聖書・ルカ伝 6

ルカは、夜の公園のベンチに、一人寂しく座っていました。

手には、そこの自販機で買った、オランジーナが握られています。
ルカは、ちっとも面白くなかったのです。
コピンの事が。
何とかして言いくるめてやりたくて、必死に知恵を巡らしました。
ルカ「あの天使は、思い込みや無知蒙昧に、凝り固まっている!真実が見えておらず、蛮族がそうする様に、闇の教えに、魂を引きづられているのだ。」
ルカはオランジーナを、汚らしくすすりました。
ルカ「作品とは、常に作家の魂の、投影なのだ!そこに描かれているのは、形を変えた作者自身の姿で、そこには他者など、入る余地がない。だからこそ、作品に向き合う時、作家は自らの客観性を頼まねばならん。それがなければ、それはただのエゴイズムや、汚らしい自慰と同じなのではないか。そんな物は、作品とは言えん!作品とは、常に高貴で美しくなければ、ならない…。」
ルカは、星空を見上げました。
その時、コピンが最後に言った言葉が、繰り返し思い出されて来ました。
「客観的にって言うなら、コピンちゃんの主張に従いなさい。」
ルカは、うつむきました。
ルカ「そうだ…。私は、客観的に判断する。他者の主観は、私にとって客観である。それならば私は、コピンの意見を聞き入れなければ、ならないのだろうか…?」
ルカは、目を見開きました。
ルカ「そんなことは、断じて違う!何故ならコピンの意見は、明らかに客観性を欠いている。単なる彼女自身の、愚かしい情動の、発露であろう!客観性を欠いている意見には、例えそれが客観だとしても、従ってはならない。何故ならそれは、客観性の欠如を生み出すからである!」
ルカはオランジーナを、グイと煽りました。
ルカ「でもそれなら、客観性を持った客観というのは、誰が持っているのだろう…。大体、何が客観的なのか、それはどうやって判断すれば…?」
ルカは、急に弱気になりました。
ルカ「私ならば、それは判断できる!いや、どうだろう…。きっと、コピンは言うだろう。それは、私の主観だと。だったら、どうすればいい?そうだ、全く主観を持たない、完全に客観的な人物を、連れてくればいい。それならば…。」
ルカは段々、自分が何を考えているのか、分からなくなってきました。
ルカ「でもその人物は、完全に客観的なのだから、コピンの意見に従ってしまうだろう…。何故なら、その人物にとっても、コピンは他者であって、その意見は客観なのだから…。」
ルカは、目が回って来ました。
ルカ「それに、あれだよ…。もし、客観しかなかったら、その人ってのは、何なんだ?100%、他者の意見に動かされてるんだったら、それは一体誰の人生なんだろう?」
ルカは、何もわからなくなってしまいました。
ルカ「つまり、今私にとっての命題は、私とは何か、という事なのだ…。」
その言葉の響きは、ルカを陶酔させましたが、ただそれだけの事でした。
ルカは、オランジーナの最後の一口を、飲み干しました。
その時、閃いたのです。
ルカ「そうだ!私は今、オランジーナを美味いと感じている…。それは、絶対確実な事で、あるいは神よりも確かなのではないか…?」
ルカは、自らの認識に、力を得ました。
そして、様々なアイディアが、頭の中に湧いてくるのを感じました。
ルカ「そうだ、それは間違いない!我、オランジーナを飲む、故に我あり。素晴らしい結論じゃないか!ハハハ、完璧だ。」
しかし、すぐに疑念がとって変わりました。
ルカ「いや待て、違うぞ…。私があるから、オランジーナがあるんじゃない。逆だ、逆!オランジーナがあるから、私は存在するのだ。つまり、オランジーナがなかったら、私もまた、いないわけだ…。」
ルカは、立ち上がりました。
ルカ「そうだ!これは、全ての事に通ずる、人間にとっての絶対的な真実だ!人間とは、私がいるから、世界が存在するのではない。世界が存在するから、私がいるのだ!凄いぞ、こんな素晴らしい事を考えているのは、きっと私だけだ!」
ルカは、気分が高揚して、オランジーナの空き缶を、遠くに放り投げました。
それは、お腹を空かせて、気が立っていた野良犬に当たりました。
野良犬「グルルル…。」
ルカはそんな事には、気づきませんでした。
ルカ「そうだ!誰かがいるから、私がいる。それこそ、客観性の勝利ではないか!ようし、やったぞ。これでコピンを…。」
その時野良犬は、ルカの右足に、思いっきり噛み付きました。
ルカ「ギャアー!誰か、誰か助けてくれ!獣が、私の足を…。」
しかし、野良犬は益々力を込めて、ルカの足を噛みちぎらんばかりでした。
ルカは、体に痛みが走り、薄れゆく意識の中で、こんな事を考えました。
ルカ「私にとって、今確かなのは、右足が痛いという事である。それは、何者にも動かせぬ真実であり、真理である。そこには、客観性など存在しない。私の純粋に主観的な、痛いという感覚があるのみである。客観とは、誰かの主観である。つまり世界は、誰かの主観で出来ているのだ。であるならば、私自身の主観を主張する事で、私は真の意味で、世界の一部となるのである。それが、神に仕える、たった一つの道であろう。」
ルカは、世界全てを、神への信仰を理解した様な気がしました。
そして、次に口を開いた時、こんな言葉が出てきました。
ルカ「痛いよー!誰か助けてぇ!」
ちょうどその時、家に帰る途中の、コピンが通りかかりました。
コピン「本当に、仕様がない…。」
 
テーマ曲 「P-FUNKparliament
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
おまけ
どうも、こんにちは。
オートマールスム(白)です。
サイクルギアは、東京wheelsとY's roadを行ったり来たりして、見つけております。
でも出来るだけ、通勤途上のセオサイクルさんに、お金を落とすようにしてます。
何かと、メンテナンス等々でお世話になってるので。
ぼくは基本、ネット通販は利用しません。
お店の店員さん達との関係を、大事にしたいからです。
どこでも割と店員さんのウンチクを、聞いているのが好きなので(参考になります。)。
そういうのは、購買する動機の一つとして、大事だと思っております。
ジャージは、le coq sportifが好きです。
それにriprojectのカジュアル・パンツを、合わせて…。
カスクもrin project。
頭には、よくBuffを被ってま〜す!!
普段から思うのですが、本当のユーモアの根底にあるのは、本質的に怒りだ、と思うのです。
あらゆる、不正に対する怒り。
それを、他者を傷つけない形で表明する。
それが、ユーモアの本当の姿だ、と思っています。
この作品は書いていて、あらゆる束縛から解き放たれていく様な、不思議な感覚が味わえました。
出来不出来は、ぼく自身はわかりません。
付き合ってくれて、ありがとうございます。
少し自信は、出てきました。
それとルカは、どこかの誰かじゃありません。
ちょうど、エンデにはまっていた頃の、ぼく自身です。
それを、エンデが矯正してくれた。
そんな感じ、ですよ。
活きた物語、という体験によってね。
余談ですが、その頃ぼくは、物語が書きたいけれど、書けませんでした。
だから、エンデの描く、ファンタージェンへの旅は、ぼくの夢だったんです。
それが、果たせたかどうか、本当に生命を持った物語になっているかどうかは、皆さんで判断して下さい。
どうでもいい事ですが(流れとしても、おかしいんですが。)、ぼくはパウロって、あんまり好きじゃないんです。
物語では、面白おかしく書きましたけども。
マルタリアは、許容量が大きそうなので、カップリングしたんですが、それは…。
蒼天航路」で曹操が言ってますが、(うろ覚えです。)天は畏れるものではなく、愛し慈しむものである、と。
ぼくは、キリストに対してもそうあるべきだ、と思うんです。
キリストも、私を愛せ、と言ってますし。
でも、パウロは畏れてしまう。
そう、感じませんか?
それは、信心だと言えばそうなんでしょうが、ぼくとしては、?、です。
それでは、さようなら?。