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帰ってきた男達 4

こうしてコノンは、港で働きました。
いつしか、重たくて持ち上げるのに困難な物、取り扱いに慎重を要する物は、自然とコノンが受け持つように、なっていったのです。
勿論コノンは、文句一つ言いません。
寧ろそれが、嬉しかったのかもしれませんが、コノンは相変わらず表情を変えませんでした。
そんなコノンを、皆は段々信頼する様になり、また親しくもなっていったのです。
そんなある日の事、コノンとザムは、一緒に昼ご飯をたべていました。
ザム「コノン、お前はホントよく食うなあ。お前はさ、人の倍以上働くけど、食う量もやっぱり、倍以上なんだな。」
コノンは、サンドウィッチをゆっくりとよく噛みながら、言いました。
コノン「食事を摂るのは、体にとてもいいことだ。先ず、力がつく。そして、意欲が湧く。人間は、食べた分だけ働けるのだ。」
ザムは、コノンのあまりにも真っ直ぐな物言いに、少し呆れました。
ザム「そりゃあ、そうだけど…。そういえば。」
ザムは、少し言いづらそうに、口を開きました。
ザム「コノン、お前には恋人って、いないのかい?」
コノンは、特に表情を変えずに、答えました。
コノン「いない。おれには、女性は誰でも綺麗で美しく見える。その中から、一人を選び出す事は、おれには出来ない。」
ザムは、びっくりしました。
ザム「それは、誰でもいいって事かよ!」
コノンは、首を横に振りました。
コノン「違う。おれは、皆を信じてる。その、信じるという気持ちが、他の人と違う人が恋人だが、おれはそういう気持ちになった事は、ない。だから、わからない。」
ザムは、海を見詰めて言いました。
ザム「ふ〜ん、そうなのか…。おれはな、一応いる。まあ、大して綺麗じゃないし、他の女でも、構わないんだけどよ。」
コノンは、弁当箱を丁寧に片ずけながら、言いました。
コノン「うん、そうなのか。誰が本当にそうなのか、それを見つけるのは、とても難しい事だ。」
ザムは、海に向かって、石を投げました。
ザム「今、金を貯めてんだよな…。ほら女ってさ、指輪とかそんなの、好きだろ?つまんねぇのにな。まあ、でもそれが貯まって指輪を贈ったら、結婚とか…。」
不意に港に、大きな声が響き渡りました。
衛兵「竜だー、こっちへ向かってるぞ!」
港にいる船員も、労働者達も先を争って、逃げ始めました。
ザムはその時、一つの事に気が付きました。
ザム「おい、どうしたんだあいつら…。気が付いてないのか?竜だって、言ってるのによ。」
コノンが、船の方を見ると、船長も船員達も普段と変わらず、作業を続けていました。
ザム「コノン、お前先に行ってろよ。おれはあいつらに、伝えてくる!」
ザムは、船に向かって駆け出しました。
コノン「ダメだ、ザム。間に合わん!お前も、早く逃げろ!」
ザムはもう、タラップを駆け上がっていて、船に乗り込んでいました。
ザムは、大きな声で言いました。
ザム「お前達!竜が、来てるんだ。そんな物はいいから、早く逃げないと…。」
甲板の上を、黒い影が覆いました。
ザムや、船員達が上を見上げると、そこには巨大な竜が、目の前に迫っていました。
竜は、大きく息を吸い込むと、炎の息吹を、船に向かって吹きかけました。
船は、一瞬で燃え上がり、あっという間に沈みました。
コノンは、目を見開き、雄叫びをあげました。
その雄叫びがもの凄かったために、人々は竜がもう一匹、いるのではないかと、疑いました。
コノンは、走って船に、近づきました。
そして、船を停めてある錨を、力任せに引き上げ、根元を引きちぎったのです。
コノン「竜よ、これ以上お前の好きには、させんぞ!」
コノンは、その錨を振り回すと、その先端を竜目掛けて投げつけました。
錨の先端は、竜の柔らかい腹にぶち当たり、竜は苦しげに呻きながら、落下してきたのです。
コノンは、地面に叩きつけられた竜を、たくましい腕で組み伏せながら、呼びかけました。
コノン「お前達は、もう竜を恐れる事はない!こいつは、おれが引き受けた。ただ、一つ頼みがある。誰か宿舎まで行って、おれの荷物の中から、おれの剣を持ってきてくれ!」
コノンの言葉は、ほとんどの人の耳には、入りませんでした。
しかし、その中の一人はその意味を理解し、コノンの寝泊まりする宿舎に、走ったのです。
そして男は、コノンの持つ名剣「メギドの丘」を、探し出しました。
しかし、一つ問題がありました。
メギドの丘は、あまりにも重く、一人では運べなかったのです。
男は、慌てて通りに飛び出し、逃げ惑う人々に呼びかけました。
そして、何とか人を集めると、何と四人ががりで、やっとメギドの丘は、持ち上がったのです。
男達は、一刻も早く町を離れようとする人々を掻き分け、重たいメギドの丘に汗だくになって、必死にコノンの元へ、運んで行きました。
コノンは、竜の首を絞めつけていました。
コノン「助かった。この恩は、忘れない。それ以上は、近付かなくていいから、そこに投げ出してくれ。」
男達はメギドの丘を、出来るだけ慎重に地面に下ろすと、慌てて逃げて行きました。
コノンは、竜から身を離し、メギドの丘を手に取りました。
コノン「行くぞ、邪悪なる竜!この剣の切れ味、思い知らせてやる!」
コノンはたった一人、竜と対峙しました。