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帰ってきた男達 17

赤き竜は、頭を低くして身構え、今にも飛びかかってきそうな様子でした。
赤き竜「グルル…、グワァー!」
赤き竜の猛き唸り声をものともせず、金時は口を開きました。
金時「赤き竜よ、勝敗はもはや決した…。抗っても、お前は滅びるだけだ。」
赤き竜は、一際激しく吼えました。
その咆哮は、金時の懐にある、物言う石を介して言葉となったのです。
赤き竜「汝ら、いずこより来た!?何故、我に仇なす!?語るべき事があるならば、汝らより語るがよい!」
金時は冷たい、素っ気ない口調で告げました。
金時「先ずは、力の差を感じてもらおうと思ってな…。そうでもなければお前は、ちっぽけな人間の話になど、耳を傾けたりはしないだろう?」
赤き竜は、低く唸りましたが、それは言葉にはなりませんでした。
金時は、続けました。
金時「最初に告げた通りだ、赤き竜。私に、屈するがよい。そして、我がしもべとなれ。お前の役目は、天国を荒らし災いをもたらす事だ…。」
赤き竜は、口をモゴモゴ動かした後、突然大きく開きました。
そして、その喉の奥で、小さな炎が揺らめいた時、金時の放った矢がそこに突き刺さりました。
金時「地獄に堕ちるのは、難しいことではない…。お前が、望むならな。」
赤き竜は、牡牛一頭程もある血の塊を、吐き出しました。
赤き竜「おのれ、ルシファーより受けた傷さえ癒えておれば、ノミのような汝らに好きにはさせんものを!」
金時は、もはや人間ではない様でした。
金時「赤き竜よ…。今ここで、お前は自分の運命を決するのだ!我に屈するか?それとも、惨めに滅んでいくか…?」
赤き竜は、怒り心頭に達して、ゴウゴウと荒く息をした後、背中の二本の翼を大きく広げて叫びました。
赤き竜「人間如きが、神にでもなったつもりか!いいだろう、お前らも、この世界全ても滅ぼしてくれる!」
金時は、素早く動きました。
その時、浦島太郎のすっとぼけた声が、辺りに響きました。
浦島太郎「はいはい、お二人さん!喧嘩はそれまで。二人とも、いいことがあるから、私の話を聞いた方がいいよ!」
金時は動きを止め、赤き竜は不審そうに語りかけました。
赤き竜「小さき者よ…。汝は、何者であるか?我に何事か訴えあれば、先ず名と素性を名乗るがよい…。」
浦島太郎は、岩陰からヒョコヒョコ出てきて、すました顔で応じました。
浦島太郎「私はね、浦島太郎。元は、漁師だが色々あって、死んで地獄に堕ちた。そこで、盟友ルシファーくんと出会って…、そこでも紆余曲折あって、今はこの、無礼千万、少々脳足りんの金時くんのお世話をしてるんだ。」
赤き竜は笑ったのか、フゴーッと息を吐きました。
赤き竜「…そして、我に何用であるか?」
浦島太郎は、勿体つけていいました。
浦島太郎「まあ、そんな野暮ったい話より、先ずはこれを受け取ってくれ給え…。おい、おおたか!あれを、持って来るんだ。」
おおたか、とよばれた天の御者は車の中から、ちょうど人一人分ぐらいの大きさの、麻の袋を引きずり出しました。
その様子を眺めていた桃太郎は、海鳴将軍に言いました。
桃太郎「将軍…。あれは、一体何だろう?私は、ずっと疑問に思っていたんだ。まあ、言い出せなかったんだが…。」
海鳴将軍も、首を捻りました。
海鳴「拙者も、そうでござる。しかし、赤き竜への贈り物であるとすれば、それは羊とか、天に住む珍獣などの肉ではござらんかな…?」
おおたかは、赤き竜の前まで麻袋を引きずってくると、慌てて岩陰に走って戻りました。
赤き竜は、警戒を解いてはいません。
赤き竜「汝自身で、袋を開けよ…。小さき者よ。」
浦島太郎は、まるでプレゼントの包みを開ける子供の様でした。
浦島太郎「みんな驚くなよォ…、そらっ!」
中から出てきたのは、天女の乾いた屍体でした。
桃太郎と海鳴将軍は、信じられない様子でした。
浦島太郎「これはね、天女を一人殺して、防腐処理を施してから、天日で干したものだ。まあ、レアには敵わんが、充分イケると思う。酒は持ってこれなかったが、まあ楽しんでくれ!」
赤き竜は、ゴワンゴワンと激しく笑い、金時は、じっと凝視しておりました。