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帰ってきた男達 13

浦島太郎は、ウキウキしながら話を続けました。
浦島太郎「赤き竜は、天国の連中と潰しあってもらう!どうだい、楽しみじゃないか?」
金時達三人は、呆気に取られました。
浦島太郎「わからないかな?天国には先ず、コノンがいる。コノン・ケルビム。」
コノンの名を聞いて、金時は、眉をピクリと動かしました。
浦島太郎は、からかう様な調子で続けました。
浦島太郎「まあでもコノンは、そこにいる金時くんと、ルシファー様の霊が討つと仮定しよう…。それで、いいかな。」
金時は、暗い瞳で答えました。
金時「その通りだ…。問題は、ない。」
浦島太郎は、まるでオモチャに囲まれた子供の様でした。
浦島太郎「問題はない、か。いい言葉だ。問題があるより、ずっといい。」
浦島太郎は、海鳴将軍と桃太郎の顔を見回しました。
浦島太郎「次に手強いのは、天使ミカエルとガブリエル。どうだろう?君達に、倒せるかな…。」
海鳴将軍は腕を組み、桃太郎は視線を逸らせました。
海鳴「命ぜられれば。拙者は、どんな任にでも就く。」
桃太郎「その、見返るってのは、どのくらい強いんだろう…?吉備団子が、足りればね。」
浦島太郎は、大袈裟に首を振りました。
浦島太郎「ナンセンス、ナーンセンス!私は、倒せるか、と聞いたんだよ。返事になってない。まあ、聞くまでもないんだ、無理だから。」
海鳴将軍は、浦島太郎から視線を外し、桃太郎は、ガックリ肩を落としました。
浦島太郎「ミカエルとガブリエルを倒すには、天神くんと竜王くんが、直々に出て行くしかないだろう…。でも、そんな訳にはいかないよね?」
海鳴将軍は、必死に怒りをこらえていて、桃太郎はそれが気になって、仕方がありませんでした。
金時は、そんな空気を察してか、冷たく言いました。
金時「あなたは、何が言いたいんだ?浦島殿…。」
浦島太郎は、金時の言葉が聞こえていないかの様に、振る舞いました。
浦島太郎「天国には、まだまだ手強いのがいる…。ペトロにパウロ、それにモーゼだ!こいつらは、あの忌々しいヤハの力に守られてる。どうだい、君達。勝てると、思うかい?」
海鳴将軍は、空気をビリビリ震わせながらも、静かな口調でした。
海鳴「我等の軍にも、武勇を誇る者達は、数多くいる…。天国の者達に、決して遅れを…。」
浦島太郎は、有頂天でした。
浦島太郎「赤き竜を、ぶつける!それしか、勝ち目はないんだ。私はね、その為にこんなに汚い、牛車に乗ってきたんだから。」
金時は、顎に手を当て、静かに語りました。
金時「それは、ご苦労…。しかし私は、赤き竜を味方に引き込もうとまでは、思っていない。また、そこまでの責任も負えない。」
桃太郎が、おずおずと発言しました。
桃太郎「浦島さん…。それはその、ルシファー殿の意向なんだろうか?だとすれば、あまりに荷が重くはないだろうか。」
浦島太郎は、ついに言いたい事が言えると、もはや福々しくさえありました。
浦島太郎「そんな事はない!これはね、私がデザインしたゲームなんだ。」
海鳴将軍は、遂に怒りを爆発させました。
海鳴「浦島殿、それは越権であろう!お主は何と言っても、先ず金時殿の指揮下にある。その金時殿を差し置いて、作戦を決定しようとするなど、もってのほかでごさる!」
浦島太郎は、心底ウンザリした様でした。
浦島太郎「あ〜、わかった。堅物はね、引っ込んでなさい。必要がないんだ、そういう退屈な奴は。よく、話を聞きたまえ…。私はね、上申してるんだ。金時くんを立て、お伺いを立てているんだよ。わかってもらえるだろうか?私の真心が。」
海鳴将軍は、頭から湯気を出して、黙りました。
金時は即座に、浦島太郎に告げました。
金時「浦島殿、海鳴将軍の言う通りだ。決定権は、私にある。そして、先程も伝えた通り、私達はそこまでの成果を期待してはいない。あなたの展望は、あまりに楽観的過ぎる…。」
その時、金時の懐から、怪しい紫色の光が溢れてきました。
それを見た浦島太郎は、ニヤリと笑いました。
金時は、人間とは思えない目付きで、こう告げました。
金時「いや、しかし…。赤き竜の力がなければ、天国を滅ぼし尽くす事は出来ない。私達の望みは、天国に勝つことではない。奴らの息の根を、止める事だ…。いいだろう、浦島太郎。君のゲームに、一口賭けさせてもらう…。」
海鳴将軍も桃太郎も、何かしら言おうとしました。
しかし、金時の放っていた空気が、それを拒みました。
先程の怪しい光は、物言う石の、輝きだったのです。

その頃コノンは、トルコにいました。
行商人「いやあ、兄ちゃん!兄ちゃんのおかげで、おらぁ商売が続けられそうだ。まさか、これから出発って時に、らくだがへばっちまうとは…。兄ちゃん、おらと一緒に、明の国まで旅するべか!」
コノンは、行商人の商売道具を、丸ごと背負って立っていました。
コノン「おれは、それでも構わない…。どこまででも、あなたの望むところに行く。」
行商人は、カラカラと笑いました。
行商人「ア〜ハッハ!冗談だよ。代わりのらくだが見つかるまでで、ええよ。何にしたって、大したお礼は、できんがのう!」
コノンは、巌の様な顔を、眉ひとつ動かさずに答えました。
コノン「お礼か…。それなら、三度の飯を、食わせてもらいたい。図々しいお願いだが、おれは人の三倍は食べる。」
行商人は、一瞬不思議そうに、しかし思い直して言いました。
行商人「兄ちゃん、いい人ぶるのも、いい加減にせぇよ!お礼は、もちろんする。こんだけ助けてもらって、手ぶらで帰せるかい?よし、それじゃあ出発しよう…。」
コノンは、遥か遠くを、見つめていました。