴美、君がこの家に来てから、家計は逼迫している…。エンゲル係数って、知ってるかい?」
鶴美は、寝転んで頬杖をつきながら、non-n⚪︎を眺めて、こう言いました。
鶴美「この服、かっわいいー!今度、彼氏に買ってもらおうかなあ?」
寿限無は、その彼氏というのが、自分なのか、それとも誰か、他の男の事なのか、判断がつきませんでした。
寿限無「君には、彼氏がいるのかい?」
鶴美は侮蔑されたと思い、逆上して言いました。
鶴美「あったりまえでしょ!彼氏ぐらい、いるに決まってるじゃない。あんた、バカなの?」
寿限無は、自分の立ち位置が、全く見えなくなって、尋ねました。
寿限無「鶴美…、君は何故、ここにいる?」
鶴美は屁をこきながら、答えました。
鶴美「恩返しだから。」
 
寿限無は、鶴美を養うべく、一生懸命に働きました。
毎日毎日、お好み焼きばかりを食べていたのです。
それは寿限無がお母さんから習った特製の焼きそばで、仕上げに顆粒のコンソメをパラパラと振るのだ。
しかし寿限無の体は、決して強くはなかった。
その内に働き過ぎて、体を壊し、寝込んでしまいました。
寿限無「鶴美、私はもうダメだ…。働けない。」
鶴美は舌打ちし、「使えねー、こいつ。」と、モゴモゴ言いました。
寿限無の胸は、哀しみに染まりました。
寿限無「何とか君の力で、少しでも稼ぐ事は、出来ないだろうか…?私が、よくなるまででも、いいから。」
そう言われて鶴美は、しぶしぶでしたが、何か出来ることはないかと、家の中を見て回りました。
そうすると、離れに機織り小屋があり、その中には古い物でしたが、まだ使える機織り機が、あったのです。
鶴美「おっ!機織り機。ああ、そっか。これで反物でも織れば、それで恩返しになるから、さっさとかえれるじゃん!よかったあ。ホント退屈なんだよな、あのオヤジ。糸、ある?」
寿限無は、ゴホゴホと咳き込みながら、物置から、糸を取り出してきました。
鶴美「私さー、機織りホントに、得意なんだよね。私の作品売ったらさ、金持ちになっちゃうよ?」
寿限無は、そんな事はどうでもいいから、生活さえ出来れば…、と思いました。
鶴美「じゃあ私、機織り小屋に泊まり込むから。覗かないで、いい?」
寿限無は、起きているだけで精一杯だったので、首を縦に、カクカク振りました。
 
翌朝。
鶴美「オッサン、起きろよ。」
寿限無は鶴美に、頭を蹴飛ばされました。
寿限無「もう、朝か…。鶴美、機織りはどうなった?」
鶴美は、朝陽を背にして、恭しく両手を差し出しました。
寿限無「こ、これは…。」
差し出された両手には、何かのボロ切れが、力強く握られていました。
鶴美「私、オッサンの為に、がんばっちゃった!彼氏にだって、機織りなんて、してあげた事無いのに。」
寿限無は、ボロ切れを受け取りましたが、どうしたらいいか、わかりません。
鶴美「じゃ、それ売りなよ。これで、恩は返したから。後、私鶴だから。」
寿限無が、事態を把握出来ずに、口をパクパクさせていると、鶴美は舌打ちし、「マジ、うっざ!」と、モゴモゴ言いました。
そうして鶴美は、美しい鶴に身を変え、飛び去って行きました。
 
寿限無は、鶴美が去ってから、病気も良くなり、再び薪を取り出しました。
そうこうしているうちに、冬が来ました。
辺りは、一面雪景色です。
寿限無は、山を下りる途中、お地蔵様を見つけました。
懐には、鶴美の織った、ボロ切れがあります。
寿限無「いやいや、そういう問題では無いのだ…。」
 
テーマ曲 「デモクラシークレット」 パスピエ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
おまけ
どうも、こんにちは。
オートマールスム(白)です。
好きな映画監督は、ジャン・リュック・ゴダールフランソワ・トリュフォールイ・マル監督。
まあ、そんな感じです。
観ても、訳がわからないですけどね。
でも、大好きです。
元ネタは、小津安次郎監督の、「生まれてはみたけれど」
いやあ、完全に失敗作でした。
笑っちゃうほど、面白くないですね。
気楽な話を書こうと、気楽に始めたんですが…。
気楽な話を書くのは、決して気楽ではない、と思い知らされました。
撤去しても、と思ったんですが、恥をかくのも精神修養の内と、公開し続けます。
申し訳ないです。
それでは、さようなら👋。