帰ってきた男達 5

竜は、ものすごい勢いで、コノンに向かって、炎を吹きかけました。
コノンは、人間とは思えない跳躍力で、竜を飛び越え、その背後に着地します。
コノン「お前は、もう逃げられない。覚悟しろ!」
コノンは、竜を飛び越える際に、片方の翼を、剣で斬り落としていたのです。
竜は、痛みに怒り狂い、尻尾をコノンに叩きつけました。
コノン「竜よ。その程度では、おれは倒せないぞ!」
コノンは、竜の尻尾をガッシリと受け止め、竜の体を振り回しました。
そしてそのまま、投げ飛ばしたのです。
竜は、背中を強く打ち、苦しんで悶えました。
竜は、仰向けの状態から、何とか体勢を立て直すと、もうコノンに近づこうとはせず、炎を立て続けに浴びせようとしました。
しかし、コノンは目にも留まらぬ速さで駆け回り、あっという間に竜の懐に、飛び込みました。
コノン「これで、終わりだ。メギドの丘よ、その真の姿を現せ!」
コノンが、メギドの丘を振り上げると、その刃は燃え盛る青白い炎と、化しました。
竜は、その一撃を受けて力を失い、地面に崩れ落ちたのです。
コノン「よし、これでいい。」
コノンが後ろを振り返ると、倉庫は全焼しており、遠くに見える家々も、多くが焼け落ちていました。
しばらくすると、人々が港に集まり始めました。
竜を退治した、コノンに感謝するためです。
その中には、社長の姿もありました。
社長は恭しく、お礼の言葉を述べました。
社長「ありがとう、コノン…。この町が救われたのは、お前さんのお陰だ。倉庫は全て失われてしまったし、家々もこの通りだ。しかし、皆で力を合わせれば、すぐ元通りになるさ…。力を貸してくれ、コノン!」
人々から歓声が上がり、誰もが皆、コノンの功績を讃えました。
しかしその時、不吉な唸り声が聞こえました。
そうです。
邪悪な竜は、まだ死んではいなかったのです。
人々の間に、動揺と戦慄が走りました。
社長は、コノンに詰め寄りました。
コノン「お前さん、どういうつもりだ!まだ、この恐ろしい竜は生きているじゃないか?さあ早く、止めを刺すんだ!」
コノンは、落ち着いて言いました。
コノン「その必要は、ない。このメギドの丘が、本当に切り裂くのは、肉体ではないのだ。このメギドの丘が断ち切る物、それはその者に取り付いた、邪なる霊。この竜は、邪な霊に取り憑かれて、今まで人々を苦しめてきた。しかしこの剣の力で、今はそこから解き放たれたのだ!この竜は、皆の良き友となるだろう。よく心を通わせれば、この町の再建にも、力を貸してくれるはずだ。」
社長は、激昂しました。
社長「ふざけた事を、言うんじゃない!それなら、この竜に殺された人々はどうなる?この竜が焼き払った、町並みは?そんな邪悪な獣と、友になるなんて!コノン、お前の頭は狂っている!」
コノンは、諭すように言いました。
コノン「おれは、狂っていない。何か悪事がなされる時、その時はそれに相応しい理由というものが、ある。それさえ解けたのならば、それ以上に罪を追及しては、ならないのだ。」
社長はゆっくりと、噛みしめるように言いました。
社長「そうか…。お前さんには、その気は無いんだな。」
社長は、皆の方を振り返り、大声で呼びかけました。
社長「皆んな!この竜は、まだ息がある。そして、このコノンという木偶の坊は、その命を断つ根性がないらしい!それならば、わしらでやってやろうじゃないか。幸い竜は、まだ立ち上がる力はない。さあ、早く武器を持って来い。ぶち殺してしまうぞ!」
コノンは、叫びました。
コノン「いけない、早まるな!この竜は、もう戦う意志はない。戦う意志のない者と争うのは、卑怯者のする事だ!皆、自分の良心に耳を傾けるんだ。そうすれば、何が正しいのか…。」
人々はコノンの話に耳を傾けず、寄ってたかって竜を打ち殺し、その亡骸を海に沈めました。
社長は、満足そうに言いました。
社長「よし、これでいい。これで町は、平和になる…。しかし、コノン。邪悪な竜を、生かしておけだなんて、お前さん、神を信じていないのか?」
コノンは、静かに頷きました。
コノン「そうだ。おれは、神を信じていない。おれが信じてるのは…。」
社長はコノンに、最後まで言わせませんでした。
社長「そら見ろ、やっぱりだ!わしは、一目見た時から、思ったんだ。この男はどこか不吉な影を持っていて、暗い目をしているとな…。しかしわしは、キリスト様の尊い教えに従って、困っているお前さんに、仕事を与えた。だがお前さんはそれに、仇で報いた訳だ…。」
コノンは、どうしていいのかわかりませんでした。
コノン「それは、間違いだ。おれは町のみんなに背いたり、裏切ったりなどしていない。」
社長は、激しく告げました。
社長「今すぐ、この町から出て行け、コノン!そして、二度と戻ってくるな!もしこの町で、お前さんの姿を見かけたら、その時は。なあ、皆んな…?」
人々は、竜を打ち殺した武器を手にしたまま、コノンに詰め寄りました。
コノン「皆が、望まないと言うのなら、おれはこの町にいる、理由がない。」
コノンは、すぐに荷物をまとめて、町を去って行きました。