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Black Swan -overload- 18

ラルゴは、主ストーム・ライダーせんさんの、砕けた聖なる槍から復活したバイクに乗って、存在の本質に迫った。

そこは宇宙の果てであり、同時に宇宙の中心でもある。
レミロはそこで、「宇宙の意思」を名乗っていた。
ラルゴと主ストーム・ライダーせんさんは、永い道程とそこに備えてあったありとあらゆる防御を、マイナス−五分で突破しレミロを打ち破った。
主ストーム・ライダーせんさんは、「宇宙の意思」レミロの入っていた容器に、「蓋」をして滅ぼしてしまうべきだと主張する。
しかし、ラルゴはそれをしなかった。
全ての存在にはあらゆる可能性が許されるべきであり、自由な意志が約束されているからだ、とそのままにして立ち去る。
結果、レミロは完全には滅びなかった。
彼女は、自分自身の断片を月の裏側に隠し、そこで存在し続けた。
クリングゾールは、そのレミロの半身から魔法の力を得て自分を赦した。
神にも他者にも寄らず、自らによって自らの犯してきた罪を赦したのである。
そして、世界はカトラナズの国と影の国に分かれた。
クリングゾールは、自らが為さなかった定めを、自らの不幸が因であるとした。
「神は、私を愛さなかった…。存在の原初から、滅びる定めに置いたのだ。私があの忌まわしい運命に力なく震えている時、私を助けなかった。神は全てを造った。それならば、全てを滅ぼすべきではない。責任は、造った神にあるのだから!」
クリングゾールは神を呪い、その呪いによって滅びた存在を繋ぎ合わせる。
彼の不服と怨嗟、それに嫉妬は影の国の民の共通認識であり社会理念であった。
彼らは、自らを「レミロの子」であると称した。
「我等に滅びを宣告したのは、至聖三者である。その一人崇敬者は、自らを崇敬者としているが自らの存在を全う出来ていない。奴は、我等と我等に力を送るレミロ様を崇敬していないではないか!もしレミロ様がいなかったなら、奴も含めた全ては、未だに「無」であったろう。我等は「レミロの子」である。我等は、始まりに従う。造られた者は、造った者に従わなければならない。それが「宇宙の意思」である。」
狗香炉は、影の国の将軍である。
クリングゾールに作られたし、彼を王として仕えてもいた。
しかし、その心はそこにはない。
「あのゼクとかいう小僧…。なかなか面白い。もう少し、もう少し修行を積めば、殺しがいのある戦士に育つだろう。」
狗香炉は、殺すことを楽しんだ。
無抵抗の者に興味はない。
出来るだけ強く、狗香炉の身を危うくする者でなければ満足出来なかった。
彼の心は、戦いにある。
それのみに、と言えるかも知れない。
狗香炉は、今でも思い出す。
最も、心躍る瞬間を。
まだ、若い頃だ。
ガウェインは、まだ部下も持たない若い騎士だ。
狗香炉は初めて部下を任され、慣れない指揮に四苦八苦している。
二人は戦場で相見えた。
ガウェインは、馬で跳んだ。
狗香炉は迎え撃った。
狗香炉はガウェインの盾を粉々にし、ガウェインは狗香炉の兜を砕いた。
「グフフ…、傷が疼くわい。」
今でもその傷跡が、額に残っている。
その一撃のみである。
その一撃で、狗香炉はガウェインを殺すことを心に決めたが、今はもうガウェインは前線には出て来ない…。
狗香炉は、ザハイムの発掘現場の占拠を命じられていたが、興味はなかった。
彼は、セトを引き摺り出したかったのである。
狗香炉の見立てでは、セトは今カトラナズの国で最も強い騎士の一人であろう。
そして、そこにゼクが現れた。
「早く…、早く強くなるがいい!」
狗香炉は、楽しみが二倍に増えた様な心地でいる。
狗香炉は、セトやゼクと再び戦うことを心から望んでいた。
何にであろう?
少なくと、レミロにではない。
もしかするとそれは、神に、であったかも知れない。