アーシャ南の大陸に舞う その21

「日が暮れる前に…、山小屋に辿り着けて何よりでした」

工作隊を、振り返るアーシャ…。

「見たトコ、…どこも壊されてはおらんよ〜じゃな。…中は、ど〜じゃろ?」

ダンツは…、鍵を開けて山小屋の中に入りました。

「工作隊のみなさんも、中でおやすみ下さい…。ぺぺも先に夕ごはん済ませちゃって、…私は見張り番に立ってるから」

…ダンツに続いて、職人さん達とぺぺも山小屋に入ってゆきます。

「多少傷んでおるが…、これなら問題はないじゃろ〜。今夜は、ここで明かせそ〜じゃな…」

荷物からお皿とぺぺろぐぅ・フードを取り出し、…盛るぺぺ。

…「わしも、ゆうごはんにするか」

ダンツもほしいいを椀に開け…、お水で戻し塩こんぶを浸しました。

「プイプイ…?」

お椀に浮かぶ塩こんぶの香りに、…ぺぺは興味津々です。

…「何じゃお主、これは精進用のただの塩こんぶじゃぞ?」

ダンツは…、塩こんぶを一切れはしでつまみ口に運ぼ〜としました。

「プイプイ、プイプイ…!!」

ぺぺには、…ど〜やら塩こんぶの香りがたまらないよ〜です。

…「そんなに食べたいなら、一切れわけてやるわい」

塩こんぶを…、差し出されたぺぺの肉球の上に乗せるダンツ。

「プイプイプイプイ〜…♪」

ぺぺは、…塩こんぶを夢中でかみかみしました。…口の中に広がる、塩で引き立つこんぶの旨みと磯の香りに。人間の言葉に訳すと…、「こんなに美味しいモノがあるなんて信じられない!」とでも、ゆったトコロでしょう…。

「ぺぺろぐぅは、…草食動物じゃとゆ〜し。…精進モノがそんなに美味いなら、お主ゆい坊主になるかも知れんの〜」

そ〜ゆうと…、ダンツはワッハッハと笑います。それから、しばらく経って…。ダンツは、…アーシャと見張り番を交代しました。…乾パンと干し肉で、おなかを充たすアーシャ。すると…、アーシャは気になってゆる寝具の確認にゆきます。押し入れを開けると、ほのかに鼻につくカビのにおい…。

「何年も人が入ってなかったってゆ〜から、…やっぱりおひさまにさらさないとダメよね。…今晩は、床の上に直接寝ましょう仕方ないわ」

そこに…、山小屋に入って来るダンツ。

「アーシャ殿、今夜は一晩中…。誰かしら、…見張り番に立たざるを得まい。…ど〜致そうか、順番は?」

アーシャは…、あごに手を当て少し思案します。

「ダンツさんは、このまま見張りに就いてもらってもよろし〜ですか…?時間が来たら、…私が引き継ぎます。…明け方は、ぺぺお願いね」

「プイプイ」…、ぺぺはまだ塩こんぶの興奮の余韻が残ってました。

「中番が、イチバンしんどいじゃろ〜に…。わしとて、…修行で一晩中勤めるコトもある。…お主、それでゆいんか?」

冷静に落ち着いて…、自分の考えを述べるアーシャ。

「仰りよ〜、ごもっともですダンツさん…。しかし、…ダンツさんは戦いのご経験はあまりありませんから。…ここは私に任せてもらえませんか、ご安心下さい。三日三晩までなら…、眠らずに戦えます」

ダンツは、アーシャの意見にうなりました…。

「さすがに、…伝説の勇者じゃな。…ではお言葉に甘え、このまま見張りにたたせてもらうとしよ〜」

ホッとするアーシャ…、それはダンツが素直に納得してくれたからです。

 

アーシャ南の大陸に舞う その20

…またしても、モンスター達の襲撃を受ける工作隊。モンスター達の内ワケは、…スケルトン剣士1体、ウェア・ウルフ1体、各色のスライム3体でした。

「さすがにやるわね、これでど〜っ…!!?」

ケルトン剣士と戦うのは…、アーシャ。…アーシャは、跳びあがって斬りつけますが。レイピアを駆使して、…アーシャの体重をかわすスケルトン剣士。ぺぺには、色とりどりのスライム達が一斉に襲いかかります…。

「プイプイ!」…、スライム達は入れ変わり立ち代わり。…ぺぺのおなかめがけ、タックルを試みました。ぺぺは、…ハッキリゆってこ〜ゆうの苦手です。強さに注文はつけません、強敵が一体立ち向かって来る方がやりやすいのでした…。

「グルル…、グルオ〜!!」

…ウェア・ウルフと、立ち合うダンツ。ウェア・ウルフの猛烈なパンチ攻撃を、…何とか棒術でさばいてゆます。

「シュシュッ…!」

ただ攻撃されてるだけの…、スケルトン剣士ではありません。…アーシャを、鋭い連続突きで追い込みました。アーシャは、…その一撃々々を丁寧に盾で防ぎます。

「プイプイ…!!」

も〜…、カンカンに怒るぺぺ。…ジャンプして勢いよく飛び上がると、そのままおしりでスライム3体を。下敷きにしてしまいました、…ぺしゃんこに潰れてしまうスライム達。

「どうじゃ、これなら…!」

ウェア・ウルフのパンチの隙に…、ダンツは棒で突きます。…それが、案外ゆいトコロにヒットし。ダンツ有利の、…形勢に。

「このままじゃ、らちがあかない…。よしっ…、イチかバチか!!」

…盾を投げ捨てるアーシャ、そこに容赦の無いスケルトン剣士の突きが。しかし、…それはアーシャの作戦でした。スケルトン剣士の突きを左脇に挟んだアーシャは、右のひじでみぞおちを打ち…。そのまま突き飛ばします…、大きく体勢を崩すスケルトン剣士。

…「これで決着をつけるわ、とりゃ〜!」

アーシャは、…スケルトン剣士に「マジカル・ヒットを叩き込み。やっつけてしまいます、残るのはウェア・ウルフ1体…。

「自分の置かれてる状況がわかんのか…、お主まさか1体で。…わしら、全員を相手にする気かの〜?」

ウェア・ウルフが周りを見渡すと、…果たしてダンツのゆ〜通り。

「まだ逃げられるじゃろ〜、今なら…。ゆけっ…、ゆってしまえ!!」

…泣き声みたいな悲鳴をあげると、ウェア・ウルフは山道を大慌てで駆けのぼってゆきました。

「"敵を見逃す"、…それは神さまのみ教えですか?」

アーシャの質問に、その場に座り込むダンツ…。

「そんなお節介は…、神さま教えとりゃせんわい。…わしの気まぐれよ、大した意味はない」

剣を、…腰の鞘に収めるアーシャ。

「あのウェア・ウルフは、これから仲間と合流して…。工作隊を…、また襲うかもわからないじゃありませんか」

…ダンツは、丸い頭を一撫でし。

「そ〜かも知れん、…だがその時はその時じゃ。それなら、わしはも〜一度戦う…。その時ど〜するか…、それは神さまがご存知じゃろ〜」

…工作隊は、再び出発します。

「私の考え方とは違う」、…アーシャはつぶやくよ〜に想いました。

アーシャ南の大陸に舞う その19

アーシャ達は、…ダンツを先頭に。…工作隊のペースに合わせ、ゆっくり山道を登ってゆます。

「そろそろ休憩しましょう…、まだ先は長いわ」

工作隊の職人さん達に無理をさせたくないアーシャは、提案しました…。

「そうじゃな、…急いでも始まらん。…ここは、じっくりゆくとしよう」

アーシャ、ぺぺ、ダンツ…、それから三人の職人さん達は。それぞれ、道端に座りやすみを取ります…。

「あれっ、…何の香りだろう?」

…荷物から水筒を取り出し、水を一口含んだアーシャは。とてもゆい香りがするコトに…、気がつきました。ところが、辺りには短い草は生えていても特にそれらし〜モノは見当たりません…。

「あっ、…ダンツさん?」

…ダンツは返事をしません、手を組んで瞑想してゆます。小さな炉にお香を焚いている…、ダンツ。

「プイプイ…」

ぺぺは、…「ダンツさんは修行中だから話しかけてはゆけませんよ」と。…アーシャに、注意したのでした。

「そ〜ね…、ごめんなさい。うっかりしてたわ…」

しばらくしてお香が燃え尽きると、…ダンツは立ちあがります。

…「そろそろゆこう、も〜充分やすんだじゃろ」

アーシャの鼻の奥に…、先程のお香の香りが残ってゆました。

「ダンツさん、さっきのお香は何の香りですか…?」

変わらない速度で歩く、…ダンツ。

…「あれは、スヌーヤ杉のお香じゃよ。わしは瞑想する時…、必ずあれを焚く。集中力が、高まるんじゃ…」

アーシャは、…「すごくゆい香りでしたよ」と伝えたかったのですが。

…「またダンツさんがおヘソを曲げたら」と思い、黙ってしまったのです。山道を登ってゆくと…、行く手に背の高い木々が見えて来ました。歩きながら、アーシャはダンツに質問します…。

「ダンツさん、…何故聖なる山アルクロドは。…神さまに守られてゆるハズなのに、ワレラ星人に攻撃を許してしまったんでしょうね?」

袖の中に手を通し…、両腕を組むダンツ。

「それは、現在ダオカーナ寺院で調査中じゃ…。そ〜なんじゃよ、…アルクロド山は神さまのお姿そのモノ。…神さまが、ワレラ星人に負けるコトなど。絶対に…、ありえんのじゃ」

ホレロのお話を、思い出すアーシャ…。

「ところが稲妻が落ち、…神さまの像は破壊されてしまった」

…ダンツは、アーシャにうなずきました。

「あの稲妻は…、ワレラ星人の宇宙船から発射されたビーム光線だったらしい。わしとしては、こんなコトは考えたくはないが…。わしら僧の中に裏切り者がいて、…誰かが手引きしたのかも知れんな。…ムッ、何の音じゃろう?」

ゴロゴロと地響きのよ〜な音が…、少し離れたトコロから鳴っています。

「いけない、あれがこちらに転がって来たら…!!」

とっさに、…駆け出すアーシャ。…その先には、巨大な岩を転がす2体のゴーレムがゆました。

「ダメ…、間に合わない。ぺぺ、お願い…!」

アーシャは、…ぴゅ〜いと口笛を吹きます。

…巨大な岩は下り坂に差しかかり、遂に工作隊目がけて転がり始めました。

「プイプイ!!」…、ぺぺは雄叫びをあげると。こちらに転がって来る岩に向かって、体当たりを喰らわせます…。

「プイプイ!」、…両手でげん骨を作り。…振り下ろすぺぺ、ぐわぁ〜んと大きな音がして。巨大な岩は…、粉々に砕けました。

「待ちなさい、逃さないわよ…!!」

逃げ出した、…2体のゴーレムにあっとゆ〜間に追いつくアーシャ。…そのウチの1体は、遅れて転びます。

「あなたの相手はあとでしてあげる…、待ってなさい!」

もはや逃げられないと悟ったゴーレムは、地面を叩いてアーシャを攻撃しよ〜とします…。しかしアーシャは、…ジャンプしてかわすとそのまま「下突き攻撃」をお見舞いしました。

「グワっ!!」…、ゴーレムはそのまま地面に倒れました。

転んでゆたゴーレムも立ちあがり、アーシャに向かってパンチを繰り出します…。

「そんなのわかりやすいの、…通用しないわそれっ!」

…アーシャは盾でパンチを受けとめると、懐に潜り込んで一本背負いを決めました。そして再びジャンプすると…、も〜一度「下突き攻撃」でやっつけたのです。

 

 

 

アーシャ南の大陸に舞う その18

工作隊を組織する、職人さん達と資材が手配される間…。数日が流れ…、アーシャ達は遂にある日の早朝出発します。

…「では参ろう、アーシャ殿。わしが、…先頭に立つ」

パーティの順番は、ダンツ、アーシャ、ぺぺ…。それから最後尾に…、三人一組の工作隊でした。

…「よしゆくぞ、そ〜れ!!」

工作隊は、…資材車を。

前の一人が引き、後ろに二人着いて押し始めます…。

「もしよければ…、ぺぺにお願いしてはど〜ですか?…ゆいわよね、ぺぺ」

「いや、…それはまずいじゃろ〜」

アーシャは、何の気なく工作隊の職人さん達が…。気の毒だったから提案したのですが…、ダンツはすかさず否定しました。

…「モンスター達は、いつ襲ってくるかわからん。その時に、…ぺぺ殿の手がふさがっていては対処出来ん」

正直にゆえば、「またダンツさんはかんしゃく玉を爆発させたのかな…?」

アーシャはそ〜思ったのです…、しかしお話を聞けば全くもっともでした。…アーシャ達は、工作隊が車を押すペースに合わせ。ゆっくり山道を登ってゆきます、職人さん達は…。資材を運ぶのは慣れてゆても…、山道を登った経験は。…あまりありませんから、ど〜しても時間がかかるのです。

「アーシャ殿、…モンスターじゃぞ!」

ダンツが声をあげました、アーシャ達のゆく手をさえぎるよ〜に…。ゴーストが3体…、スライムが1体現れます。

…「ぺぺ、ぺぺは工作隊のみなさんを守って。ダンツさん、…ゆきますよ!!」

ダンツは棒術の使い手です、長い棒をくるくる回すと…。

「合点じゃ!」…、アーシャのあとに続きました。…モンスター達も、アーシャ達の動きに合わせて応戦します。ゴースト2体はアーシャへ残り1体はぺぺに、…スライムはダンツに向かいました。

「空中だからって、安全じゃないのよ…!!」

ひらひらと空を舞うゴーストに…、アーシャはすかさず「上突き攻撃」で打ち落とします。…ゴーストは何とかかわそうと、回避運動を取りますが。アーシャの動きの方が、…ずっと鋭いのでした。

「プイプイ…」

身構えるぺぺに…、ゴーストは炎を身にまとって突撃します。…しかし、ぺぺろぐぅは熱いモノが大好き。体に当たって、…ぼよよんと跳ね返ったトコロを。ぺぺは、鋭い爪で一かきにやっつけました…。

「わしだって…、戦えるトコロを見せちゃる!!」

…ダンツは、スライムを必死に棒で引っ叩いたり突いたりします。

「これで終わりよ、…覚悟なさい!」

跳び上がったアーシャは、空を舞うゴーストを空中で斬ってやっつけました…。

アーシャが振り返ると…、ダンツも引っくり返りながら何とかスライムをやっつけたよ〜です。…よく見ると、ダンツは足に傷を負ってゆます。しかし、…アーシャが手を貸そ〜とすると。

「女性は、わしに触れるんじゃない…!!ちょっと待っとれ…、わしにはな」

…荷物の中から、巻物を取り出し。お経を唱えながら傷口に手をかざす、…ダンツ。すると、傷口は、たちまちにふさがり癒えてしまったのでした…。

「軽い傷なら…、こ〜してわしが治せる。…余計な気遣いは無用、お主は自分の戦いに専念するがゆい」

アーシャの心には、…まだダンツへのわだかまりが残っています。しかしあまりにも熱心なその態度に、どこかしら「尊敬の念」も抱きつつあったのでした…。

 

アーシャ南の大陸に舞う その17

顔を益々真っ赤にして怒る…、ダンツ。

「何を仰られるのですか、僧正さま…!!ゆ〜にコト欠いて、…まさかこのわしに女性と聖なる山アルクロドに登れとは。…ダオカーナに入門した時の、わしの誓言をお忘れですか!?」

アーシャだって負けてはいません…、釣り込まれてついカッとなってしまいます。

「僧正さま、私だってこんな偏屈な方はごめんです…!!"女性だから聖域には入ってはいけない"、…そんな考え時代錯誤だと思います」

…ネルムは、扇子を取り出し鷹揚にあおぎ始めました。

「ま、ま…、ゆいから。とにかく、お二人共お座んなさい…」

角の立たないネルムのゆい方に、…二人は勢いを削がれてつい従ってしまいます。

…「ゆいか、これはわしの考えだが。現在大切なのは…、一にも二にもアルクロド山頂の。神さまの像を修復するコトであろう、違うかな…?」

ダンツは、…渋々ですがうなずきました。

…「全く仰せの通りでございましょう、神さまの像さえ元に戻れば。その威光は地の彼方まで満ち…、僧達の悪夢もやむのですから。」

扇子を、ひらひらさせるネルム…。

「だから私は、…職人さん達と資材を積んだ車から成る。…工作隊を出発させたいのである、では何がその問題になるかなダンツよ?」

ダンツにはモチロン面白くはありませんが…、ネルムのゆい分は筋が通ってゆます。

「それは、当然聖なる山アルクロドに溢れる…。モンスター達の脅威です、…工作隊を出発させる。…そのお考えはまことに結構ですが、とても生きては辿り着けますまい」

ネルムは…、ニンマリと笑いました。

「で、あろ〜…?だからこその、…アーシャさまとぺぺさまなのだよ。…お二方に協力を要請し、工作隊を防衛していただければ。工作隊はアルクロド山頂に到着できる…、それとも"何か"の?お主ら僧達に、工作隊を守り切れるとでもゆ〜気かの…?」

悔し涙をこらえるダンツ、…しかし出来ないモノは出来ないのです。

…「残念ですが、不可能です。わしらにも武術の心得はありますが…、とても力及びませぬ」

ネルムは、扇子をピシャリと閉じました…。

「ダンツ、…お主にももはや依存はあるまいな。…アーシャさまぺぺさま、私から改めてお願い申す。このダンツと工作隊を…、アルクロド山頂までお届けしていただきたいのです」

慇懃に頭を下げるネルムに、アーシャは少し困ってしまいます…。

「そんな、…私こそカッとなってしまって。申し訳ありませんでした…。当然ですが、…お引き受け致します。…そ〜だ、僧正さま私からも一つお願いがあるのです」

ネルムは…、扇子を懐にしまいます。

「ありがとうございます、このダオカーナには…。モンスター達と渡り合って、…自分自身の身を守れるのは。…ダンツ一人だけなのです、そしてこのダオカーナもいつ闇の勢力に攻撃を受けるかわかりませんから。…、これ以上の手は割くのは難しいのですよ。ところで、アーシャさまの頼み事とあれば何なりと…」

アーシャは膝を揃えて正座し、…両手を着いて頭を下げました。

…「私が所持してゆる、伝説の装備三点セットを。このダオカーナ寺院に奉納していただきたいのです…、やはり神さまのみ元にお返ししよ〜と想うので」

ネルムは、嬉しそ〜に笑顔になります…。

「それはそれは、…素晴らしいお心がけです。…伝説の装備は、元々このダオカーナ寺院でお預かりしていたモノ。そ〜でしたか…、アーシャさまの手元でワレラ星人を退けたなら。伝説の装備にとっても、本望だったでしょう…」

ホッとするアーシャ、…伝説の装備をいつまでも。…自分のトコロに引き留めておくのは、不遜な気がしてゆたのでした。

「話は決まりましたな…、ではアーシャさまとぺぺさまは。出発の日まで、私の部屋をお使い下さい…。

ダンツも、…腹に据えたのか面をあげます。

…「それでは、僧正さまはどちらで休まれるのですか?」

既に…、立ちあがってゆるネルム。

「そりゃあ、僧房しかなかろう…。ずい分久し振りであるが、…キレイにしてあるかのう?」

アーシャ南の大陸に舞う その16

…アーシャがぺぺと控え室で待っていると、扉が開き。小間使いの僧が、…お辞儀をして入って来ました。「僧正さまのご準備が整ったのかな?」、と想うアーシャ…。

「お茶のおかわりは…、いかがですか?」

…アーシャは、手をふりふり遠慮をします。

「大丈夫です、…それより僧正さまはいかがされました?」

小間使いの僧は、丁寧な口調で受け応えしました…。

「も〜少々お待ち下さい…、じきご修行も終わりますから」

…それだけ伝えると、頭を下げて退出します。

「せっかくだから、…ゆっくりさせてもらおうかぺぺ?これを逃したら、次はいつになるかわからないし…」

アーシャがうとうとし始めた頃…、再び控え室の扉が開きました。

…「タイヘンお待たせ致しました、僧正さまも是非早くお会いしたいとの仰せです」

小間使いの僧に案内され、…渡り廊下を通って本堂に向かうアーシャとぺぺ。本堂の神さまの像の前は、アーシャとぺぺをいまかいまかと待つ僧達で溢れ返ってゆます…。

「お待ちしておりましたアーシャさま…、私が僧正のネルムです。…ま、ま、こちらにお座り下さい」

…ネルムは、藍色の鮮やかな僧衣を羽織ってゆました。アーシャとぺぺは、…促されるまま座ぶとんの上に腰を下ろします。

「不肖この私、僧正などとよばれておりますが…。まぁ大した者ではありません…、ごくつろぎ下さいアーシャさま。…今、お茶を運ばせますから」

アーシャが「せっかくですが」と口にしかけると、…ネルムはそれを手で制し。

「ご遠慮召されるなアーシャさま、伝説の勇者であらせられる以上…。本来なら盛大におもてなしたいのですが…、あいにくとここはお寺ですからな。…それは、大祭の時に」

すぐアーシャとぺぺの前に、…それぞれお茶が運ばれて来ました。

「その代わりとゆってはなんですが、ウチのお茶はちょっとこの辺では味わえませんぞ…。何しろ一大産地である…、ヌーテノア地方から直に取り寄せてますから」

…ほっこりするアーシャ、それはお茶が美味しかったからだけではなく。

ネルムが、…気性の難しい人では無かったからでもあります。

「ど〜ですかアーシャさま、南の大陸は…。まぁ中央大陸とは何もかも違いますから…、勝手の違いに戸惑われてなどおりませんか?」

アーシャはお茶を飲み干し、お茶碗を置きました…。

「とんでもありません、…南の大陸は食べ物や飲み物が美味しくて。…どれも、初めて味わうとは想えません」

ネルムは…、ハッハッハと快活に笑います。

「水がキレイなのです、この大陸は…。そして量が豊富でもある、…人々の暮らし振りは慎ましいモノですが。…とはゆえ、それが何よりでしょう?それこそ…、まさしく神さまの恩寵ですからな」

「そろそろ」、と想い本題を切り出すアーシャ…。

「ところでネルムさま、…この聖なる山アルクロドに兆す闇の気配について」

…その時です、顔を怒りで真っ赤に染めた僧が。一人…、本堂に怒鳴り込んで来ました。

「僧正さま、わしは断じて認めませんぞ…!!伝説の勇者などと呼ばれておっても、…所詮は女性に過ぎませぬ。…我らが聖なる山アルクロドに、決して入れてはなりますまい!」

アーシャは…、あまりに突然だったのでぽかんと呆気に取られてしまいます。

「ムムッ、よくよく見れば…。お主こそ、…伝説の勇者アーシャとやらではないか!!…ならば、手間が省けるとゆ〜モノだ。聖なる山アルクロドに…、女性が登るなど言語道断!さぁさ、早急に荷物をまとめられよ…!!」

ネルムは、…怒れる僧に顔色一つ変えません。

…「ちょうどゆい、ダンツお主にも話さなければな。座りなさい…、お主にアーシャさまとぺぺさまのご案内を引き受けて欲しいのだ」

「えっそれはちょっと!」と、アーシャは想いました…。

 

 

アーシャ南の大陸に舞う その15

ホレロ、アーシャ、ぺぺの三人は、遂に聖なる山アルクロドの玄関口…。

ダオカーナ寺院の山門まで…、やって来ました。

…「やっと、ダオカーナ寺院まで辿り着いた。アーシャ、ぺぺ、…私は商売があるからここで失礼するよ。健闘を祈ってる、それじゃあね…」

ホレロはらくだを連れて…、僧房へと向かいます。

…「ホレロさんもお元気で、ここまでありがと〜ございました!!」

「プイプイ!」、…アーシャとぺぺはホレロを。

手を振って送りました、そして山門を潜ります…。山門は…、木を組んで作られていてとても巨大でした。

…「おい、あれはきっと」

「そ〜だ、…そ〜に違いない」

境内の中の参道を歩いてゆくと、多くの僧や巡礼者達とすれ違います…。ところが…、僧達の様子が「何か」変なのでした。…アーシャとぺぺを眺めては、ひそひそ小声で話し合ってゆます。アーシャは、…「ひょっとすると闇の気配?」と思いこ〜しました。

「私は、エスタハーンのアーシャ…。みなさん…、"何か"ご用ですか!!?」

…「エスタハーンのアーシャ」、そ〜聞くと僧達は一斉に歓声をあげます。

「みんな出て来い、…こちらのお方が伝説の勇者アーシャさまだぞ!これでこれで、ワレラ星人の闇の誘惑に対抗出来る…!!」

あちらの建物からもこちらの建物からも…、大勢の僧達が溢れるよ〜に集まって来て。

…アーシャとぺぺはすっかり取り囲まれてしまいました、中には感激のあまり泣き出す者もゆます。

「ご無礼、…タイヘン申し訳なくつかまつりました。我ら女性に慣れておらぬ故、どのよ〜にお声がけしたモノか迷っていたのでござる…。重ねてお詫び申し上げます…、みっともない真似を」

…それを聞くと、アーシャも疑いが解けてにっこりしました。

「私は気にしてませんから、…みなさんもお気になさらぬよ〜。それより、私がやって来た理由をご存知ならば…。僧正さまの元へと…、取り次いでもらえませんか?」

…別な僧が進みでます。

「私が、…ご案内致しましょう。我らもモチロンですが、僧正さまはワレラ星人の攻撃に、格別心を悩ましておいでです…。アーシャさまがいらしたと聞けば…、何よりお喜びでしょうから。…さ、みんな勤行にもどるんだ。あとは、…私が引き受けた!」

本殿へと案内される、アーシャとぺぺ…。本殿もやはり木を組んで作ってあり…、これもやはり立派でした。

…「こちらが、我がダオカーナの本殿なのですが。僧正さまは、…ただ今修行の最中でして。控室へご案内します、そちらで、しばらくお待ち下さい…」

本殿は入り口の扉が開いており…、アーシャが少しのぞくと。…中では多くの僧達が、神さまの像の前で座禅を組んでゆます。神さまの像も、…それはそれは立派で。本体は大理石で出来ており、黄金でふち取ってありました…。僧達はみな赤みがかった茶色の僧衣を着ていますが…、神さまの像の前に立ってお経を読み上げてる僧だけは。…鮮やかな藍色です、あの方が僧正さまでしょうか?大きな本殿の脇にある、…よく整理の行き届いた。こ綺麗な小屋に案内される、アーシャとぺぺ…。アーシャとぺぺが荷物を降ろして…、足を伸ばしてゆると。…すぐに、お茶が運ばれて来ます。

「あっ、…お気遣いなく。でも、ありがと〜ございます…」

小間使いの僧が退出すると…、アーシャはお茶を一口飲んでぺぺに告げました。

…「ねぇぺぺ、私この緑色のお茶。気に入っちゃった、…初めての時は"渋い"と想ったケド。口の中がとてもスッキリする、南の大陸のみなさんってグルメよね…?」

「プイプイ」…、荷物の中からサツマイモを取り出したぺぺは。

…そのまま、かぶりつきます。