空色のクーパーに乗って(使徒行伝・リメイク)

オープニング…

「もえつきたいの」 キノコホテル

キノコホテル「もえつきたいの」 PVフル - kinocohotel - - YouTube

麻倉文乃は、25才である。

タワー・レコードのバイトだ…。

「えっ?久美さん、いや猿田店長…。私がやるんですか?いらっしゃいませ…。ああ?はい、はい。え〜っと3,888円になります。はい、ありがとうございました…。」

いつか正社員に…、といった漠然とした希望は持っていたが別に未来に「何か」を託していたワケじゃぁない。

どうせ毎日が同じ事の繰り返しであり、人生なんて退屈なモノだ…。

あるバイトの休みの日、スマホがメールを着信した。

「うっさいなぁ…。いい気分で寝てんのにさ!何なんだよ、一体もう…。」

それでも何のかんのと言いながらも、一応はチェックする。

メールの主は古い友人の門仲若菜だ。

今日…、これからどこかに出掛けよう。といった内容である。

「どこかって、どこなのさ!?いっつもそう!!どこかどこかって、何にも決めないで…!!」

今回もいつも通り。

漠然とした提案をするだけして、内容と言える内容は特にない。

それでも、O.K.と返事はして着替えを始める。

The Strokesの黒いバンドTに、色の濃くもなく薄くもないスキニーのジーンズ…。

それに赤・白・青のトリコロールのシャツを、腰に巻いて。

愛車の空色のミニ・クーパーのエンジンをかけ、発車する。

「ゴメンね…、いつも急で。でも、本当に良かった。スケジュールが合ってさ!!」

若菜は、黒の薄手のレザー・JKを羽織っている。

青と白のギンガム・フレアスカートに、マーク・バイマークジェイコブスのパステル・ピンクのモティーフのパール・ピアス。

助手席に座る若菜は、何の歌かわからない鼻歌を歌っていた…。

車内には、文乃のかけるThe Rollingstonesの「Sticky Fingers」のカセット・テープが流れている。

A面が終わると、若菜は言った。

「これ、かけていい…?最近のお気に入り!!マイ・ブームなの!」

Streophonicsの「Word Gets Around」のCDだ。

珍しい事もあるモノだ…、と文乃は面食らう。

若菜は音楽にはあまり興味がない。

好きなコト、キョーミあるコトと言えばガーデニングにそれに料理…。

「どーしたの、このアルバム?よく知ってたね。ケッコー、レアじゃない?私もキライじゃない!」

「ウン?ダンナの影響よ…。ウチのダンナ、洋楽好きだから。」

若菜は既婚者だ。

大学時代の同級生と結婚した。

年齢は相手の方が、一コ上。

若菜のダンナとの面識は、文乃にはなく…。

子供ももう設けている。

男の子で…。

若菜は「Word Gets Around」をバックに、ダンナや子供の話をしていた。

決して愚痴という程重くはないが、誰にでもある生活の苦労話だ。

「どこに向かってる?まぁ私は…、特にどこでもいいんだケド。」

「どうしよう?行くトコないなぁ…。いっか?浅草で!」

浅草寺から離れた所にあるコイン・パーキングに車を停めて、二人は歩き出した。

勿論、料金は割り勘…。

言うまでもない事だ。

二人は空いたお腹を抱えて、すぐに天丼で有名な「大黒屋」さんに向かう。

少し並んで待ってから通される店内は落ち着いていて、外の人でごった返した喧騒とは無縁であった。

「文乃はさ…。恋人は作らないの?」

「いらないよ!!いらない、いらない!!ウッサいメンドくさいだけじゃんか?」

天丼のえび天は大振りではないが、プリッとした歯応えで上々の味わいである。

「何て言うのかな?女性ってさ…、何のかんの言っても愛されて初めてシアワセなんじゃないかなぁ?って思ったりするのよ。」

「つまり、F××kでしょ…?だからさ、そんなの愛とは関係ないって!!みんなしてるコトなんだから…。私は、キョーミないだけ!そんだけだよ!!」

「大黒屋」さんの、お茶は美味しかった…。

若菜は、サービスについてこう考えている。

サービスの本質は、このお茶なのだ。

だってご飯が美味しかったら、欲しくなるモノなんて一つしかないじゃない?

それがエロスなのよ…。

文乃と若菜は「大黒屋」さんを出ると、プラプラきび団子食べたり焼き立てせんべいをかじったりしながら浅草寺の境内へと向かう。

「誰かに写真撮ってもらおうよ…、文乃!!」

若菜の提案は、文乃には受け付け難いモノだ。

「ドーデもよくない…?そんなコト。別に自分なんて映さなくても、境内は充分キレイじゃない。」

若菜は近くで観光している外国人さんの夫婦にスマホを渡し、操作方法を説明している。

「英語話せるんだね…。せっかくの特技を、そんなムダなコトに。」

外国人さんの夫婦は笑顔で承諾し、カメラのレンズをコチラに向けてくる。

そうなるとさしもの文乃も、思わず一応それなりのポーズを付けピース・サインを出してしまった。

色々なお店を覗いては覗くだけでお金は落とさず、二人は夕暮れの浅草寺を後にする…。

日も暮れつつある「雷門」のちょうちんをバックに、文乃は若菜にこれからどうする?と尋ねた。

「今日はウチのダンナ遅いの…。遅番だからさ。まーくんも、お母さんに預けて来たし。」

話は決まった。

文乃は「捕鯨船」さんで飲んでみたかったが…。

給料日前で、もうあんまりお金が無い。

コンビニで飲み物とつまみを購入して、晴海埠頭に車を走らせる。

入り組んだ埠頭の奥まった所に、灯台の様な誰もいない建物があった。

サントリー「オール・フリー」の缶を開ける文乃。

若菜は、「ソルティ・ドッグ」。

カクテルだ…。

スナック菓子をつまみながら、おしゃべりに興じる。

「文乃さぁ…。ホントに好きな人もいないの?そんなハズないと思っちゃうな〜!」

「うるさい!!う〜る〜さい!いないいない!!誰もい〜な〜い!!」

ソルティ・ドッグ」のホンノリした塩味が、若菜のノドを刺激した。

「だって、モテるじゃない…、文乃って。高校生だった頃だってさ。私、そこそこ大変な想いしてるのよ?」

「うるっさいのはね…。いっぱい来るよ、そりゃあ!!」

文乃は立ち上がって、縁石の上でバランスを取る。

ヨタヨタと歩く様を、若菜はカルビーの「うすしお」をパリパリ食べて見守った。

「一人だけ…。そう一人だけいるんだ。絶対話し掛けて来ないし、近寄って来ないのが。」

それからは音楽の話に、スライド・シフトしてしまう。

ダンナの影響で、音楽に興味を抱き始めた若菜。

それでもそうなると文乃の独壇場で…。

今日の、カウンター・カルチャーの在り方について。

セックス・ピストルズが、パンクを殺してから何が起きているのか?延々語る。

「結局もう、ポップ・ミュージックはポップ・ミュージック。オルタナティヴはオルタナティヴで、やってくしかないんじゃないかな?やってる事が離れ過ぎちゃって、元の鞘には収まんないからさ!!」

若菜は、ニコニコしながら頷く。

こんなマニアックな話…、何が面白いのかはわからない。

The Killersとかなんか、若菜にはオススメかな?聴き易いと思うんだ、シューゲイザーとかとはちょっと違うんだけど…。」

若菜は、何か納得した様に頷いた。

その瞬間に、文乃は「オール・フリー」の缶をベンチに叩きつけたのだ!!

「だからさ…。そいつが好きなんだよ!!気になるんだ!!」

「やっと…、本音が聞けたわね。」

若菜は、笑顔でヤキモチをやいている…。

テーマ曲…

「Love Interruption」 Jack White

Jack White - Love Interruption - YouTube