Black Swan -overload- 37

ゼクとハウシンカは、山道を急いでいる。

ハウシンカは、異変を感じて空を見上げた。

「ゼク、ねえゼク。あれは…、一体?」
ゼクは気づかなかった。
「急げよ、ハウシンカ。日が暮れちまうぞ。」
その「何か」は、段々と大きくなってくる。
「変だよ、ゼク。空に竜が…。」
ゼクも空を見上げる。
「あれは…、赤き竜!真っ直ぐ向かってくるぞ。」
ゼクは、ハウシンカの手を引いて走った。
その行く手を阻む様に、赤き竜は着地する。
ものすごい地響きと共に、押し潰された木々がバキバキと音を立てた。
「は〜い、お二人さん。ご用があるの。少し、待ってくれない?」
ザハイムは、赤き竜の上から言った。
ゼクは逃げ道を探したが、赤き竜は脅す様に大きな口を開ける。
「所長…。」
ハウシンカは、自分の目で見ている物が信じられなかった。
「へっ!ようやく、正体を現しやがったな。」
ゼクは、抜刀する。
「そんな物でどうしようっていうの?少しはいい男かと思ったら…、とんだおバカさんね。」
ザハイムは、赤き竜から浮かぶ様に着地した。
「さ、ハウシンカ。私と一緒にいらっしゃい…。研究の、総仕上げよ。」
ハウシンカは、ゼクの陰に隠れた。
「何が、目的だ!?」
ゼクは、大喝した。
「いやねぇ、大きな声なんか出して…。あなたになんて、話したって仕様がないじゃない?さ、坊や。いい子だから、ハウシンカを渡してちょうだい。」
ゼクは、ザハイムに向かって駆け出した。
勿論斬るつもりだ。
「バカは嫌ね。」
ザハイムが目を見開くと、両の瞳に七色に輝く光が溢れた。
「…!!」
ゼクは、恐怖を感じた。
とっさに体の向きを変えるが、間に合わない。
ザハイムの瞳から光線が放たれ、ゼクの左腕を切断した。
「ぐわあっ!」
ゼクは転倒して、痛みとショックでのたうちまわる。
「これが、罪の力よ。あら、あんまり声を挙げないのね。いいわ、そういう人って…。もっと、苦しみたい?」
「ゼク!!」
ハウシンカは、ゼクに駆け寄った。
傷口から、出血が止まらない。
手当の方法などわからなかったが、着ていた上着を縛り付け出血を止めようとした。
「行きましょ、ハウシンカ。あなたが必要なのよ。」
ザハイムは、まるで媚びる様に言った。
「もしあなたに殺されたって、"真理の書"は渡さないわ!」
ハウシンカは、キッパリと拒んだ。
「あら、勘違いしないでよね。私が欲しいのは、"真理の書"だけじゃないわ…。あなたの体と、た・ま・し・い!」
ザハイムは、長い舌をチロチロ出した。
「バカじゃないの!そんなの、あげられる訳ないじゃない!」
ザハイムは、ハウシンカにゆっくりと歩み寄った。
「近づかないで!私だって、戦えるんだから…。」
ハウシンカは、地面に転がっているゼクの刀を拾い上げる。
「教えてあげるわ…。あなたはね、我らの奉ずるレミロ様がこの世界に姿を現わす為に必要なの。」
ザハイムは、"吉祥天"の切っ先を素手で掴む。
ハウシンカは、刀を動かすことが出来なかった。
「あなたの体と魂に、月の裏側に封印されたレミロ様の霊を移植する…。あなたはあなたであったことを忘れてしまうけど、いいじゃない?あなた、神になれるのよ。」
ハウシンカは、徐々に恐怖を実感して来ている。
「そんなこと、出来る訳…。」
ザハイムは、ニッコリ笑った。
「あら、簡単よ。ロムスの力があれば…。あのラルゴだって、自分の母親を造り変えたのよ?血の繋がった実の母親を、イサクにしてしまったの。私達は、それに倣うだけ…。大丈夫、あなたの想いは全てレミロ様が引き継ぐわ。あの男だって、その方が満足出来る。」
ザハイムは、ハウシンカの体を抱きしめた。
ザハイムの体は冷たく、ハウシンカの呼吸は止まりそうだ。
「嫌、そんなの。止めて、お願い…。」
ザハイムは、ハウシンカの体をきつく抱いた。
そしてそっと口づけし、舌をゆっくり唇に這わせると離した。
「あの男を殺すわよ?時間をかけて、ゆっくりと…。あなたの目の前で犯して、全て吸い尽くしてあげる。私を満足させられるかしらね、この"いい男"さんは。どちらにしたって、もう私の快楽の園にしかいられない…。後は、堕落していくだけ。彼が私という淫らさに溺れていく様、見たくはないかしら?彼の全てが、私の中へと消えて行くの…。あなたの事なんて、想像もしなくなる。淫らさに蕩ければ、魂なんてすぐ無くなっちゃうんだから…。彼は、どんな乳房が好きかしら?…私たちは、バストの大きさなんて自由だから。傷口を、…舐め取るのよ…だから。…私の開いた華で、だから♪ウフフ…見たい、ハウシンカ?…あなたの口から言えたら、君臨してあげてもいいケド…。だから、…選ばせて欲しい?だから…そうじゃなきゃ、リリムたちのエサにするっていうのもいいわね。」
ハウシンカは背筋が凍りつき、全身の力が抜けてしまった。
「わかった。わかりました…。あなたと一緒に、行きます。」
ザハイムに手を取られると、ハウシンカの体は宙に浮く。
「いいわ、そういう所が私は気に入ったの…。ウフフ…、ゼクなんか殺したりはしないわ。ただ遊びながら、体にしつけてあげようかと思ったのよ。レミロ様に献上する前にね。いい子になって、ちゃぁんと私の言う事が聞ける様に…。だっていいじゃない?私だって、少しぐらい愉しんだって…。アハハ…、想像してるだけで気持ち良くなってヘンな気持ちになってきちゃった。あ〜んな気の強い男が私の言うなりになったら、もう正気じゃいられないわ…!飼育してあげても、いいかもね?それだから究極のオルガズムを味わって…全世界中の存在を…、惨めさのドン底に突き落としてあげようかしら!!あなたのコトも、たくさん愉しんであげる。エルフ特有の高い知性と引き締まった豊かな体。それに、力の無い弱々しい心。いつまでも私の"この"脚で、どこまでもぐちゃぐちゃにかき回して跡形も無く踏みにじってあげるわ…。あなたの感じる快楽を。…感じるわよ。どう、…堕落したい?楽しみにしてて。」
ハウシンカは、呟いた。
「ゴメン、ゼク…。私はやっぱり、心が弱いのかも知れない。」
でも、どうしてもそうは思いたくなかった…。
飲み込めない、…塵芥!!
私は…、お父様の娘なんだから…!!
ゼクは、もう既に意識を失っている。