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Black Swan -overload- 4

ブラック・スワンの三人は船を降りた後、徒歩でオルト山を登っていた。
ヘムの村は、このオルト山の中腹にある。
案内人は、慣れない山道を登るブラック・スワンを気遣いながら、ゆっくりとしたペースで進んでいた。
「しんどい…。俺は反対したはずだ、初めから。こんなトコロにキレイなお姉さんが、いるはずない。」
ローランドは山道を登り始めてすぐから、ボヤキっぱなしだ。
ソクロはよく巡礼の旅に参加していたから歩き慣れていたが、ゼクとローランドは平野の都会育ちだっからこたえていた。
「さっきから、うるせーな…。俺だって、シンドイんだっつーの。お前、自分の荷物すら持ってねーだろ!」
ゼクの言う通りだ。
ローランドはソクロに二人分の荷物を担がせて、自分は最低限の装備しか身につけていない。
ソクロは、穏やかに諭した。
「いいじゃないですか…。私なら大丈夫。体力だけが、自慢ですから。それに、そろそろですよ。ほら、迎えの人じゃないですか?」
ゼクとローランドが正面を見ると、案内人が誰かに手を振っている。
黒地に金の帯…。
ザハイム研究所のスタッフだ。
「あ〜、助かった。あんた命の恩人だよ!」
ローランドは大げさにありがたがったが、ゼクも同じ気持ちだった。
反感よりも、やっと休めるという安堵が勝った。
ブラック・スワンの三人は、宿舎に案内された。
発掘・調査の間だけ使用されるというにしては、立派な建物だ。
三人は中に案内されたが、何と個室が用意されていた。
「スゲェな、個室じゃねぇか!こりゃあ、何だって出来るぜ…。」
個室なんて、ブラック・スワン結成以来初めてのことだ。
冒険者の養成所だって、大部屋だったのに…。
「そーゆー女が、いりゃあな。村の連中なんて、当てにならねー。何だったら、ザハイムの女でも口説けよ…。」
ゼクは部屋のドアを閉めると、荷物を下ろし甲冑を外した。
Tシャツとジーンズに着替え、早速一服しようとすると壁には「館内禁煙」の文字があった。
「メンドクセーな…。」
ゼクは、宿舎の外に出た。
ザハイム研究所の研究員に、三人は事務練に案内され応接室に通された。
「何かすごい部屋だな…。どうする、ゼク?こんなしかめっ面しいのじいさんだったら。」
「冗談はやめろよ…。まあ、物分かりのいい奴だと、何かとスムーズなんだけどな。」
ソクロが諌める。
「二人とも、ちゃんして下さい。これは、仕事なんですから…。」
やがて扉が開き、護衛を依頼された主任研究員が入って来た。
「こんにちは、みなさん。私の名は、ハウシンカ。今回、依頼を引き受けてくれたことに、改めてお礼を言います…。」
穏やかな、若い女性であった。
つぶらな瞳で、鼻は高い。
まず美人と言われるのに、相応しい器量だろう。
体は程よく肉が付いていたが、引き締まっていて緊張感を感じさせた。
「エルフだな。」
「ああ…。」
エルフの人間は知性に優れていて、総じて社会的地位が高い。
ゼクとローランドは、勿論面白くは思わない。
ハウシンカが入ってくるのと前後して、麦茶が運ばれて来た。
ゼクは、かましてやろうと考えた。
「えっ、麦茶?コーヒーないの。」
ハウシンカは穏やかな笑顔で、ここヘムの村の発掘現場の概要について説明を始めた。
ソクロは真面目に聞いて、所々で質問を挟んでいる。
ゼクは、ローランドに耳打ちした。
「幾つだと思う?」
「30だな…。」
ローランドの見立ては、外れたことがない。
ゼク18才、ローランド20才で、二人から見れば年上になる。
「げっ!じゃあもう、バ◯アじゃねーか?」
ハウシンカは、ニコニコしながら説明を続けている。
ソクロは、まとめた。
「つまり、ここで今発掘されているのは、旧い時代の転送装置なんですね?」
ハウシンカは、丁寧に質問する。
「そうなんです。この装置を起動すると、霊的に別な場所に移動し、あるビジョンを観ます。
それがどこなのかを確認するのと、もう一つは…。」
ソクロは、メモをとっている。
「これはまだ、公にはしないで欲しいんですが…。どうやら、物質の転送も可能な様なのです。そこから拡がる可能性については、申し訳ありませんがお話し出来ません。」
ソクロは、礼を言った。
「丁寧な説明ありがとうございます。いやあ、大変な装置の様ですね。私達も、全力であなたをお護りします!」
ハウシンカが口を開きかけた時、ゼクはハッキリと言った。
「少なくとも俺は、アンタ達を信用してない…。それが…。」
ハウシンカは立ち上がって、ゼクを平手で打った。
「あなた、ガキね!」
ローランドとソクロは、驚いて目を丸くした。
「クライアントが信用出来ようと出来まいと、引き受けたんでしょ?だったら、やり遂げてみせなさいよ。それが、冒険者ってものでしょう!!」
ゼクは、何も言えなかった。
ハウシンカはお辞儀をして謝り、退出した。