西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その22

「タイヘンだ兄者、三蔵法師がいなくなってる…!!」

ここは蓮華洞…、血相を変えた銀角大王金角大王に走り寄ります。

…「何だと、一体ど〜ゆうコトなんだ。誰か、…三蔵法師の姿を見たモノはいないのか!?」

配下の妖怪達を、にらみつける金角大王…。しかし配下の妖怪達は…、みな黙ったままでした。

…「金角・銀角両大王さまにご報告致します、ど〜やらじょうろさまのお姿も見当たらないよ〜なのですが」

その中の1体が口を開く、…配下の妖怪達。

「じょうろだと、そんなのはど〜でもい〜黙っておれ…!!」

配下の妖怪達の1体を…、一喝する銀角大王

…「いや待てよ、もしかすると。じょうろが、…"三蔵法師を捕らえたのは自分の手柄だ"と。思いあがり、独り占めする為に…。化け術で連れ出したのかも知れん…、山羊髭将軍!」

…山羊頭の妖怪が、金角・銀角両大王の前にひざまづきます。

「お前に兵50を与える、…草の根をわけても三蔵法師とじょうろを見つけ出し。何じょうろは殺してもかまわん、必ずや三蔵法師を生きたまま連れて参れ…」

得物の槍を手にし…、兵50を引き連れ山羊髭将軍は出発しました。

…「兄者、三蔵法師のお供の三匹はど〜するのだ。三蔵法師がいなくなってしまったら、…ヤツら必ず攻め込んでくるぞ!!」

銀角大王は、少々焦りを感じてゆます…。

「わかっておるわ…、こ〜なったら戦争だ。…我々も全力を出す、鹿角将軍お前に兵50を与えよ〜。蓮華洞の正面を守るのだ、…任せたぞ」

金角大王の言葉に、鹿角将軍は動揺を隠せません…。

「お言葉を返すよ〜ですが…、金角大王さま。…兵50では、三蔵法師のお供の三匹は倒せないと。前回虎徹将軍が敗退したではありませんか、…それをど〜なさるおつもりです?」

銀角大王は、カッとなって怒鳴りつけました…。

「バカ者が…、お前らはただゆわれたコトを。…ゆわれた通りに遂行すればい〜のだ、疑問をさしはさむなどもっての外!だがまぁゆい、…教えてやろ〜。このわしが自ら出陣するのだ。そして兵100を以て、蓮華洞の裏側を固める…」

ニヤリと笑う…、金角大王

…「ど〜やら、納得しておらんな。それはそ〜だろ〜、…しかしな我らの敵はあの曲者。孫悟空だ、必ずや裏をかいてくる…。それでなくとも…、ヤツは雲に乗れるよ〜だから」

…それを聞くと、鹿角将軍は二振りの剣を手にし。兵50と共に、…蓮華洞をあとにします。

一方、こちらは三蔵法師とお供の三匹でした…。

八戒、悟浄…、義勇兵50のウチ。…20ずつをお前達にわけ与える、それで蓮華洞を正面から攻撃してくれ」

猪八戒は、…孫悟空の提案が不思議です。

「残りたった10人の義勇兵で、兄貴はど〜するのさ…?」

孫悟空は…、腕を組みました。

…「うまくゆくかど〜かわからんが、お前達はおとりなんだ。恐らく金角・銀角大王は、…蓮華洞の正面を守るだろ〜から。おれさま達は雲に乗って、その背後を衝き…。蓮華洞の金角・銀角両大王を…、直接討ち取るつもりさ」

…筋斗雲を呼ぶ孫悟空、つき従う10人の天の義勇兵達も。みな、…それぞれの雲に乗ります。

「あなた達には、全く申し訳がない…。私は戦いに臨んでは…、何の役にも立たないが。…あなた達が、全員で生きて帰って来るまで。ここで竜馬と共に、…座禅を組むとしよ〜。ゆいかい、くれぐれも無理はするんじゃないよ…。戦いでどんなに名誉を遂げても…、全ては生命あっての物種だからね」

三蔵法師はあぐらをかいて座ると、静かに瞳を閉じました。

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その21

…「あっあのキツツキ、あいつだな何を企んでやがる!!」

キツツキに化けて近づいて来るじょうろを、…孫悟空は筋斗雲に乗って捕まえよ〜とします。

「悟空待ちなさい、早まっちゃゆかん…!」

首飾りの姿の三蔵法師は…、慌てて孫悟空を制止しました。

…「あれお師匠さまの声じゃないか、ど〜ゆう事情だ?」

如意棒を構えたまま、…キツツキに化けたじょうろと並んで筋斗雲を飛ばす孫悟空。キツツキに化けたじょうろは、猪八戒沙悟浄の間をすり抜けると…。竜馬の前で…、術を解きます。

…「こりゃ、お師匠さまだぞ!!」

「お師匠さま、…ど〜なさったんですか!?」

驚く猪八戒沙悟浄の前で、三蔵法師は座り込んでゆました…。

「いや…、タイヘンな目に遭った。…しかし、ここにゆるじょうろさんに助けてもらったのだど〜もありがとう」

三蔵法師は、…立ちあがるとほこりを払い落とします。

「やい、お前ど〜ゆうつもりだ…。そ〜やって…、おれさま達に取り入ろ〜ってはらだろ〜!!?」

…如意棒の先端を、孫悟空はじょうろに向けました。

「あたしが悪いんです、…許して下さいとはゆいません。どなたでも、あたしを縄で縛って…。天の玉帝のお前に引き出して下されば…、そこでお裁きをお受けしますから」

…お供の三匹は、じょうろのゆったコトに驚きを隠せません。

「あなた達、…よくご覧なさい。じょうろさんはこれまでの行いを反省して、罪を償うつもりなんだよ…」

納得してるのは…、三蔵法師一人です。

…「おれさまは、そんなの信じない。だけど、…お縄にかけちまえば悪さは出来んだろ〜。弟、やってやれ…。そしたらおれさまが…、筋斗雲で天の宮殿まで連れてっちまうよ」

孫悟空は、猪八戒にじょうろを縄で縛らせると。筋斗雲に乗せて、…天の宮殿を目指しました。

「おれさまは、お前が何を考えてるかなんて興味ない…。だけどな…、玉帝のお裁きは苦しいぞ。…騙そ〜ったって、そ〜はいかないからな!」

ずっとうつむいて、…面をあげないじょうろ。

「あたし自分で決めたんです、それでゆいと…」

やがて二人は…、天の宮殿に到着します。…孫悟空は、じょうろを連れて玉帝のお前に案内されました。

「むっ、あなたは…!!金角・銀角両大王の妹じょうろではないか…、孫悟空あなたが生け捕りにしたのか?」

孫悟空は、玉帝にこれまでのいきさつを語ります。

「とゆ〜ワケだ、…おれさまにもさっぱりわからねぇ。だからこいつのお裁きはちょっと待ってくれないか、お師匠さまは詳しくご存知みたいでな…。こっちが落ち着いたら…、必ず書面で届ける」

孫悟空の言葉に、立派なおひげをなでる玉帝。

「そ〜か、…よくわかった。ならばその前に、ご本人からもゆっくりお話を聞かせてもらうとしよ〜…。ところで孫悟空よ…、今回の三蔵法師殿のご危機に。…馳せ参じたいと申す、義勇兵が50程集まっておるのだ。是非連れてゆってやって、…活躍の場を与えてやって欲しい」

孫悟空は、せっかちにも〜帰ろうとしておりましたが…。

「そりゃゆいやな…、これから最後の決戦なんだ。…人手は、一人でも多い方がゆいや」

と振り返って、…ゆい放ったのです。

 

 

 

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その20

一人でふらふら…、三蔵法師の閉じ込められている奥の牢獄まで。歩いてゆく、じょうろ…。

「今さっき、…表が騒がしかったが。…もしかすると悟空がやって来たのかね、やり過ぎなければゆいんだが」

(また…、気を遣ってる)

それが、じょうろの神経を逆撫でしました…。

「えぇそ〜よ、…確かに孫悟空はやって来たわ。…でもおにいさまの軍勢に怖れをなして、猪八戒沙悟浄を連れて。逃げ帰ったの…、"これからはお師匠さま抜きで旅を続けよ〜"。ってゆってたから、あなた残念だったわね…」

とっさに、…ウソを吐いたじょうろ。

…「それは残念だ、でも仕方ない。私はここで倒れる〜運命〜でったのだろ〜…、それでもゆい。誰かが西天に辿り着きありがたいお経を持ち帰れば、唐の都のみんなは救われる…」

三蔵法師は…、うつむいてつぶやきます。

「そんなのウソよ、あなた死ぬのが怖いって…!!」

カッとなる、…じょうろ。

…「おや、ど〜してその話をご存知かな。いや全く恥ずかしい…、しかしあなたの仰る通りだ。私はこれから私を待ち受ける〜運命〜が怖い、今にも震えだしそ〜なぐらいに…」

じょうろは、…自分は勝ったと錯覚しました。

…「そ〜でしょ、じゃああたしに命乞いなさい!」

三蔵法師は…、目を伏せたままです。

「だケドね、私はあなた達に捕まって…。初めてわかったんだ、…死ぬコトより恥ずかしい方がツラいと。…私はありがたいお経が、唐の都に届けられないのが恥ずかしい。それを教えてくれたのは…、おじょうさんあなただよ」

地団駄を踏む、じょうろ…。

「ウソよウソ、…あなたはきっとウソから生まれて来たんだわ。…これ以上ウソを吐いたら、あなたの首筋を噛み切ってやるから!!」

視線を…、じょうろに合わせる三蔵法師

「おじょうさん、あなたの心には"善根"があるよ〜だね…。それが、…これまでの悪いおこないとぶつかってゆるのだろ〜」

…じょうろはハッとしました、思わず反論出来なかったのです。

「それは何よりだよ…、死ぬ直前にあなたに会えてよかった。妖怪の心にも"善根"は兆す、私は常々そ〜考えてゆたが…。実際目の当たりにすると、…それは清々しい」

…うつむく、じょうろ。

「じゃあ答えてよ…、妖怪は。ううんモチロン人間でもゆいけれど、何の為に生きてるの…?」

三蔵法師は、…しばらくの間黙って考え込みます。

…「そ〜だね、それは難しい。人によって色々だろ〜し…、人の数だけ生き方がある。それでも、イチバンシアワセなのは…。誰かの喜びに、…進んでご奉仕させていただくコトではないだろ〜か?」

…不意に悲しくなって、べそをかき出すじょうろ。

「やっぱりあなたはウソ吐きだ…、あたし騙された。みんな、自分の為に生きてるってゆ〜のに…」

憐れみの込もった目線で、…じょうろを見詰める三蔵法師

…「そ〜ゆう生き方もあるよ、でもそれはみ仏のお前では損な生き方だ。心とゆ〜のは…、誰かに喜んでもらうと。自分の心から、泉のよ〜に喜びが湧いてくるんだ…。そりゃあ、…自分を喜ばせる生き方のよ〜に。…一度にた〜っくさんは気持ちよくはならない、でも心の奥底からほんのりと温まれる」

じょうろは…、大きな声で泣き出しました。赤ん坊のよ〜に、「あ〜んあ〜ん」と…。騒ぎを聞きつけた妖怪が、…何体か奥の牢獄に入って来ましたが。…じょうろは、みんな追い返してしまいます。

「じゃあ…、あなたの言葉が本当だって。あたしに、証明してみせて…」

ひとしきり泣いて、…気分が落ち着くと。…じょうろは三蔵法師に近づき、その身を縛ってる縄を噛みちぎりました。

「あたしの化け術で…、あなたを首飾りに化かすから。そのまま、あのお猿さん達を近くまで運んであげる…」

三蔵法師は、…じょうろににっこりと微笑みかけたのです。

 

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その19

…「孫悟空供、我々に降参しろっ!!さもないと、…三蔵法師を今すぐ殺すぞ」

七星宝剣を抜いて、孫悟空達を大喝する金角大王…。

「ちっ…、やっぱりな。…これじゃ、うかつに手は出せねぇ」

孫悟空は、…如意棒を構えたまま様子をうかがいます。

「兄貴、オイラい〜案が浮かんだゼ。そらっ、こっちへ来い…!」

近くにゆた…、じょうろを捕まえる猪八戒

…「そっちこそい〜のか、これで条件は対等。人質交換だ、…早くお師匠さまを解放しないと。この妖女を、ヒドい目に遭わすぞ…!!」

化け術は得意ですが…、じょうろには力はあまりありません。

…「ふっふっふ、それがど〜した?じょうろは、…我が妹に間違いはない。しかし、三蔵法師の肉を喰らわば…。我が一族はことごとく栄える…、たかが妖女一体の命と引き換えに出来よ〜か!」

…じょうろにとって、この言葉は少なからずショックでした。

「兄さん、…銀角大王はあ〜ゆってるけれど。じょうろさんを人質に取ってれば、妖怪もカンタンには攻めて来れないみたいだから…。一度ここは撤退しよ〜…、そして改めて"何か"策を考えよ〜よ」

孫悟空に、小さな声で提案する沙悟浄

「わかった、…現在はそれが得策だ。この場に居座っても、決着はつかんだろ〜…。おいっ…、お前ら。…おれさまこの場は、お前らを見逃してやるコトに決めたぞ!!だからもしおれさま達を追って来れば、…じょうろは返してやらんからそ〜想ってろ」

孫悟空達は、金角・銀角両大王率いる妖怪達に背中を見せず…。慎重にしかも時間はかけずに後退し…、そのまま蓮華洞を脱出します。

…「筋斗雲、やって来い!」

空の彼方から、…孫悟空の足許に筋斗雲はすっ飛んで来ました。

「弟達よ、早く乗れ…!!バカっ…、も〜じょうろなんてど〜でもゆいんだ」

…こ〜して孫悟空は、三蔵法師こそ助け出せませんでしたが。猪八戒沙悟浄の救出に成功し、…三匹そろって戦いの準備を始めます。一方で残されたじょうろは、少々呆気に取られてゆました…。

「あのお猿さん達…、あたしを特に傷つけなかった」

…それにもまた、ショックを受けたじょうろです。

「ど〜してなの、…あたしがあなた達をだまして。それで、三蔵法師まで捕まっちゃったのに…」

「おぉじょうろさま…、ご無事でしたかおいたわしいコトです。…金角・銀角両大王さまも、それはそれはご心配なさってますよ」

じょうろは、…妖怪達に護られて蓮華洞に戻りました。

「あたし戻りました、お兄さま…」

金角・銀角大王に…、ひざまずくじょうろ。

…「おぉそ〜か、よかったな」

金角・銀角両大王は、…それだけ口にすると。孫悟空達を捕らえる為の、作戦会議を続けます…。

「あぁ…、お兄さまにとって。…あたしは、ど〜でもい〜コトなんだわ」

じょうろは、…何となく気がついてしまったのでした。金角・銀角両大王が求めているのは、あくまで力であり…。手下の妖怪達は…、その力を恐れてゆるから従っている。…それは、じょうろがこの。蓮華洞に抱いてゆた幻想を、…粉々に打ち砕いてしまいます。「みんな仲良し」、じょうろはそ〜想ってゆたのです…。だから…、三蔵法師達を捕らえるのにも進んで協力したのでした。…だから、今のじょうろはモチベーションをすっかり失ってしまったのです。

 

 

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その18

孫悟空は筋斗雲に乗って、…平頂山の蓮華洞の近くまで戻って来ました。

…「そ〜ゆえば、カゴがど〜こ〜抜かしてたな。一応準備するか…、変われっ!!」

頭の毛を三本引き抜くと、孫悟空はそれぞれカゴとカゴを担ぐ2体の妖怪に変えます…。

「よしよし、…こんなモンだろ。…それじゃあとは、おれさまカゴに揺られてりゃゆいワケだ」

2体の妖怪の担ぐカゴに乗って…、蓮華洞の入り口を目指す孫悟空

「こ、これは、金角・銀角大王のお母さま…!!本日は、…一体どんなご用向きでありましょうか?」

…蓮華洞の入り口を守る妖怪は、武器を地に放り出して。化けた孫悟空に…、恐れ入って平伏しました。

「ホホホ、それはあなた達のよ〜な…。下っ端妖怪の知ったコトじゃございません、…さぁさっさと通すザマス!」

…金角・銀角両大王の前に、孫悟空は無事案内されます。

「おぉこれは…、これはお母さま。ど〜なされたのですか、我々から是非にお呼びしよ〜としたトコロへ…」

「私は、…聞いたザマスよ。…最近この平頂山を、三蔵法師とかゆ〜坊主が通るらしいわね?そいつをあなた達に取っ捕まえてもらって…、いただこうと思ってやって来たザマス」

銀角大王は、金角大王に耳打ちしました…。

「兄者、…今日のお母さまは"何か"ご様子がおかしくないか?…それに三蔵法師がここを通るなんて、どこで聞いたのか」

銀角大王の言葉に…、うなずく金角大王

「確かにお前のゆ〜通りだ、もしかしたら孫悟空が化けてるのかもわからん…。しかし証拠が無い、…もし本物なら許されん失礼を働くコトになるぞ」

…縛られてゆる、猪八戒沙悟浄に近づく孫悟空

「あらあなた達…、なかなか強そ〜じゃない?私のボディ・ガードになるなら、命だけは助けてあげるザマス…」

化けた孫悟空は、…小声で縛られた二匹にささやきます。

…「おい弟達、勘違いするな。おれさまだ…、助けに来たんだよ!!」

それを聞いた、猪八戒沙悟浄は声を合わせて懇願しました…。

「金角・銀角両大王のお母さま、…ど〜か生命だけはお許し下さい。…お師匠さまの生命も、西天のありがたいお経も。全て…、すっかり諦めますから」

化けた孫悟空は、金角・銀角大王に命じて猪八戒沙悟浄の縄を解かせ…。それぞれに、…それぞれの武器を与えます。

…「こいつらに武器をくれてやるのは、少々危険ではありませんかお母さま?」

ますます疑念を募らせる…、金角大王

「何をゆってるの、あなたったら…。もし私が、…孫悟空に襲われたらど〜するの?…この二匹だけじゃ、とても間に合わないザマス。ところで…、例の。三蔵法師って、坊主はどこザマスか…?」

銀角大王は、…困惑してゆいました。

…「それだけはなりません、お母さま。お母さまもご存知の通り…、孫悟空はまだ捕まっておりません。それまでは、念の為この奥に閉じ込めてあるのですよ…」

その時、…近くでやり取りを眺めてゆた。…じょうろが叫びます。

「こいつが…、その孫悟空よ。みんな見て、おしりが真っ赤っか…!」

舌を出すと空中で一回転し、…「戻れっ!!」と唱える孫悟空

…「しょ〜がねぇ、バレちまったか。そうよ…、おれさまこそ孫悟空!ど〜したお前ら、おれさまにへこまされないウチに…。お師匠さまを解き放て、…ゆっとくがおれさま気が短いぞ!」

孫悟空は如意棒を構えました、その両脇に。それぞれの武器を構えた…、猪八戒沙悟浄がピッタリと着いたのです。

 

 

 

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その17

平頂山の北西に向かって、筋斗雲を飛ばす孫悟空…。

「あったあった…、多分あれだ」

孫悟空の視線の先には、豪華なお屋敷があります。

「こんなデカいウチに住んでるなんて、…ずい分い〜暮らししてるモンだな」

この豪華なお屋敷は、太上李老君から教えてもらった…。金角・銀角両大王の母親が…、住んでゆました。

…「ど〜やって忍び込んだモノか、そ〜だあれにしよ〜」

孫悟空は、…少し離れたトコロに筋斗雲を降ろし。そこから歩いて、豪華なお屋敷に向かいます…。

「貴様は何者だ…、用向きをゆえ!!」

…豪華なお屋敷の、門番に呼び止められる孫悟空

「あぁ私ですか、…金角・銀角両大王さまから遣わされた者ですよ。お母さまへの、おことづけを預かってましてね…」

人に頭を下げるのが嫌いな孫悟空は…、如意棒で引っ叩いてやりたいのを必死で我慢してゆました。

…「ゆいだろ〜、通るがゆい。念の為ゆっておくが、…失礼のないよ〜にな」

孫悟空は、召使いの者に金角・銀角両大王の母親の元まで案内されます…。豪華なお屋敷は…、それはそれは巨大で。…中は、迷路のよ〜に入り組んでゆました。

「あらまぁ、…可愛らしいお猿さんね。もしあなたさぇよかったら、ウチで飼って差しあげてもよくってよ…」

この金角・銀角両大王の母親の一言に…、心の中でブチ切れる孫悟空。…孫悟空にとっては、「可愛い」とゆ〜のが特に許せません。

「ありがたいお言葉ですが、…私には金角・銀角両大王さまにお仕えする役目が待っていますから。それよりもこの度、金角・銀角両大王さまは念願叶って…。遂に三蔵法師とゆ〜人間を…、捕らえてございます。…こいつは何と、天で一万年も修行したとゆ〜ドえらい坊主なのですね。この坊主の肉を一口食べれば、…それだけで不老不死間違いなし!金角・銀角両大王さまは、孝心を起こされまして…。是非お母さまにも召しあがっていただきたいと…、私を遣わされたのですよ」

孫悟空は話しながら、自分の舌を噛み切ってやりたい想いです。

「じゃあ私、…早速出かけるわ。あなた悪いけれど、カゴを用意してちょうだい…」

立ちあがって出かける準備を始めよ〜とする…、金角・銀角両大王の母親。

…「少々お待ち下さい、お母さま。三蔵法師には、…三匹お供がついておりまして。このウチ二匹は大したコトありません…、しかしまだ捕らえられていない。…孫悟空とゆ〜ヤツが、滅法手強いのであります。こいつを捕まえるには、…どんなに短くとも1週間はかかるでしょ〜から。ここは日を改めまして、再びお迎えにあがるのを待って欲しい…。そ〜…、金角・銀角両大王は申しておりました」

…金角・銀角両大王の母親は、イライラしてくちびるの端をキッと結びます。

「それならば、…出来るだけ急ぐよ〜に子供達にゆいつけておくれ!!蓮華洞には、手下の妖怪が300体はいるのでしょ〜…?そんな孫悟空なんてちっぽけなお供は…、大したコトないわ」

…頭を下げて金角・銀角両大王の母親の前から、退出する孫悟空

孫悟空は豪華なお屋敷を出ると、…すぐに筋斗雲で地球を3周しました。

「あ〜むしゃくしゃする、あのじ〜さま…。よくもこのおれさまに…、"金角・銀角両大王の母親に化けて蓮華洞に侵入すればゆい"な〜んて。…抜かしやがったな、大体おれさまは。確かに化け術は習ったし使えもするが、…得意じゃねぇんだ!だがしょ〜がない、これはみんなの為なんだ…。妖怪の戦力もおおよそわかったし…、モノは試し演ってみるか!!」

孫悟空は、筋斗雲のうえで。クルッととんぼ返りを打つと、…その姿は金角・銀角大王の母親そっくりになったのです。

 

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その16

自分達の荷物と竜馬のトコロまで、…一人トボトボ戻って来る孫悟空

…「なぁ竜馬、おれさまちょいと。みんなを助けにゆって来る…、お前は荷物の番をしっかり頼むぞ」

ひひーんっ、といななく竜馬…。

「あいつら、…このおれさまをこけにしやがって。…このままじゃおけない、全員やっつけてやる!!」

三蔵法師が筋斗雲に乗れませんから…、孫悟空も歩いて旅をしてゆますが。今はも〜そんなの関係ありません、孫悟空は筋斗雲に飛び乗ると…。平頂山の周りをぐるぐる回り、…蓮華洞をすぐに見つけ出します。

…「あの鉄の扉が、妖怪の根城の入り口だな。そんなのでこのおれさまを止められると思うなよ…、如意棒でブッ壊してやるぞ!」

しかし、孫悟空は不意に冷静に考えました…。

「待てよ、…もしこれでおれさままで捕まるコトがあったら。…何もかもが妖怪の思うがままだ、それにもしかしたらお師匠さまを人質に取るかも知れん」

蓮華洞の周囲を…、プカプカ筋斗雲に乗って漂う孫悟空

「仕方ない、おれさまとしたら…。全く本意じゃないが、…あの金角・銀角大王が盗み出した、天の宝物の持ち主。…太上李老君に頭を下げるとするか。チッ…、面白くねぇな」

天の宮殿まで、筋斗雲をブッ飛ばす孫悟空…。

「よぅお歴々、…おれさまだ。…ちょっと太上李老君にご用事だ、通してもらうからな」

孫悟空は…、天の宮殿の門衛に声をかけました。

「おぉこれは孫悟空どの、一体どんな用事でござろ〜か…?まさか、…三蔵法師さまのおん身に"何か"危険でも」

…おなかの中で、苦い虫をかむ孫悟空

「その通りさ…、おれさまの作戦ミスで。みんな妖怪に捕まっちまったんだよ、だから太上李老君にお知恵を拝借に参上つかまつったワケだよ…」

太上李老君の元に、…孫悟空は案内されます。

…「じ〜さま、元気でやってっか!!?」

太上李老君は…、縁側でひなたぼっこしながら。一人で、碁を打っておりました…。

「その声は、…悪猿じゃな。…何ぞ、また悪さを企んでのこのこやってきたのか?」

特にこちらには…、目を向けない太上李老君。

「辛気くせぇ趣味だな、せめて人と打てよ…」

孫悟空は、…太上李老君が一人で碁を打ってるのを揶揄します。

…「ふん、これでゆいんじゃよ。お主にはわからんだろ〜が…、人と打ってるとど〜にも気を遣ってゆかんのじゃ。昔はそれでも競うのが面白かったが、今はも〜一人で充分過ぎる…。ところで、…三蔵法師どのをお守りするお役目はど〜したのじゃ?」

…太上李老君に、現状を説明する孫悟空

「つまり…、お主はわざわざ頭を下げて。このわしから、知恵を拝借しよ〜と…。そりゃ愉快じゃな、…ひょ〜っひょっひょ」

孫悟空を、改めて正視する太上李老君。

「お主…、わしの肩をもんでくれ。何50回ほどでゆいわい、それもこれも三蔵法師どののお為じゃからな…。優しくじゃぞ、…ちっとでも痛かったら何も教えてやらんから」

孫悟空は、悔しさに歯噛みしながら。太い上李老君の肩に…、手を添えました。