ぼくの天才論

世間一般では、…いわゆる「天才」って非常にもてはやされるワケです。

John Coltraneとかね、彼はまぁ天才で。

作品を聴けば誰でもわかる通り…、華やかで目立つ存在。

これDJしてるとわかるんだけれど、じゃあJohn Coltraneみたいな「天才」の作品を並べればうまくゆくのか…?

そ〜でもないんだよね、…John Coltraneってのは定食に例えると「とんカツ」とか「ハンバーグ」みたいな存在なの。

…美味しいでしょ?インパクトあるし、でも一つの定食のお膳に。

「とんカツ」と「ハンバーグ」…、両方のってたら食べ切れないし。

「しつこいよね」ってハナシになっちゃう、だからやっぱりお漬物とか千切りキャベツとかも必要なのさ…。

Jazzに例えると、…Hank Mobleyなんてのはお味噌汁みたいなキャラクターで。

…地味なのハッキリゆって、でもやっぱり聴いてると落ち着くのね。

聴きやすいし…、Jazz評論家の後藤雅洋さんがすごくゆいコトを仰ってるんだケドさ。

John Coltraneは聴いてると疲れる」ってゆ〜の、これすごいなと想って…。

やっぱりDJしてみると、…「天才」の作品って聴いてて疲れるんだよ。

…「人生とは何か?」みたいな、テーマが難解で崇高だから。

そこへ来るとHank Mobleyなんて…、「今日はいい天気だから散歩して気持ちよかった」って感じの作風でしょ?

どっちも必要なんだよ、Hank MobleyとかJackie McLean、それにJohnny Griffinなんて中堅ドコロのハード・バッパーが散々ブロウしまくりんぐって…。

そこにJohn Coltrane御大が登場するから、…Showは面白くなる。

…改めて定食に例えると、中堅ドコロのハード・バッパー達はごはんでありお味噌汁でありお漬物なの。

じゃあ地味で目立たないから…、価値として劣るのか?

そんなコトないでしょ、そこに「とんカツ」がのっかってるから美味しいんじゃない…!!

ぼくが何をゆいたいかとゆ〜と、…新たなシーンとゆ〜のは確かに「天才」が切り拓くけれど。

…その大地をならして耕すのは、フォロワー達なんだよ。

だから「天才」だけじゃだめなの…、1950年代ぐらいのJazzがものすご〜く面白かったのは。

それ程才能がトンがってないフォロワー達ががんばったからなのさ、「天才」をありがたがるのもゆいけれど…。

ホントにカルチャーが盛り上がる為には、…そのあとに続く人達がどれだけバリエーションを形成出来るかにかかってる。

…要は支え合いなんだよね、「天才」なんて100万人に一人ぐらいで充分。

あとはもう自分の才能の限りを尽くして…、一生懸命シーンを盛り上げる。

「天才」じゃない、中堅ドコロがどれだけShowを盛り上げるのに一役買うか…?

それはぼくが前述した、…Jazz・ミュージシャン達を聴いてみてもらえれば。

…真に、「論より証拠」だから!

 

 

ぼくのバイト先の新しい店長

ぼくはスーパーでバイトしてるんだけれど、今度店長が新しい人に変わったのね…。

新しい店長は若い人で…、7:00ぐらいに出社してすぐに有線の店内BGMでJ-Popのヒット・メドレーを流すワケ。

…ぼくは思春期を迎えたあたりから、とにかくJ-Popが大嫌いで。

昔ツルんでた仲間と、…「あんなの大衆向けだよ本物じゃない」と散々悪口をゆってたんだ。

現在でもその意見は本質的には変わってなくて、いわゆるJ-Popのヒット曲がアートだとは考えない…。

でもぼくはその新しい店長の流し続けるJ-Popを聴き続けるウチに…、「それ程本格的な音楽ファンじゃない人が親しむ作品ってどんな感じだろう?」と想うようになったのさ。

…例えばぼくの介護士やってた頃の先輩は、ぼくのブログを「面白いよ」とほめてくれる。

でもその先輩はすごい読書家で頭がゆいの、…だからその意見はものすごく貴重なモノとして聞かせてもらってる。

でもその先輩はハッキリゆって特別なんだよ、才能があってお仕事出来ちゃう…。

そ〜ゆうお方にしかアピール出来なかったら…、ぼくはごはん食べてゆけないんだよね。

…そしてぼくのブログは全然お客さんついてなくて、ハッキリゆってそれは困るの。

だからちゃ〜んとお客さんが着いてとゆ〜結果を残してる、…J-Popのヒット・メーカーの人達をバカにするコトは出来ない。

いややっぱりそれもお仕事なんだから、尊重しなくてはいけないと想うようになって…。

ずっとBGMとしてヒット・メドレーが流れてる間中…、「うるせえなぁ」と心の中で悪態を吐いてたんだけれども。

…頭を下げて勉強させてもらないといけないな、と考えるようになりました。

確かに大衆向けなんだケド、…ほとんどの方は音楽だけじゃなくて。

映画も物語もそれ程興味が無いんだから、そ〜ゆった方達が楽しめる娯楽を創作しなければならないとぼくは想う…。

「これは崇高な芸術なんだからわかるヤツだけわかればい〜」なんて…、ぼくはプロはゆっちゃいけないと考えてる。

…現代の時代に必要なのは、ぼくは娯楽だと想うワケ。

本当に楽しくて時間を忘れてしまうよ〜な、…だって人生楽しまくちゃ損じゃない?

創作活動する人って、お祭りを取り仕切ってるよ〜なモノで…。

参加してもらって楽しんでもらう…、それで初めてお金がもらえるんだから。

…やはり商品として成立していないと、出版社とかレコード会社とかも食べてゆけない。

ヒットさせるにはそれ相応の手腕がいる、…そしてそれはそれとして評価されるべきだと胸に刻んで。

新たな気持ちで、これからも物語に取り組んでゆきたいと考えています…。

ウチの店長について…、何も書いてないじゃないかと仰る方がいらっしゃるかもわからないので。

…ちょっと書いとくと、ぼくはある日ウチの店長の隠された素顔を見てしまった!!

ぼくが勤務上がりに、…タイム・カード押そうと想ってバック・ヤードにゆくと。

ウチの店長が、掃除用具一式を抱えて涼しいお顔でおトイレから出て来るの…!

わかるかな…、バック・ヤードにあるんだから従業員用のおトイレだよ?

…「汚れてゆたら気づいた人がやりましょ〜」、そ〜ゆうのよくゆ〜じゃない?

でも自分でやっちゃう店長さんって、…少なく共ぼくは初めてだね。

しかも掃除担当はちゃ〜んとゆて、たまたまその日休みだっただけで…。

偉いよね…、自分がおトイレ入って。

…「汚いな」と想ったんだろうケド、ウチの店長はすごいこんな方ちょっといないよと。

お客さん用のおトイレなら話はわかるの、…汚ければ売り上げに影響する。

ところが「従業員の為に」、こ〜ゆうコトされちゃうとぼくもかんばらないといけないって…。

想っちゃうよね…、だから〜♪

 

テーマ…

「Superfly」 Curtis Mayfield

https://youtu.be/heky9JxNsSs

お母さんのお誕生日大作戦だから

小学5年生の飯高安和(いいだかやすのり)は、…夕ごはんを食べた後宿題の算数を解いてゆた。

…「直方体の体積はたて×よこ×高さだから、まだいたいこのぐらいかな?」

安和は若干の後ろめたさと共に…、ノートと教科書を閉じる。

「宿題は今日はいいんだ、もっと大切なコトがぼくを待ってるんだから…」

妹と一緒の2階にある子供部屋を出て、…階段を降りる安和。

…「安和、宿題終わったの〜?それなら…、早くお風呂に入っちゃって」

安和のお母さんが声をかける、普段ならゆう通りするのだが…。

「智美(ともみ)、…ちょっと話がある。部屋まで、来てくれ…」

と…、妹の智美を子供部屋に呼んだ。

…「ブー、何でちお兄ちゃん話って?」

智美はTVを観てゆる途中だったから、…続きが気になって仕方ない。

「いいか智美、明日はお母さんの誕生日だろ…?」

智美は…、嬉しそうにバンザイした。

…「そうでち、お父さんが美味ちいケーキを買って来てくれるんでち。」

安和は、…真剣な面持ちで智美に告げる。

「だからぼくは、カレー・ライスを作ってプレゼントしようと想うんだ…。明日智美が帰って来たら…、ぼくはカレー・ライスを作ってる。…だから、そのコトは秘密にしておいてくれよ」

途端に、…泣きそうになる智美。

「お兄ちゃんまだ子供だから、ガス・コンロ使っちゃいけないんでち…。包丁だって…、あぶないんでちよ」

…うつむきながら、安和は確信を込めた。

「ぼくなら大丈夫、…一度家庭科の調理実習で演ってるから。そんなコトよりもバレたら全て終わりだ、黙っててくれよ…?」

智美はコロッと泣きやむと…、途端に笑顔になる。

「…ぢゃあたち、お兄ちゃんのゆ〜コト聞いて。お手伝いするんでちブー、…何だか楽ちくなって来まちたね」

その時一階から、お母さんの怒る声が聞こえた…。

「よしわかった…、それでいいから。…明日帰って来たら、買い物にゆくぞ?」

そして、…安和はお風呂の支度をして下に降りる。

 

次の日、先に家に帰った妹の智美は安和を待ってゆた…。

「ただいま智美…、ちょっと待ってろ今お金を取ってくる。」

…安和は学習机の引き出しから、100円玉を五枚取り出す。

「これはこの日に備えて、…ぼくが一生懸命貯めた500円だ。これで、お肉とカレー・ルーを買うぞ…。」

不思議そうに安和を眺める…、智美。

…「お兄ちゃん、カレー・ルーなら戸棚に入ってるんでち?」

安和は、…首を横に振った。

「ウチにあるカレー・ルーは、甘口だろ…?お母さんは…、ぼくらに合わせて甘口を食べてるんだ。…ホントは大人なんだから、中辛の方が好きに決まってる」

…そして二人は、近所のスーパーまで歩いて出かけた。

中辛のカレー・ルーをカゴに入れると、…次はいよいよお肉売り場である。

「本当は牛肉が欲しいケド、ぼくのお小遣いじゃ買えないから豚肉の小間切れを買うよ…。智美…、脂身の多いお肉が美味しいってお母さんゆってたよ」

…困った顔で聞き返す、智美。

「ブー脂身って何でち、…お兄ちゃん?」

安和は、得意になって答えた…。

「お肉の白いトコロだよ…、お肉には赤いトコと白いトコあるだろ?…白い部分が多ければ多いほど、食べ応えがあるんだって」

しかしそ〜はゆってみたモノの、…安和にはどれがど〜違うのか見ても全然わからなかった。

安和は悩みに悩んだがこれ以上時間はかけられない、その時智美が一つのパックを安和に手渡す…。

「お兄ちゃん…、あたちが見た感じ。…これがイチバン脂身が多いんでちブー」

ゆわれてみれば確かに、…際立ってはいないがうっすらと白い部分が多かった。

安和は智美を連れて、レジを済ませるとおウチに帰った…。

 

おウチに着いた二人は…、早速キッチンに向かう。

…「智美ぼくはお米研ぐから、お前お野菜の皮をむいててくれ」

智美はキッチンまで背が届かなかったから、…床に新聞紙を広げボールを置いて。

ピラーで皮をむきはじめた、安和はお米を研ぎ始めたが…。

ある程度慣れてゆた…、何度か調理実習で演ってゆたから。

…研いだお米の入ったお釜を炊飯器にセットして「炊飯」ボタンを押すと、智美のむいたお野菜を手に取り。

包丁で切り始めた、…これは慎重に運ばなければゆけない。

まだ慣れてゆない安和は、時間をかけてお野菜を切ったが…。

ど〜にも形が均一にならない…、だがあまり時間をかけると。

…お母さんがお仕事から帰って来てしまう、だから遅くとも。

そこまでには、…お鍋を火にかけてゆる必要があった。

お野菜を切り終えた安和は、お肉とお野菜を炒める為にガス・コンロの火を点けようとする…。

「ダメだ…、何で火が点かないんだ?…まさか、故障してるのか」

安和が何度スイッチを入れても、…ガス・コンロはシーシーゆうばかりで火は点かなかった。

焦る安和、しかしその時家庭科の先生の顔が浮かぶ…。

「ガス・コンロは使い終わったら…、必ず元栓を締めるよ〜に」

…「それだ」と想った、お母さんは元栓を締めてるからガス・コンロに火が点かないんだ。

ガス・コンロの裏側を覗くと、…確かに元栓は締まってる。

指先でツまんで元栓を開き、スイッチを入れると…。

やっと火が点いた…、そして安和はお肉とお野菜を炒め始め。

…あとは順調に進む、さぁこれでお母さんの帰りを待つだけだ。

 

30分程待ってゆると、…やがてお母さんが帰って来る。

「ただいま〜、あれ何このいい香り…?あなた…、まさか早く上がったの?」

…キッチンにお母さんがやって来るのを、安和と智美はいまかいまかと待った。

「ジャンジャジャ〜ン、…お母さんお誕生日おめでとう!!!」

安和と智美は精一杯囃したが、お母さんは目の色を変えて怒る…。

「バカッ…、何やってんの!!…まだ子供なのに、包丁使って火を点けるなんて!」

智美は、…すぐに泣き出してしまった。

「びぇ〜ん、お母さんごめんなちゃい〜」

しかし、安和は負けずに自らの行為の正当性を主張する…。

「お母さん…、ガスも包丁も何度か調理実習で使ってるから。…それに見てよ、わざわざ中辛のカレー・ルーを買って来たんだよ?」

お買い物の話が出ると、…お母さんの怒りにますます油を注いだ。

「あなた、そのお金はど〜したの…?そんなお金…、持ってないでしょ?」

…安和は、「待ってました」と想った。

「貯めたんだよ、…お母さん。でもあんまり貯まらなかったから、こ〜ゆうプレゼントになったのさ…!!!」

それを聞いた時…、お母さんの怒りは解ける。

…「まぁそ〜よね、そんなに上げてないから。まぁもうやったコトはしかたないわ、…でももう二度としないでね。寿命が三年は縮んだわ…」

イタズラっぽく笑う…、安和。

「あれっ…、お母さん嬉しくないの?…まだ、お礼を聞いてないよ。」

お母さんは、…肩の力が抜けた。

「そうねゴメンなさい、ありがとうとっても嬉しいわ…。でもこれからは…、どんな理由があっても。…お父さんとお母さんの見てないトコロで、ガスと包丁は使っちゃダメよ。」

調子に乗った安和は、…軽口を叩いた。

「えっ、それじゃ調理実習はど〜するの…?」

呆れた顔で…、注意するお母さん。

…「へ理屈ゆ〜んじゃないの。ところで、…智美中辛のカレー・ライス食べられるのかしら?」

お母さんはそ〜ゆうと、お鍋からカレーのルーを小皿に一口よそって智美に渡した…。

「ブぎょぇ〜…、あたちまだ二年生でちから」

…お財布から千円取り出し、お母さんは安和に渡す。

「安和、…悪いケドこれから智美とスーパーにゆって。智美の好きなお惣菜を一つ買ってやって…。それから今日のプレゼントのお礼に…、二人共好きなアイス・クリーム買っていいわよ」

…安和は、飛び上がって喜んだ。

「ほらな智美、…ぼくのゆった通り。お母さん喜んだろう、さいくぞ…。何のアイス・クリームにしようかな…、そうだ今日の気分は丸永の"あいす・まんじゅう"だな!!!」

 

テーマ…

「Tell me baby」 Red Hot Chili Peppers

https://youtu.be/oDNcL1VP3rY

 

天に咲く百合の花

「お母さん、デートするからお金ちょうだい…」

小学6年生の良太は…、台所に立つ母にそうねだった。

…「何ゆってるの良太、ウチには余計なお金はありませんよ!!」

良太の母親はそっけなく突っぱねる、…いつもならすぐに引き下がる良太だが用件が要件だけに退かない。

「勝美がさ今度誕生日なんだよ、そのプレゼントを買いたいんだ…」

良太の母は…、イラ立ちを隠さない。

…「鈴代さん家はお金持ちなんだから、何でも好きなモノ買ってもらえるでしょ?ウチはお金無いんだから、…そんなコトする必要ありません」

良太はいつも想う、お母さんは本当にぼくを愛してるんだろうか…?

「そ〜ゆう問題じゃないよ…、プレゼントって気持ちでしょ?…たくさん出してってゆってるワケじゃないんだから、頼むよ」

いくら親でもゆってはいけないコトもある、…だが良太の母はその一線を越えてしまった。

「そんなに買って上げたいなら、自分のお小遣いから出しなさい…。毎月々々…、ちゃんと上げてるでしょ」

…良太は「お母さんツまらないな」と想う、しかしこれは粘っても無駄だろう。

良太は居間にゆきTVを点けた、…内容が頭に入って来ない。

確かにお小遣いはもらってる、でも月々500円のお小遣いではどう貯めたってデートは出来ない…。

そりゃあそうさ…、勝美は欲しいモノ買ってもらってるだろう。

…でもそんなの関係ない、お母さんは女性なのにそんなコトもわからないのかな?

良太は取り留めも無く想いを巡らせる、…しかし諦めはつかない。

せめてプレゼントだけでも、そう想い「いっそ万引きでもするか」そんなコトを考えた…。

 

やがてお父さんが帰って来る…、お父さんが帰って来れば夕ごはんだ。

…恋に悩んでゆてもおなかは減る、お父さんは上着を脱ぎ母親に渡す。

すると母は、…お父さんにこうゆった。

「お父さん良太がね、"デートするからお金を出してくれ"なんてゆ〜んですよ…。まだ小学生だってゆうのに…、あなたからちゃんと叱ってやって下さい」

…良太は「ゲッ」と想った、お父さんは母に比べればあまり怒らないが。

いざ怒り出すとどんな言い訳も通用しない、…覚悟を決める良太にお父さんはゆう。

「へ〜どの娘だ、良太…?」

拍子抜けしながら…、良太は答えた。

「…勝美だよ、鈴代勝美」

お父さんは、…嬉しそうに笑う。

「あぁ鈴代さんトコのお嬢さんか、良太お前なかなかいい趣味してるな…。もう…、デートに誘ったのか?」

良太は…、悔しくて泣きそうだ。

…「まだだよ、だってお金無いモノ」

お父さんは、…財布を取り出すと良太にその場で3000円差し出す。

「よし、これでうまく演れ…」

呆気に取られた良太は…、ボソッと呟く。

…「でも、返せないよ?」

お父さんは、…大笑いして答えた。

「このお金を返すぐらいなら、しっかり口説き落とせ…。あと結果は直に俺に報告しろ…、それでいい」

…良太の心に、再び希望の光が灯る。

「ありがとうお父さん、…大切に使うよ」

良太のお父さんは、真面目な顔でゆった…。

「良太…、恋愛は城攻めと同じだ。…命懸けで演れよ」

 

そしてデート当日、…良太は待ち合わせ場所である駅に向かう。

待ち合わせとゆ〜と遅刻しがちな良太であったが、この日は気を遣って10分前に到着してゆた…。

「早いね…、もう来てたんだ」

…5分程すると勝美がやって来る、良太は白のTシャツにジーンズそれにデニムのジャンパー。

勝美は紺のワン・ピースの上に、…レモン・イエローの薄いカーディガンを羽織ってゆる。

良太は先ず、自分のゆきつけの中古ファミコン・ショップに案内した…。

棚から一つずつファミコン・カセットを取り出しては…、勝美に評論を聞かせる。

…「良太くんのイチバン好きなカセットは、どれなの?」

勝美の問いに、…良太は待ってましたとばかりに答えた。

「そりゃあモチロン、ドラゴン・クエストⅡだね…。これは面白いよ…、悪い神さまをやっつける為にたった三人で旅をするんだ。…最後険しい山の上に闇の神殿があるんだケド、その山道が厳しくて。何度もやり直して、…ようやく辿り着くんだ。でもそこが面白いのさ、勝美はファミコン持ってる…?」

事実をありのままに答える勝美だったが…、良太にはあまりに残酷だった。

…「持ってないよ、でもこの前スーパー・ファミコン買ってもらったから」

 

少し時間が経ってお昼時、…良太は家族でゆきつけのお好み焼きやさん「みさと」に勝美を連れてゆく。

ベビースターもんじゃ一つね、勝美は何にする…?」

メニューを眺めてゆる勝美も…、すぐに決まった。

「私、…紅生姜焼きにしようかな」

…すぐに器に盛られたもんじゃとお好み焼きの素が運ばれる、鉄板が熱くなるまでよくかき混ぜて待つ。

「勝美はさ…、お好み焼き焼いたコトあるの?」

勝美は、首を横に振った…。

「いつもお母さんにやってもらってるから、…良太くんはあるの?」

…良太は、誇らしく胸を張ってゆう。

「ウチは…、自分の分は自分で焼くんだ。もし何なら、勝美の分も焼こうか…?」

笑顔になる、…勝美。

「…ありがと、良太くんは偉いね何でも自分でやって。私も見習わなきゃ…、自分でやってみる」

良太は勝美を…、「しっかりした娘だな」と想った。

しかし、それは口には出さない…。

 

お昼を食べた二人は、…ゲーム・センターに向かう。

…良太は、得意な「モンスター・ランド」に100円入れて。

たちどころにクリアしてみせた、…しかし勝美はそれ程面白がっていないようだ。

それはそ〜だろう、単に良太がゲームをクリアしただけのコトだから…。

良太は少し悩み…、U.F.O.キャッチャーのコーナーに勝美を連れてゆった。

…これは効果があった、勝美も女性だけあって。

可愛いぬいぐるみやキー・ホルダーには、…興味が湧く。

「私、このくまのぬいぐるみ欲しいなぁ…」

それには良太が困った…、良太はビデオ・ゲーム専門でU.F.O.キャッチャーは手を出したコトがないのだ。

…良太がまごまごしてると、勝美は自分のお財布から100円玉を取り出しU.F.O.キャッチャーに入れる。

「U.F.O.キャッチャー得意なんだ、…見ててね」

だが勝美の操作するクレーンは、ぬいぐるみを取り損なった…。

もう一度トライするが…、それも失敗に終わる。

…良太はそれをわきで眺めてゆて、「あぁそ〜ゆうコトか」と何とな〜くやり方はわかった気がした。

良太がお金を入れて、…U.F.O.キャッチャーのアームを操作すると一発でぬいぐるみが獲得出来る。

当然だがそれは勝美に上げた、くまのぬいぐるみはキー・ホルダーになってゆて…。

勝美は…、それを肩にかけてゆるバッグに留める。

…「ありがとう、とっても素敵な誕生日プレゼント」

良太は、…慌ててそれを否定した。

「いや、もっとちゃんとしたのを考えてあるから…」

驚いたように…、目を丸くする勝美。

…「このくまさんでもう充分なのに、ゴメンね良太くん」

良太は、…カラッと笑った。

「ケチ臭いコトゆうなよ、あと二日でもう誕生日なんだろ…?」

勝美は自分の境遇が恵まれてるのを知ってゆた…、そして良太がそ〜ではないのも。

 

…ゲーム・センターをあとにする頃、まだ陽は明るかった。

「このあと、…ど〜するの?」

勝美の問いに、良太の心は緊張に引き締まる…。

おもちゃ屋さんにゆこう…、そこでプレゼントを買う。」

…勝美の心に悦びが湧いた、遂に来るべき時が来たのだ。

おもちゃ屋さんの扉を開ける良太、…ドキドキする勝美。

「良太くんは、一体何を贈ってくれるのだろう…?」

おもちゃ屋さんに並ぶ無数のおもちゃには目もくれず…、良太は勝美の手を引き真っ直ぐに奥へと向かってゆった。

…「買って贈るのが本当だと想うんだけど、さすがに何の絵柄がゆいのか選べなくて」

振り返った良太の向こう側にあったのは、…スヌーピーのジグソー・パズルである。

スヌーピーは、勝美のイチバン好きなキャラクターなのだ…。

「ぬいぐるみはさすがに手が出ないから…、これで勘弁してよ」

…ぬいぐるみはもうもってゆるのだ、それも子供ではとても買えない大きなモノを。

「ジグソー・パズルなら遊べるし、…飾れるからいいかなと想って」

3種類ある絵柄の中から、勝美は迷いに迷って決める…。

迷うのがこんなに気持ちゆいとは…、想像したコトもなかったのだから。

 

テーマ…

「Weather report」 フィッシュマンズ

https://youtu.be/p1HhkyYgLkw

 

ドーナツ形の夢

初野隆代(はつのたかしろ)は、…千葉県の公立高校に通う二年性だ。

…学校のレベルはとゆえば、偏差値55ぐらいの。

よいともゆえないし悪くもない…、平均的な出来で。

その学校で真ん中ぐらいの成績だった隆代は、まさに平凡を絵に描いたような高校生だったといえるだろう…。

隆代の趣味とゆえば、…TVゲームで遊ぶぐらいで特に好きなコトはなかった。

…友達もいなくはない、普通に学校でも分け隔てなくといえば聞こえはよいが。

実際には単に自己主張が無かっただけである…、誰とでも付き合った。

そんな隆代に転機が訪れる、それは同級生のお家に招待され遊びにゆった時のコトだ…。

最初はTVゲームでワイワイと遊んでいたが、…途中で隣の部屋から音楽が流れてくるのに気がついた。

…「これ何の音楽?」

隆代は…、友人に尋ねる。

「あぁ親父だよ、部屋で大音量でJazzを聴くんだ…。うるさいだろ、…悪いな。」

…その通り隆代は初めうるさいと思った、ところが聞いているウチにだんだん気持ちよくなってしまった。

隆代は友人の親父さんの部屋へ失礼し…、アルバム・タイトルとミュージシャン名を教えてもらう。

アルバム・タイトルは「Full house」、ミュージシャンさんはWes montgomeryとゆ〜らしい…。

帰ってから隆代は、…早速iTunesでダウン・ロードした。

…しかし「何か」が違うと想った、言葉にするのは難しいが何とな〜く気持ちよくないのである。

「気の所為かも知れない」…、隆矢はそう考え終わりまで聴いた。

次の日通学する際、iPhoneで何をかけるか迷う…。

だが不思議と「Full house」を聴く気にはならない、…隆代は「あれっ?」と想った。

…高校生にとって1500円は決して安い金額ではない、それがたった一回聴いただけで終わるなんてそんなワケにはいかない。

無理して聴いてみたモノの…、退屈で眠たくなった。

その朝の一件を、例の友達に語ると…。

「親父が部屋で聴いてるのは、…レコードなんだよ」

…とのコトだった、隆代は友達に頼み週末にもう一度お家に連れてゆってもらう。

やはり友達の親父さんはJazzを流している…、隆代はまたあの昂揚感を味わった。

「レコードだ」と確信した隆代は、ネットで検索し何とか安く聴けないか調べる…。

するとど〜やらiON Audioとゆ〜メーカーから、…1万円ちょっとでスピーカーつきのモデルが手に入るようだ。

…隆代は両親に頼みこみ二年分のお年玉を前借りし、購入資金に当てた。

肝心のレコードはとゆえば…、「Full house」は手に入らなかったので同じWes Montgomeryの。

「Impressions」を買った、隆代はワクワクしながらレコードの針を落とす…。

するとやはりこれだった、…この体の奥から気持ちよくなる感じ。

…隆代は気がついた、「これJazzに限らないよな」と。

それ以来隆代は…、せっせと毎月のお小遣いを注ぎ込み。

毎月レコードを一枚ずつ購入した、誰のアルバムを買うかはネットでおススメを引きYoutubeで再生して決めた…。

 

隆代にもついに「好きなコト」が出来た、…すると不思議なモノで。

…この「好き」を誰かと共有したいの望み始める、クラス・メイトを片っ端から当たってみたが。

音楽好きはゆてもレコード好きはいない…、女子生徒から。

「レコード聴くのが趣味なんて、おシャレね…」

といった発言も聞かれたが、…隆代はど〜でもいいと想った。

…とにかく隆代にとって、現在大切なのはレコードだけである。

そんなある日の学校帰り…、敷地内に停まってゆる一台の車の中に目をやると何と!!

「Disk Union」のレコード・バッグが載ってるではないか、隆代は…。

「これは神さまがくれた、…チャンスに違いない!」

…そう確信し、この車の持ち主が現れるまで張った。

しかしなかなか車の持ち主は現れない…、やがて日も暮れおなかも空いてくる。

夜7:00を回った頃、誰かが近づいてきこう告げた…。

「おいっ、…俺の車に何してるんだ」

…声の主は数学教師の猪岳哲雄(いのだけてつお)である、しかし隆代は瞳をランランと輝かせてゆった。

「この車…、先生のっスか?」

哲雄は、尚も不審そうに隆代を半ばにらみつけている…。

「だとしたら何だ、…そもそもお前は何故こんな時間まで残ってるんだ」

…隆代にとっては、教師から叱られてゆるとゆ〜現実はどうでもよかった。

やっと「心の同志」を見つけたのだから…、隆代の心から喜びが堰を切って溢れ出る。

「先生、先生はレコードを聴くんですか…?」

隆代は哲雄に、…これまでの経緯を語って聞かせた。

…哲雄は警戒は解いたようだったが、同時に呆れてもいる。

「お前たったそれだけの為に…、こんな時間までここにいたのか?何でもゆい、話は明日だ昼休みに職員室へ来れば相手をしてやるから…。とにかく、…今日はさっさと帰れ」

…隆代はまるで天にも昇る気持ちで家路に就いた、とにかく明日になればレコードのの話が出来るのだ。

翌日隆代は…、先月買ったAretha Franklinの「Live at Filmore west」を下げて職員室へ向かう。

「お前はバカか、勉強に関係ないモンを学校の…。それも、…職員室に持ち込むヤツがいるか」

…そういいながらも、哲雄は隆代の差し出したレコードを手に取って眺める。

「確かに…、Arethaさんはいいミュージシャンだよ。このアルバム、俺持ってないんだよなぁ…」

隆代は、…その一言を待ってゆたのだ。

「…そのレコード貸しますよ先生、その代わり感想を聞かせて下さい」

こうして…、隆代と哲雄の交流は始まる。

 

いつものように、放課後隆代と哲雄はレコード談義に花を咲かせたある日…。

フと時計を眺める、…もう夜7:30を回っていた。

…「隆代送ってやるよ、俺の車に乗りな」

隆代も特に遠慮するコトせず…、哲雄に送ってもらうコトにする。

「先生、ティッシュない…?」

送ってもらう帰り道、…隆代ははなが垂れそうだった。

…「ダッシュ・ボードに入ってるよ、開けてみな」

ダッシュ・ボードを開けると…、そこからヒラリと一枚の写真が落ちる。

隆代が拾い上げると、そこに映ってゆたのは若い女性でなかなかキレイだった…。

「先生、…こんな若い奥さんいるんですか?」

…隆代の無邪気な質問に、哲雄は思わず声を上げて笑ってしまう。

「お前…、俺が陰で何て呼ばれてるか知らないのか?」

隆代は知るワケないと想った、何故なら先生は自分と同じレコード好きなのだから…。

「"女たらし"だよ、…だがそれは間違ってない。…俺はエッピ💝が大好きだからな」

「じゃあ結婚したらいいじゃないですか」…、と隆代は返事をした。

そ〜すればそ〜ゆう大人のゴニョゴニョも毎晩出来る、と隆代は考える…。

「いいか隆代、…俺はな新しい女性とエッピ💝がしたいんだよ。…結婚して、そんなコトしたら犯罪だろ?教師もクビになっちまって…、メシが食ってゆけなくなる」

隆代は想った、「先生は偉いなぁ」と…。

きっとそれは冒険家みたいな心情なのだ、…危険を顧みずに新たな冒険を求めるのだ。

…「隆代、お前は恋人いないのか?」

隆代はビックリした…、だからそれをそのまま口に出してしまう。

「ぼくまだ16歳ですよ、女性と付き合うなんて…。」

再び笑う哲雄、…どうやらこのおぼっちゃんは本当にレコードしか興味がないらしい。

…「何ゆってるんだ、俺が高校生の頃には。もう5人ぐらいとエッピ💝してたぞ…、こ〜ゆうのはな早くて悪いことはない。」

隆代は困った…、だって好きな娘いないし。

「お前レコード持ってるんだろ、…だったらそれで先ずムードを創るんだ。部屋で相手の好きそうないい音楽をかける、それから軽く冗談でもゆってリラックスさせたら…。美味いモノを食わすんだ…、手作りでも何でもいい。…そうすれば、女性は堕ちる。」

「だって先生、…ぼく好きな娘いないんですよ」

隆代は追い詰められて本音をゲロった、すると哲雄はこ〜ゆうのだ…。

…「女性のな、いいトコロを自分で見つけて。こっちから好きになるんだよ…、それが恋愛だ。俺は、その為にレコード聴いてるんだ…」

隆代は哲雄をすごく立派だと想った、…とても自分には真似出来ないとも。

 

…翌日の放課後、職員室にいくと哲雄はこう切り出す。

「なぁお前…、俺が顧問になってやるから"レコード同好会"を始めないか?」

隆代は感動した、それこそ自分の望んでゆた理想だと…。

「同好会にしちまえば、…お前や俺が学校にレコード持ってくるのも理由が出来るしな。…こ〜やってお前と話をするのも、周りの先生方の目を気にしなくて済む」

隆代は…、家に帰ると父親から教わって。

パソコンでチラシを作る、「レコード同好会発足」と銘打った…。

恥ずかしかったが、…一応会長として自分の名前を記載する。

…部(会)室は放課後の音楽室を借りられるコトになった、学校の吹奏楽部は体育館で主に練習していた為であった。

哲雄は…、隆代の所有するiON Audioのレコード・プレイヤーに興味を持ち。

「そんなに安いなら部室に置こう、お前予算取ってこいよ…」

春になって3年生になった隆代は、…レコード同好会の会長として学校の予算委員会に出席し。

…何とか6000円までは予算として獲得した、哲雄は。

「たったそれだけか…、全然足りねぇな。まぁいいお前の恋の為だ、残りは俺が出しといてやるか…」

こ〜して隆代は、大手を振ってレコードを学校に持ち込み…。

哲雄と二人でレコードをかけながら、…音楽の話に耽った。

…するとある日、一人の女子生徒が音楽室に入って来る。

「あの〜…、私一年生の。松岡慈雨(まつおかまな)ってゆいます、レコード同好会の部室ってここですか…?」

だから隆代は細かい話を聞く前から想う、…彼女はタイプだと!

 

テーマ…

「ジャスタジスイ」 DJみそしるとMCごはん

https://youtu.be/-6SdQT0xj-Q

青春の悔恨

「お疲れさま、先に上がるよ…」

中島安裕(なかじまやすひろ)は…、今退社したトコロだ。

…都内の小さな出版社に勤めてゆて、制作進行のお仕事をしていた。

安裕は今日お家に帰りたくなかった、…何故なら昨日妻のうるうと喧嘩したからである。

原因は安裕にある、安裕が自転車仲間との飲み会を「会社の残業」と偽ったのだ…。

理由は大したコトではない…、単に自転車仲間とのツーリングが多かったからうるうがヤキモチをやきがちだったそれだけである。

…ところがうるうは元々同じ職場に勤めていたので、この時期は別に忙しくないと知ってゆた。

安裕は飲んで帰るコトにした、…一人で飲んでると想われたくなかったから「会社の同僚と飲んで帰る」とまたウソのメッセージを入れる。

 

安裕は実家の近くのバー「酒蔵」で一人飲んでいた、現在のお家は東京の下町にあるのだが実家は千葉県北西部の常磐線沿いにある…。

そこにある実家で暮らしてゆた頃から通っているバーだ…、常磐線一本でいけたし。

…何しろ都内の飲み屋は高くていけない、「酒蔵」なら2/3ぐらいの値段でゆけるから。

どうせ同じ金額出すならいいお酒飲んだほうがゆいと、…通っていた。

バーテンダーのお酒にまつわるウンチクを聞かせてもらいながらウィスキーをチビチビやる安裕に、突然声がかかる…。

「久し振り…、まだこのお店通ってるのね」

…安裕は驚いた、うるうと付き合う前の恋人元木玲(もときれい)がそこに立っていたからだ。

「隣、…座ってもいい?」

安裕は反射的に「よくない」と想った、しかし体は何もゆわず頷いている…。

玲は現在もまだ独身であり…、以前と変わらずアパレル・ショップで働いているらしい。

…安裕は玲と話してると、独身の頃の自由な生活を思い出した。

何の計画も無くお金を使い、…将来の展望も何も無い。

それは実は充たされない寂しさが常に同居していたのだが、それは記憶のトリックで都合よく思い返さない…。

そして既読のつかない…、うるうへのメッセージ。

…「煙草の銘柄も変わってないのね、私その香り好きよ」

うるうは気管が弱かったから一緒にいると煙草は吹かせない、…安裕は「いけない」と想ったがもうあとの祭りであった。

 

始発に乗って安裕はお家に帰った、昨晩の出来事については「バレるハズがない」とたかをくくってゆた…。

問題は帰りが遅いコトでうるうの怒りに油を注ぐ結果にならないか?だったが…、安裕のお酒好きは彼女もよく知るトコロである。

…薄暗いリビングでスマート・フォンをいじり、テーブルの上に置き忘れてシャワーを浴びて寝た。

お昼過ぎに目を覚まし、…リビングへ降りるとうるうが。

「スマート・フォン忘れてるよ…」

と声をかける…、「そういえば」と取り上げて何とな〜く待ち受け画面に目をやると。

…そこには、「昨日の夜は楽しかったね」と玲からのメッセージが表示されているではないか。

安裕は焦った、…そして考える「うるうはこれを見たのか?」と。

「見たのだったら怒るに違いないだから見ていないのだ」、安裕はそう結論しようとした…。

「お昼昨日の夕はんの残りでゴメンね…、急に飲むなんてゆうから」

…「もしかしたら自転車仲間との飲み会の怒りももう峠を過ぎたのかも知れない」、そう安裕は一瞬安堵しかけたが。

「何か、…しょっぱくない?」

うるうの運んで来たスパゲッティ・ミートソースを口にした途端、何か違和感を感じる…。

うるうには何もおかしなトコロはない…、いつものように微笑を浮かべて台所に立っていた。

…安裕は気のせいかと思う、そして「やはり見ていないのだ」と結論した。

それから安裕はサイクリングに出かけたり、…帰って来てゴロゴロしたりしてるウチにお休みは暮れてゆく。

そして夕はんとなり、メニューはサーモンのムニエルとシチューそれにサラダが添えられていた…。

サラダのドレッシングはいつもうるうの手作りで…、安裕は実家にいた頃野菜はあまり食べなかったが。

…うるうの手作りドレッシングの味が気に入りいつも楽しみにしている、ところが。

「何か、…酸っぱくない?」

そう今日のうるうは、味つけが「何か」おかしいのだ…。

シチューも薄いし…、サーモンのムニエルも味が濃い。

…安裕はやっと気がつく、「うるうはあのメッセージを見たのだ」。

 

夕はんを食べ終えた安裕は、…近所のコンビニまで。

うるうの好きな、森永「ビスケット・サンド」を買いに出かけた…。

その途中で…、スマート・フォンがメッセージを着信する。

…玲からだ、そこには「今度いつ会える?」とあった。

そこで安裕はハッとする、…昨日の晩の出来事は全て幻想でしかなかったのだから。

 

テーマ…

「Blue train」 John Coltrane

https://youtu.be/HT_Zs5FKDZE

はじめての◯◯

高天治(たかまがおさむ)は大学の2年生だ、…現在同じ大学・サークルの先輩で4年生の福原寧々(ふくはらねね)と付き合ってゆる。

…一人暮らしのアパートで朝目を覚ました、ユニット・バスの洗面台の鏡を覗き込むと。

「あれっ自分ってこんな顔だったかな?」と想った…、実は治は昨日の晩。

初めて寧々とエッピ💝しちゃったのだから!!、それも駅から離れたラブ・ホテルで…。

モチロン治が誘ったのだ、…それは当然としても。

…ホテルでのチェック・インの手続きは全て寧々任せだった、ど〜やら彼女は初めてではないらしく。

ちょっとリードされてしまった…、それを思い出すと恥ずかしいし情けなくもある。

しかし一方で「仕方ない」と考えざるを得ない、何せ初めてでまるで夢の中の出来事のようなのだ…。

 

治は大学で講義を受けた、…教授の声がまともに耳に入って来ない。

…その心は昨日の晩に起こったコトへ自然と向かう、いつものように街をブラブラと散歩し。

寧々が好きなモス・バーガーで夕食を食べて…、そこで切り出した。

「もうそろそろ付き合って3ヶ月になるだろ、このあとどうする…?」

寧々は最初何をいわんとしてるのかわからないようだったが、…そのまま五分経過し悟ったのだ。

「…まさか、そんなのが誘ってるつもりなの?」

「えっぇ?…、そうだよだからさ」

そしてタクシーを拾いラブ・ホテルに向かったのだ、場所は悪友である栗橋剛(くりはしごう)に教えてもらってある…。

 

治は大学の学食でお昼に定食を食べる、…寧々との関係はみんなには秘密にしてあるからここでは会わない。

…そこに例の剛がカップ・ラーメンを片手に現れた、剛も同じサークルで軽音である。

二人は音楽の話に興じ…、今度出る好きなバンドの新譜の話などをした。

話が一段落したトコロで、治は「昨日エッピ💝をした」と切り出す…。

剛は「でどうだった?」と問い返したが、…治は何も答えられなかった。

…だって無我夢中であんまりよく憶えていなんだから!、そんな治に剛はゆってはいけないコトを告げる。

「それはお前の夢なんじゃねーの?」

治のガラスの自尊心は木っ端微塵に粉砕されてしまい…、ホントに夢だったような気がしてきた。

 

治は剛の一言から立ち直れず、遂に彼女に確かめてみようと決心する…。

そして寧々にメールした、…「昨日のエッピ💝どうだった?」と。

…当然だが彼女には彼女の日常がある、そんなに早く返信があるハズない。

今日の講義も全て終わった治はサークルに顔を出した…、そこには当然寧々もいる。

治は寧々の表情から何かを読み取ろうとしたが、彼女は視線を合わさない…。

治はど〜しても落ち着かず早めに引き上げると、…帰りに立ち飲みの焼き鳥屋さんに立ち寄った。

…他のお客さんは誰もが楽しく談笑してゆる、ように治の目には映る。

生ビールのジョッキをすぐ飲み干してしまった治は…、日本酒を頼みチビチビとやる。

憶えたての煙草に火を点けると、その苦味が口の中を伝わった…。

この立ち飲み焼き鳥屋さんは老夫婦が経営してる、…夫婦ってコトはつまりそうだろ?

…当たり前だが口には出さない、治には酔えば酔う程自分の確信がぐらつくように想えた。

悶々とした気持ちがピークに達し徳利から直に日本酒を空けた頃…、スマート・フォンにメールの着信がある。

寧々からだ、そこには…。

「秘密💖。ねぇこれから治くんのお家ゆってもいい?そしたまたなでなでしてねだからお願い」

と、…あった。

 

テーマ…

「お陽さまみえたらふとん干して」 明和電機

https://youtu.be/eVqFAl0Y5jw