アーシャ南の大陸に舞う その26

山頂まで、…も〜少しのトコまで来てゆるアーシャ達。…空気も薄くなり、背の高い木ももはや見当たりません。ゴツゴツした岩場に…、短い草が点在しています。フと下を見るアーシャ、すると何と…。遥か彼方に小さくなった、…ダオカーナ寺院から出火し不吉な影が舞っていました。

…「ダンツさん、早く戻りましょう。でないと…、みんながみんなが!!」

アーシャは、動揺を隠せません…。

「恐らく、…モンスター達の襲撃じゃろうな。…持ちこたえられる、とゆいが」

アーシャの声に…、振り返って下を眺めるダンツ。

「何で、そんなに落ち着いてるんですか…。ゆくわよ、…ぺぺ!」

…口笛を吹こうと口に指を当てるアーシャ、とその腕を抑えるダンツ。

「情に流されてはゆかん…、アーシャ殿!!ダオカーナにも、戦力はある…。わしら僧達は、…みんな戦えるんじゃ!…それよりも、現在のわしらは。一刻も早く…、ザハスとワレラ星人を倒し。神さまの像を修復するコトじゃ、それさえ済めば全て終わるんじゃから…」

ダンツは、…敢えて厳しい口調でアーシャを戒めます。

…「でも、でも私は」

目に…、涙を浮かべるアーシャ。

「悔しいのは、わしも一緒じゃよ…。どちらにせよ、…ここからでは間に合わん」

…アーシャは、わっと大泣きしてしまいました。

「プイプイ」…、アーシャに「いこいこい〜こ」するぺぺ。

ダンツは工作隊と相談し、しばらくこの場でやすむコトにします…。アーシャの気分が、…戻るまで先へは進めません。

…それから、しばらくして。

「みなさん…、タイヘンごめんなさい。私、も〜大丈夫です…。却って、…時間をかけてしまいました」

…ダンツは、岩場から立ち上がりました。

「責めても…、仕方がないんじゃ。何、これから取り戻してもらうからの…」

ほのかに笑う、…ダンツ。

…アーシャの気持ちが落ち着くと、再び出発です。しかし…、周りは岩が多く。工作隊の資材車は、前に進めません…。

「モンスター達を警戒せねばいかんとゆっても、…これはさすがにぺぺ殿の力を借りなくてはな。…ぺぺ殿、お願い出来るか?」

「プイプイ」…、ぺぺにはお安い御用でした。両手で、ひょいと資材車を持ち上げると…。先まで進んで、…降ろします。

…「さすがの大力、アーシャ殿の旅を影で支えるだけはある」

ぺぺのパワーに…、ダンツもうなりました。そんなコトを繰り返して、少しずつ進みます…。

そして、…いよいよ山頂でした。…山頂には、2/3が崩れた神さまの像の上に一人の男が座っています。

「ザハス…、お主何故神さまを裏切ったんじゃ!!?」

男の顔を見るなり、叫ぶダンツ…。ど〜やら、…この黒い法衣に身を包んだ男こそ。…ザハスのよ〜でした。

「あなたが…、ザハスなのね?こんなコト今すぐ止めて、まだ間に合うわ…!」

アーシャの叫びに、…ニヤリと笑うザハス。

…「お前が、噂に名高い。伝説の勇者アーシャか…、私はお前などに用はない。私の目的は、ダオカーナ寺院と神などとゆ〜…。下らない存在への崇拝を止めさせ、…そこのダンツと名乗る虫けらを殺すコトだからだ」

…ザハスの言葉に、ダンツは驚いたよ〜です。

「わしを殺すじゃと…、お主の目的とわしに。何の関係が、あるんじゃ…!!?」

ザハスは、…ダンツの言葉に怒りで顔を歪めました。

…「何だと、白を切るつもりかダンツ?私は…、お前のそ〜ゆうトコロが気に食わん。だから、ネルムに気に入られるのだろう…」

神さまの像から、…飛び降りるザハス。

…「まぁゆい、力の差を思い知らせてやろ〜。ワレラ星人さまから賜った…、この魔人の姿でな!」

山頂全体が、振動し始めます…。

「みんな、…退がって!!…ザハスの相手は、私がするわ!ぺぺは…、みんなを守ってあげて!!!」

アーシャは、ぴゅ〜い♪と口笛を吹きました…。

 

アーシャ南の大陸に舞う その25

果たして…、ダンツの予想通りでした。意識の無いアーシャと工作隊を狙って、モンスター達は次々と襲って来ます…。

「プイプイ」

現在戦っているモンスターは、…ガーゴイル2体。…みなさんは既にご存知の通り、ガーゴイルは遠くから火の玉を投げて来ました。ですから…、ぺぺは大きな体で文字通り盾になってゆます。

「わしはお経を唱え、"魔法の壁"を創る…。そ〜したら、…ぺぺ殿はガーゴイルに突撃してくだされ!!」

…とりだしたお経の、文言を唱えるダンツ。すると…、横にされてゆるアーシャと工作隊の周りが。丸く赤色に、覆われました…。

「プイプイ!」、…それを確認するとぺぺは。

…全力疾走で(決して速くはありません)、ガーゴイル達に突っ込み大きな爪二かきでやっつけます。

「あれ…、私ど〜したの?そ〜だ、ダンツさんが危ないと想ってそれから…?」

空が白み始めた頃、…遂にアーシャは意識を取り戻しました。

…「プイプイ、プイプイ♪」

大喜びのぺぺ…、ぺぺろぐぅは涙を流しませんが。もし人間だったら、泣き崩れてゆたでしょう…。

「ど〜したの、…ぺぺったらそんなに喜んで」

…工作隊の職人さん三人も、ホッと一安心したよ〜です。

「お主はな…、わしをかばったんじゃアーシャ殿。堕落僧に、毒矢で狙われておったわしをの…」

ダンツは、…下を向いたままアーシャにちかづきました。

…「あぁ、あれはその〜。ところで…、ダンツさんはご無事ですか?」

「何か」に、気づくダンツ…。

「わしの身は、…何でもないわい。…そんなコトより、アーシャ殿はも〜少しやすまれた方がゆいじゃろ〜。あまり時間は取れんが…、少なく共今日のお昼頃まではな」

丁寧に、頭を下げるアーシャ…。

「ご迷惑をおかけして、…申し訳ありませんが。…お言葉に甘えて、今しばらくはやすませていただこうと存じます」

とはゆっても…、アーシャは念の為「カリフの剣」と「魔法の盾」は近くに引き寄せます。

それからも、何度となくモンスター達との戦いがありましたが…。ぺぺとダンツは、…何とかアーシャを戦いに参加させずに済ませます。…夜も明けて朝になり、ダンツはぺぺに見張り番を任せて朝ごはんを摂りました。

「わしはな…、アーシャ殿。この南の大陸の、辺境の村ブロンテスに育ったんじゃ…」

お椀にほしいいを盛り、…一口二口すこしだけ水筒からお水をかけるダンツ。

…「ブロンテスの者達はみな貧しい、食べるモノに事欠くコトもある。わしのお家も…、例外では無かった」

アーシャは、うつむきます…。

「しかし子供は大勢ゆる、…わしは小さな頃からずっと働き通しじゃ」

…こんな話を聞くと、アーシャは申し訳なくなりました。アーシャのお家は…、エスタハーン村でもどちらかといえば裕福だったからです。

「わしは、ダオカーナ寺院にお勤め申してから…。精進を苦しいと想ったコトなど一度もないよ、…幼い頃の暮らしの方がずっと苦しかった」

…ダンツもまた、塩こんぶをうまそ〜に噛みました。

「わしは…、だから必ず立派な僧になって。生まれ故郷に錦を飾る、そ〜心に決めておったんじゃ…」

ゆいずらそ〜に、…しばらく黙るダンツ。

…「それが、あんな無茶な誓言になってしもうた。アーシャ殿…、すまなかった」

ダンツは、それだけ語るとアーシャに片手を差し出します…。

 

ダンツの謝罪のテーマ…

Georgia on my mind」 Ray Charles

https://youtu.be/dcODKvvVSOg

 

にっこり笑って、…その手を握り返すアーシャでした。

 

 

アーシャ南の大陸に舞う その24

聖なる山アルクロドの、…かなり高いトコロまで登って来たアーシャ達。…しかし、アーシャには一つ気がかりになるコトがありました。

それは…、「今日の朝からモンスターによる襲撃が無い」です。

アーシャの実感からゆって、まだそれ程のモンスター達とは戦っていません…。もしザハスが率いる、…ワレラ星人の戦力がこの程度であるならば。…ダオカーナ寺院の僧達は、アーシャの力を借りるまでもなく。自力で解決出来るハズ…、それが何故?事態を怪しんだアーシャは、ダンツに相談してみよ〜と想いました…。

「ダンツさん、…ちょっとお話ゆいですか?」

…「一体、何の用じゃい?」

振り返るダンツの背後に…、キラリと光る「何か」がアーシャの目に入ります。「やじりだ」そ〜直感したアーシャは、とっさにダンツにタックルを浴びせました…。

「危ない、…ダンツさん!!」

…ダンツがよろめくと、ひょうっと矢が放たれ。アーシャの左脇ばらに…、突き刺さります。

「ちっアーシャめ、余計な真似を…!」

舌打ちしながら、…堕落僧が茂みから飛び出して来て。

…そのまま、走って逃げ去りました。

「お主…、待たんかい!!そ、そんなコトよりも、大丈夫かアーシャ殿…」

「プイプイ、…プイプイ!」

…倒れたアーシャのかたわらで、ぺぺがおろおろしています。ど〜やらアーシャは…、意識を失ってゆるよ〜でした。

「安心せい、ぺぺ殿…。わしには、…わずかだが医術の心得もあるし。…傷を癒すお経もある、ムッこれは」

傷口を拡げないよ〜に…、慎重にアーシャから矢を引き抜くダンツ。幸い堕落僧ですから、それ程剛い弓ではありません…。矢そのものの傷は浅いのですが、…この臭いは。

…「これはにごりへびの毒、猛毒じゃ」

このままでは…、アーシャは数時間で命を落とすでしょう。それを防ぐには、お経の前に何よりも迅速に毒を吸い出さなくてはなりません…。

「わしは、…ダオカーナ寺院に入門する時。…一生涯、女性には触れんと神さまに誓った。え〜い…、わしは何を迷っとるんじゃ!!アーシャ殿は、わしをかばったんじゃぞ…!」

アーシャの傷口の周りの衣服を破り捨てると、…口を当てるダンツ。…そのまま、何度も毒を吸い出しては吐き吸い出しては吐きを繰り返します。

「プイプイ」…、「まだじゃ、ぺぺ殿。血を浄化するお経があったハズ、確かここに…」

ダンツは巻き物を取り出すと、…開いてお経を唱え始めました。

…「摩訶不思議なる神さまわしらにそのみ力を

お示し下さい…、南無阿弥」

アーシャの左脇ばらに、手をかざすダンツ…。

「これで、…少しずつじゃが血液はキレイになる。…あとは、傷口をふさぐお経で」

ダンツは…、アーシャの毒矢による傷口の処置を終えます。荷物から取り出したござを敷いて、そこにアーシャを寝かせるダンツ…。

「アーシャ殿は、…も〜大丈夫じゃみんな。…しかし、しばらくは絶対安静。じゃから…、今日はここで野営とする…。工作隊は、…その準備にかかっとくれ。…ぺぺ殿は、わしと二人で不寝番じゃ!!ザハスは…、必ずモンスター達を差し向けて来る。アーシャ殿が戦えない現在は、ヤツらにとってまたとない機会じゃろ〜からな…。わしらは、…何としてもここを死守せんとゆかん!」

…「プイプイ!!!」

怒り心頭に達するぺぺ…、それはザハス達のやり方があまりに卑怯だったからです。

 

アーシャ南の大陸に舞う その23

まだ曇り空ですが、アーシャの苦手な雨は何とか止んでくれました…。アーシャ達がぬかるんだ山道を登ってゆくと…、キレイな泉がコンコンと湧いてゆます。…これを見たアーシャは、も〜大興奮!!

「みなさん、…申し訳ありませんが。ここで、私に水浴びをさせていただけませんか…?」

突然の申し出に…、ダンツはびっくりしてアーシャを振り向きました。

…「しょ〜がないのぅ、これだから女性は。まぁゆいわい、…わしらはこの先で待っとるからの。ゆこう、ぺぺ殿…」

「プイプイ」…、ダンツ、ぺぺ、それに工作隊の職人さん達三人が見えなくなると。…アーシャは、荷物から手桶とタオルそれに石けんを二つ取り出し。着ている服と下着を脱ぎます、…そして手桶に水を汲んで。ザブン、と一浴びしました…。

「くぅ〜…、最っ高!」

…美味しいモノを食べるのもおシャレも、アーシャはモチロン好きでしたが。何よりの大好物とゆえば、…それは体をキレイにするコトだったのです。タオルを濡らし石けんを泡立て、体を優しく洗い始めます…。石けんは…、アーシャの生まれ故郷エスタフ高原の特産品で。…お肌がもちもちし、タオルで拭いたあとも乾燥しません。

「これこれ、…これがたまらないのよ!!」

アーシャは、も〜一つのシャンプー石けんで髪もワシャワシャと洗いました…。全身と髪を…、たっぷりの水ですすいだアーシャは。…気分爽快、また冒険への意欲がむくむく湧いて来ます。

「冒険して、…体をスッキリさせる。こんなシアワセは、人生で他にないわねぇ〜…♪」

荷物から…、バス・タオルを取り出して。…全身の水気を、丁寧に拭い取りました。本当は、…アーシャはお洗濯もしたいのですが。さすがに、そこまでみんなを待たせるワケにはいきませんから…。髪の毛を後ろでフワッと束ねると…、荷物を背負ってみんなに追いつきます。

…またしばらく山道をゆくと、アーシャの視界に光り輝く鳩が入りました。

「ダンツさん、…素敵ですね。南の大陸には、あんなにロマンチックな鳥が飛んでるんですか…」

ダンツは…、アーシャの言葉にハッとします。

…「あれは、わしらダオカーナの者達が連絡に使う。"魔法の鳩"じゃ、…恐らく僧正さまからじゃろう。ダオカーナ寺院に、何かあったのかも知れん…」

空中で何度か旋回したのち…、「魔法の鳩」は降り立ってダンツの腕に留まりました。…ダンツは、「魔法の鳩」相手に「ムムッ」とか「おぅ」などとやってゆました。

「アーシャ殿、…た、タイヘンなコトになった!ザハス殿が、あのザハス殿が…」

ダンツの肩をユサユサし…、気をつけるアーシャ。

…「ダンツさん、しっかりして下さい。ど〜なさったんです、…みなさんは無事ですか?」

アーシャの言葉に、正気を取り戻すダンツ…。

「次の僧正に選出されると噂だったのに…、すまん取り乱してしまったわい。…みんなは無事じゃ、しかし恐ろしい真実が明らかになった。"何故ワレラ星人は神さまの像を破壊出来たのか?"、…やはりわしらの仲間に裏切り者がおった。真犯人が、わかったんじゃ…!!」

みんなに…、緊張が走ります。

…「それは、一体何者なんですか?」

口を切る、…アーシャ。

「最も最初に、闇に堕落した僧はザハスとゆ〜者だったんじゃ…。ヤツは…、ダオカーナ寺院の書庫を預かっておった。…そこを丹念に調べた結果、わしらにとって禁忌とされている。禁断の巻き物、…"ワレラ星人にコンタクトする呪文"の封が破られておったそうじゃ。わかるか、アーシャ殿…。これは…、これは」

…ダンツは、のどをゴクリと鳴らしました。

「ザハスは、…ワレラ星人の闇の誘惑に屈したのではなく。な、何と、自らの意志でワレラ星人を喚んだのじゃから…!」

この事実は…、全員にとって少なからずのショックです。…何故なら、これまでは誰もが。「悪いのはワレラ星人であって、…人間ではない」そ〜考えてゆたのですから。

「私は、そのザハスと戦います…。それでゆいですね…、ダンツさん?」

…アーシャは、静かに決意と覚悟を定めました。

 

 

 

 

 

アーシャ南の大陸に舞う その22

朝になり目を覚まして、ぺぺの様子を見に山小屋の外に外に出るアーシャ…。すると外は雨です…、じっとりとしたイヤな雨。

…「大丈夫ぺぺ、何もなかった?」

「プイプイ」、…ぺぺは首を縦に振りました。

「ぺぺ、あとも〜少しお願いね…。私…、朝ごはん食べちゃうから」

…みんなで、順番に朝ごはんを食べ出発の準備を整えます。アーシャはレイン・コート、…ダンツと工作隊の職人さん達は笠とみのそれにそのままのぺぺ。

「お足元は悪いですが、それじゃ出発しましょうか…」

ダンツを先頭に…、職人さん達は車を引いて押し出発します。

…山道を登り続け、やがてお昼の少し前になりますが雨は降り止みません。

「ぺぺ、…ねぇ」

後ろを振り返る、アーシャ…。

「プイプイ?」…、「ううん、何でもないの」

…ダンツは、ひたすら前を見詰めて歩き続けました。そ〜なのです、…アーシャは雨が苦手なのです。アーシャが育ったエスタフ高原は、一年中カラッとしてゆて…。時折り降る雨も…、ほとんどは一時でした。

…「モンスター達が、襲ってくれば」

アーシャは、…そんなコトを考えています。モンスター達との戦いになれば、自然に集中出来る…。集中してしまえば…、この雨も気にならない。…アーシャは、相手が誰であれ。戦って「負ける」、…そ〜は思いません。冒険の旅に出発する以前の修行時代、師匠であるセーブ仙人との立ち合いで…。当然…、アーシャは毎日のよ〜に負かされました。…でも、アーシャは一度だって「負ける」とは思わなかったのでした。

 

今日の空模様のテーマ…

ペルソナ5より〜星と僕らと-Piano Version〜」 Lyn

https://youtu.be/usY03llq-J4

 

「プイプイ」、…アーシャに元気が無いのを察するぺぺ。工作隊は、どろに足を取られながら車を進めるのに必死です…。思えば、ダーナ川での冒険の時もそ〜でした。水の神殿の辺りは…、よく雨が降る。…あの時は、よくぺぺに弱音を吐きました。でも現在のアーシャは、…ダンツや工作隊を守らなければならない立場です。

「伝説の勇者である自分が弱音を吐けば、それは即座に士気に関わる…」

不意に…、メリクルを想うアーシャ。…実は、MWの天候は。天空の城の民が、…古くからのしきたりにのっとり厳格に決定してゆるのです。太陽や月を引く、天馬の馬車…。雨雲は…、海藻の一種であるカマーフを。…天空の城の地下(雲の中です)の工房で、職人さん達が編んでゆるのでした。アーシャは、…空を仰ぎます。

「この雨は、メリクル達が降らしてくれている…」

そ〜は想っても…、憂鬱は晴れません。…それでも、しばらくの間メリクルの言葉や姿が。浮かんでは消え、…ほんの一時気を紛らわせたのは事実だったのでした。

「アーシャ殿、安心せい…。この雨はじき止むわい…、雲ゆきを見ればわかる」

…アーシャは、恥ずかしくなりました。「ダンツさんは何も気づいてはいない」、…そ〜思ってゆたからです。

「ご心配をおかけして申し訳ありません、私雨が苦手で…」

振り返らないダンツは…、背中越しにアーシャに語りかけました。

…「苦手なモノぐらい、誰にだってあるわい。わしゃクモが苦手じゃ、…どんなにちっこくてもな」

アーシャの気持ちは、ほんのわずか和らいだのです…。

アーシャ南の大陸に舞う その21

「日が暮れる前に…、山小屋に辿り着けて何よりでした」

工作隊を、振り返るアーシャ…。

「見たトコ、…どこも壊されてはおらんよ〜じゃな。…中は、ど〜じゃろ?」

ダンツは…、鍵を開けて山小屋の中に入りました。

「工作隊のみなさんも、中でおやすみ下さい…。ぺぺも先に夕ごはん済ませちゃって、…私は見張り番に立ってるから」

…ダンツに続いて、職人さん達とぺぺも山小屋に入ってゆきます。

「多少傷んでおるが…、これなら問題はないじゃろ〜。今夜は、ここで明かせそ〜じゃな…」

荷物からお皿とぺぺろぐぅ・フードを取り出し、…盛るぺぺ。

…「わしも、ゆうごはんにするか」

ダンツもほしいいを椀に開け…、お水で戻し塩こんぶを浸しました。

「プイプイ…?」

お椀に浮かぶ塩こんぶの香りに、…ぺぺは興味津々です。

…「何じゃお主、これは精進用のただの塩こんぶじゃぞ?」

ダンツは…、塩こんぶを一切れはしでつまみ口に運ぼ〜としました。

「プイプイ、プイプイ…!!」

ぺぺには、…ど〜やら塩こんぶの香りがたまらないよ〜です。

…「そんなに食べたいなら、一切れわけてやるわい」

塩こんぶを…、差し出されたぺぺの肉球の上に乗せるダンツ。

「プイプイプイプイ〜…♪」

ぺぺは、…塩こんぶを夢中でかみかみしました。…口の中に広がる、塩で引き立つこんぶの旨みと磯の香りに。人間の言葉に訳すと…、「こんなに美味しいモノがあるなんて信じられない!」とでも、ゆったトコロでしょう…。

「ぺぺろぐぅは、…草食動物じゃとゆ〜し。…精進モノがそんなに美味いなら、お主ゆい坊主になるかも知れんの〜」

そ〜ゆうと…、ダンツはワッハッハと笑います。それから、しばらく経って…。ダンツは、…アーシャと見張り番を交代しました。…乾パンと干し肉で、おなかを充たすアーシャ。すると…、アーシャは気になってゆる寝具の確認にゆきます。押し入れを開けると、ほのかに鼻につくカビのにおい…。

「何年も人が入ってなかったってゆ〜から、…やっぱりおひさまにさらさないとダメよね。…今晩は、床の上に直接寝ましょう仕方ないわ」

そこに…、山小屋に入って来るダンツ。

「アーシャ殿、今夜は一晩中…。誰かしら、…見張り番に立たざるを得まい。…ど〜致そうか、順番は?」

アーシャは…、あごに手を当て少し思案します。

「ダンツさんは、このまま見張りに就いてもらってもよろし〜ですか…?時間が来たら、…私が引き継ぎます。…明け方は、ぺぺお願いね」

「プイプイ」…、ぺぺはまだ塩こんぶの興奮の余韻が残ってました。

「中番が、イチバンしんどいじゃろ〜に…。わしとて、…修行で一晩中勤めるコトもある。…お主、それでゆいんか?」

冷静に落ち着いて…、自分の考えを述べるアーシャ。

「仰りよ〜、ごもっともですダンツさん…。しかし、…ダンツさんは戦いのご経験はあまりありませんから。…ここは私に任せてもらえませんか、ご安心下さい。三日三晩までなら…、眠らずに戦えます」

ダンツは、アーシャの意見にうなりました…。

「さすがに、…伝説の勇者じゃな。…ではお言葉に甘え、このまま見張りにたたせてもらうとしよ〜」

ホッとするアーシャ…、それはダンツが素直に納得してくれたからです。

 

アーシャ南の大陸に舞う その20

…またしても、モンスター達の襲撃を受ける工作隊。モンスター達の内ワケは、…スケルトン剣士1体、ウェア・ウルフ1体、各色のスライム3体でした。

「さすがにやるわね、これでど〜っ…!!?」

ケルトン剣士と戦うのは…、アーシャ。…アーシャは、跳びあがって斬りつけますが。レイピアを駆使して、…アーシャの体重をかわすスケルトン剣士。ぺぺには、色とりどりのスライム達が一斉に襲いかかります…。

「プイプイ!」…、スライム達は入れ変わり立ち代わり。…ぺぺのおなかめがけ、タックルを試みました。ぺぺは、…ハッキリゆってこ〜ゆうの苦手です。強さに注文はつけません、強敵が一体立ち向かって来る方がやりやすいのでした…。

「グルル…、グルオ〜!!」

…ウェア・ウルフと、立ち合うダンツ。ウェア・ウルフの猛烈なパンチ攻撃を、…何とか棒術でさばいてゆます。

「シュシュッ…!」

ただ攻撃されてるだけの…、スケルトン剣士ではありません。…アーシャを、鋭い連続突きで追い込みました。アーシャは、…その一撃々々を丁寧に盾で防ぎます。

「プイプイ…!!」

も〜…、カンカンに怒るぺぺ。…ジャンプして勢いよく飛び上がると、そのままおしりでスライム3体を。下敷きにしてしまいました、…ぺしゃんこに潰れてしまうスライム達。

「どうじゃ、これなら…!」

ウェア・ウルフのパンチの隙に…、ダンツは棒で突きます。…それが、案外ゆいトコロにヒットし。ダンツ有利の、…形勢に。

「このままじゃ、らちがあかない…。よしっ…、イチかバチか!!」

…盾を投げ捨てるアーシャ、そこに容赦の無いスケルトン剣士の突きが。しかし、…それはアーシャの作戦でした。スケルトン剣士の突きを左脇に挟んだアーシャは、右のひじでみぞおちを打ち…。そのまま突き飛ばします…、大きく体勢を崩すスケルトン剣士。

…「これで決着をつけるわ、とりゃ〜!」

アーシャは、…スケルトン剣士に「マジカル・ヒットを叩き込み。やっつけてしまいます、残るのはウェア・ウルフ1体…。

「自分の置かれてる状況がわかんのか…、お主まさか1体で。…わしら、全員を相手にする気かの〜?」

ウェア・ウルフが周りを見渡すと、…果たしてダンツのゆ〜通り。

「まだ逃げられるじゃろ〜、今なら…。ゆけっ…、ゆってしまえ!!」

…泣き声みたいな悲鳴をあげると、ウェア・ウルフは山道を大慌てで駆けのぼってゆきました。

「"敵を見逃す"、…それは神さまのみ教えですか?」

アーシャの質問に、その場に座り込むダンツ…。

「そんなお節介は…、神さま教えとりゃせんわい。…わしの気まぐれよ、大した意味はない」

剣を、…腰の鞘に収めるアーシャ。

「あのウェア・ウルフは、これから仲間と合流して…。工作隊を…、また襲うかもわからないじゃありませんか」

…ダンツは、丸い頭を一撫でし。

「そ〜かも知れん、…だがその時はその時じゃ。それなら、わしはも〜一度戦う…。その時ど〜するか…、それは神さまがご存知じゃろ〜」

…工作隊は、再び出発します。

「私の考え方とは違う」、…アーシャはつぶやくよ〜に想いました。