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帰ってきた男達 10

坂田金時は桃太郎を伴って、天神様の治める鳳の城に来ていました。
今度の大戦の為の、作戦会議が開かれていたからです。
作戦会議室として用意された、雛鳥の間には円卓が設えられ、ルシファーを中心に、左右に天神様と竜神様、そしてルシファーの真向かいに金時が座っていました。
竜神様が、重々しい口調で語りました。
竜神「では我々、天・地・海連合軍はルシファー殿の指揮の元、地獄を攻める。宜しいな?」
残った三人は、黙って頷きました。
竜神「では…、どういう布陣で臨むかじゃが、地獄の軍団と戦うとすれば、恐らく決戦の場は、地の果てになるじゃろう。天の者達の戦力は、後に控える天国との戦いに温存しておきたい…。地の果ては海に面しておる事じゃし、ここはわしら海の者が先陣を務めよう。わしらは、この戦いに兵一万は用意できる。出来れば地の者達にも…。」
金時は、竜神様の言葉を遮って、声を上げました。
金時「待ってください!ルシファー殿、私の意見を申し上げても宜しいか?」
ルシファーは、腕を組んだまま、視線も向けずに返事をしました。
ルシファー「言え、短くな。」
金時は、大きな声で三人に語り始めました。
金時「では、私の意見を述べさせて頂く…。私の意見は、結論から言えばこう。地獄攻めの先陣、私達、地の者に務めさせて頂きたい。天神様と竜神様…。」
竜神様は返事をしましたが、天神様は目だけを金時の方に向けました。
金時「天の者、地の者達の中には、私達地の者の力を侮り、自分達よりも格下に見ている者達も多いと聞きます。違いますかな…?」
竜神様は、困った様に返事をしました。
竜神「そんな事はない…。お前さん達の思い過ごし…。
天神様は、竜神様の言葉を遮り、話し始めました。
天神「いや、その通りだ、金時。確かにそなたの噂は聞いている。そして、そなたをこの戦に引っ張り込んだのは、私だ。だが、そなたはともかく、地の者ごときの力で、果たして悪魔達を相手に、戦など出来るのか?私には、とても信じられん。」
金時は、静かに答えました。
金時「私が率いる地の者達は、私自身が選び、鍛え抜いた精兵の集まりにございます…。私は、その力を証明したい。その為に、先陣を申し出るのでございます。」
ルシファーは、厳かな口調で答えました。
ルシファー「いいだろう…。お前達に、チャンスを与えてやる。だがもし戦に敗れ、万一にも逃げ出すような事があれば、その時は後ろに控えている海の者達で、地獄の軍団諸共、お前達も亡き者にする…。覚悟しておけ。」
金時は、何の表情も表さず、頭を下げました。
金時「ありがとうございます。立派に務めを、果たして見せましょう…。」
竜神様は、髭を撫でながら、口を開きました。
竜神「気分を悪くしてくれるな、金時殿…。お前さん達の事を侮るわけじゃないが、何かあった時の為に、わしの配下の海鳴将軍と兵三千を付けよう。お前さんの部下じゃと思って、しごいてやってくれよ。」
竜神様は、ニヤリと笑いました。
金時は、慇懃にお礼を言いました。
金時「お心遣い、感謝致します。力を合わせ、地獄の軍団を打ち破りたいと、思います。」
竜神様は、心配そうに言いました。
竜神「しかし、地の果てで一戦交えるとすれば、あの土地の狂気はどうする?将達はまだしも、兵達はとても正気を保っている事は出来まいよ…。」
金時は、断言しました。
金時「私が、赤き龍を黙らせましょう。」
天神様は、驚きました。
天神「確かに、あの土地の狂気は、地に潜む赤き龍の、声なき唸り声が原因だとは聞く…。しかし、あんな邪悪なものを前に、どうやって唸り声を止めるつもりだ?」
金時は、平然と答えました。
金時「何でも、望むものをくれてやりましょう…。それでも、止めないなら…。」
竜神様は、聞くまでもない様子で、聞きました。
竜神「ならば?」
金時は、刀の柄に手を掛けて言いました。
金時「この白鏡にとっては、自慢の鱗など問題にならない、と思い知ることになるでしょう。」
天神様は、もう一度驚きました。
天神「金時、お前の考えは、話にならん!あの赤き龍が、なぜ地の底に潜んでいるか、知っているのか?あれは、ルシファー殿が、五日に渡る死闘の末に…。」
ルシファーは、大笑いしながら言いました。
ルシファー「ハーハッハッハ!いいだろう、行って来い金時!お前には、これをくれてやる…。」
ルシファーは、拳より少し大きな石の様な物をを取り出すと、金時に投げました。
金時「これは、一体…?」
石の様なものは真っ黒で、金時の手の中で暗い紫色に輝いていました。
ルシファー「それは、物言う石だ。私の魔剣ヤハウェの古傷と、同じ素材で出来ている…。その石を持つものは、私の霊により力を得るのだ。それを、とらす。その力で、赤き龍に引導を渡してこい!あの龍はな、少し長く生き過ぎたな…。」
金時は、物言う石を懐にしまうと、言いました。
金時「まだ、戦うとは決まっておりません…。それより、ルシファー殿。相談が、あるのです。」
ルシファーは返事をせず、目で促しました。
金時「私は、私自身の力で力の強い者、また戦の上手い者は集めました。しかし、知略に長けた者、これだけはどうしてもこれだ、という者を見つけられなかった…。どうか、ルシファー殿。私の意を汲み、戦を組み立てられる者を、貸していただけませんか?」
ルシファーは、鼻で笑いましたが、何かを思い付いた様でした。
ルシファー「フン、ちょうどいいのがいたな…。お前達と同じ、地の者だ。入れ!」
扉を開かれると、そこに立っていたのは…。
男「私の名は、浦島太郎。金時殿、ま、一つよろしく頼むよ…。」
何と、浦島太郎でした。