美しき詩人の愛 2

「頼りない天使」
天国に、メトカという名前の、天使がいました。
メトカは、まだ見習いの天使で、天使の学校に通っていました。
しかし、天使としては落第生で、お父様の有難い話も上の空だったし、聖書もろくろく読み込んでいませんでした。
ある時メトカは、雲の切れ間から、地上を覗き込みました。
そして、思いました。
メトカ「人間て、バカだな。皆で仲良くすれば、サタンだろうがルシファーだろうが、あっという間に地獄に放り込めるのに…。ぼく達天使が、こんなに苦労するのは、人間がバカだからだ。」
その時、お父様の声が、轟ました。
お父様「天使メトカよ!お前は、地上に生きる人々の愛を、何も理解していない。私は、お前に授けた、全ての力を剥奪する。お前は、力ない人間として、地上に堕ち、人々の愛について、学ばなければならない!」
メトカは目が眩み、その場に倒れました。
そして再び目を覚ました時、そこは地上の街の雑踏の中でした。
メトカは、どこに行っていいのかわからず、途方に暮れて座り込んで、行き交う人々を眺めていました。
女の子「はい、これあげる。」
差し出された小さな手には、アメ玉が乗っていました。
メトカは何も考えず、アメ玉を口に放り込み、女の子を見上げました。
女の子「あたし、マルワ。花売りを、しているの。あなた、どこの子?」
メトカは、マルワとすぐに打ち解け、友達になりました。
マルワは、メトカに行くあてがない事を知ると、家に来るように、言ってくれたのです。
マルワ「ウチのお母さん、口は悪いけど、根はいい人だから、大丈夫よ。」
マルワは、メトカを家に案内しました。
しかし、メトカのお母さんは、口が悪いどころではなく、大変気性の荒い女性だったのです。
マルワが、メトカの話をするなり、ほうきを振り上げて、マルワを追い回しました。
お母さん「あんたは、ウチにどれだけ、お金がないか、知っているでしょう!私だって、女中の仕事をして、クタクタになって、帰ってきたところだっていうのに!犬や猫の子じゃないんだ。さっさと、元いた場所に、戻しておいで!」
マルワは慣れたもので、振り下ろされるほうきを、器用にかい潜りながら、訴えました。
マルワ「明日から、この子と二人で、花売りをするつもりよ!そうすれば、二倍のお金が入ってくるでしょ?その方が、きっとウチの為になるわ!」
お母さんは、肩でぜいぜいと、荒く息をしながら、根負けして妥協しました。
しかしその妥協案は、厳しいものでした。
お母さん「それなら明日から、あなた達の食事は、その売り上げの中からしか、出さないからね!もし、花が売れなかったら、あなた達は何も食べられない。それでよければ、置いてあげるよ!」
メトカは、その了見の狭さに、怒りを感じました。