再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その50

良太と純平はやすみを合わせて、…夜「来福亭」で飲んでゆる。…二人はも〜20歳を超えていたから、ダンナさんも何もゆわなかった。ちなみに今日は…、初めから飲むつもりで来てるので純平も電車である。

「この前おまえといった、Jazz・バー"Marble"な…。あそこに、…恋人を連れてゆったよ。…いややすみが合わなくて、生演奏は聴かせてやれなくかったんだ。残念だったが…、それでもずい分ゆいムードになったな」

二人で割り勘にして、ボトル・キープしてる「神の河」を…。良太は水割り純平はロックで、…それぞれゆっくり飲んでいた。

…「そ〜なのか、おれも一度勝美さんとゆった。まぁ元々Jazz好きなのは彼女だから…、そりゃあ悦んだ悦んだから。強いてゆえば値段がな、も〜ちょい安ければひんぱんに通えるのに…」

ギョーザと春巻き、…二品がのる良太と純平のテーブル。…「来福亭」のお料理は、どれも盛りがゆいので。これ以上頼むと…、最後のラーメンが入らない。

「仕事ど〜だ、純平…」

ギョーザを口に運ぶ純平に、…良太は尋ねた。

…「ちょっと待ってくれ、よしゆいぞ。ははは…、相変わらず目が回るよ〜だ。この前アルバイトくんが、一人突然来なくなっちまって…。ウチの会社、…そんなの初めてじゃないからなぁ。…おれが入ってから、数えて五人目になるよ。忙しすぎるんだ…、いくらなんでも。これじゃ、アルバイトくんもヤんなっちまう…。それで人が集まらないから、…尚更でな」

…はしをやすめ、「セブン・スター」を取り出す良太。

「"コーヒー庵"も忙しかったケド…、そこまでじゃなかった。ただあそこは、店長と伊藤さんがかなり無理してたから…」

「神の河」の水割りの残りを、…良太はクイッと空ける。

…「良太お前はど〜なんだ、福祉の学校通ってみて?」

純平はギョーザの残り半分を…、はしで口に運んだ。

「授業は、それ程難しくないんだ…。実技の練習も、…まぁこなせるって感じで。…現在のトコロ、ゆっちゃえば順調だよただ」

口の中に残るギョーザの脂を…、純平は焼酎のロックで流す。

「ただ、ど〜した…」

次の煙草に、…火を点ける良太。

…「知識的にも技術的にも、ど〜にかなると想うんだ。ただ…、メシ食ってるのに悪いな。排泄介助とかあるだろ〜、あ〜ゆうのがおれに出来るだろ〜か?とは考える…」

純平もまた、…「マイルド・セブン」をくわえた。

…「おれの知り合いに、ホストやってるヤツがいる。ところがコイツ…、丸っきり下戸なんだよ一滴も飲めない。それで、ど〜してお仕事になると想う…?コイツがゆ〜には、…お仕事ならいくらでも飲める。…どんなにのんでも、ちっとも酔わないんだと」

さすがに正社員として何年も勤める…、純平は落ち着いている。

「例えば、キレイなおね〜さんがゆる…。裸見てみたいな、…そ〜思うだろ?…ところがお前が医者で、彼女が患者なら。そ〜ゆうコトじゃない…、客観的に冷静に悪いトコを見つけるだろ〜。お仕事になってしまえば、体の感じ方がそもそも変わってしまうモノだから…」

良太はそんな純平を、…尊敬のまなざしで見詰めた。

再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その49

「それではみなさん…、これからベッドと車イスの間の。移乗介助の練習をしましょ〜、ペアを組んで介護士役とご利用者さま役に…。わかれて下さい、…あとで交代しますから」

…先生が呼びかけ、生徒達は机とイスを片づけ始める。移乗介助とは…、ご利用者さんを。介護する者が支え、ベッドから車イスやその逆への移動を手伝う介助だ…。

「よろしく良太くん、…どっちが先に介護士役演る?」

…良太の隣の席の、坂本さんは40代前半の女性で。介護士にはならないが…、交通事故の後遺症で介護が必要な。弟さんへの介助に役立てよ〜と、技術を学ぶ為この学校に通ってゆる…。

「ぼくから演ります、…それでゆいですか?」

…うなずく、坂本さん。教室の隅に置いてある…、実習用のベッドをみんなで運び。そのベッドを用いて、一組ずつ移乗介助の練習が始まった…。

「こんにちは佐藤さん、…体調はいかがですか?」

…移乗介助に限らず、介護は何よりも。声かけが大切だと…、学校では教わるが。残念ながら、介護の現場に出てしまえば…。そこまで丁寧にあいさつしている、…余裕は時間的にも手間的にもない。

…「今からこちらの車イスに移ります、めまいやふらつきなどありませんか?」

先生が見守る中…、ベッドと車イス間の移乗介助の練習を。一組ずつこなしてゆく、緊張する良太は頭の中でこんなコトを考えていた…。

「座学がどんなに出来たって、…それは机上の論理に過ぎない。…介護士として本当にみなさんのお役に立てるかは、今日みたいな実習で決まるんだ」

良太がそんな風に…、頭の中をぐるぐるさせてゆるウチ。良太と坂本さんの、番がやって来る…。坂本さんはベッドに横たわり、…そのベッドの脇に立つ良太。

「…」

しかし…、声かけは全て飛んでしまった。良太の頭の中は真っ白で、何も言葉が出て来ない…。

「良太くん良太くん、…先ずはごあいさつからよ」

…端から、先生が声をかけてくれた。

「こんにちは坂本さん…、体調はいかがですか?」

最初のひと言さえ出てしまえば、あとは自然にするするとやり取り出来る…。

「坂本さん、…失礼します」

…良太は一声かけてから、坂本さんの体に触れた。普通多くの人は…、介助とはゆえ赤の他人と。体を密着させるのに慣れていない、ましてや異性なら尚更であろ〜…。その点良太は、…中学・高校と柔道部で。…時に女子部員も混ざって、寝技などももみ合ってゆたから。ある程度の耐性はあった…、座っている坂本さんに。足を開いてもらい、自分の片足を踏み込むと…。左手で腰を抱え右手で肩を支えながら、…「せ〜のっ」のかけ声で。…息を合わせ、車イスに移らせる。

「良太くんじょうず…、安定してるね」

坂本さんは、驚いたよ〜だ…。

「いやこれは、…形だけですから。…坂本さんも、どこも悪くないですし」

口ではそ〜語る良太だが…、これは柔道と。

要領は同じだと、心の中で確信を掴んでいる…。

 

再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その48

「前回の小テストをお返しします、…名前を呼ばれた方から一人ずつ取りに来て下さい」

…月曜日は、小テストの答案が返って来る日だ。良太の通う学校では…、毎週金曜日にその週に学んだ内容が。小テストとして出題される、今日は始まってから数えて三度目の月曜日であった…。

「岡崎良太くん」

…「はい」

…席を立って、先生の手から返却された答案を受け取る。席に戻り表に返すと…、94点だ。

「たった94点か、なかなか100点満点とはゆかないモノだなぁ…」

賢明な読者さんは、…「94点なんて高得点じゃない充分だよ」と想われるかもわからない。…筆者だってそ〜なのが、この福祉の学校の小テストは。テスト中にテキストを参照しても構わない…、だから良太は100点取って当たり前だと考えたのだ。

その日の授業も終わり、良太が帰り支度をしていると…。

「良太くん、…ちょっと事務室までゆいかしら?」

…と、先生から呼び出される。良太は…、「きっとテストの点数が悪くてお叱りを受けるに違いない」そ〜思って、覚悟を決めた…。「失礼します」と事務室のドアを開けると、…担任の先生が待ってゆる。

…「良太くんは小テストの成績が、一度目が91点二度目が90点。そして今回三度目が…、94点だったでしょ〜?」

やはりそ〜か、とバツ悪く感じる良太…。

「申し訳ありません、…ぼくが勉強不足でした」

…驚いて、先生は目をパチクリさせた。

「えっ…、何ゆってるの逆よ逆。良太くんは、成績がゆ過ぎるのよ…。こんなに高得点を小テストでキープした生徒さんは、…この学校始まって以来いないの」

…今度は逆に良太がビックリしてしまい、何をゆったモノかわからない。

「他の講師の先生とも相談してみたんだけれど…、良太くんずい分真面目に勉強してるみたいだから。もしよければ、もっと本格的な…。介護福祉士の資格が取れる、…専門学校に入学したらど〜かと想って。…もちろんここのお金は全額返金するし、推薦もさせてもらうわ」

ボーッとしていた良太だが…、よ〜やく事態が飲み込めた。

「あ、あぁそ〜なんですね…。ただ、…ぼくお金が無いんです。…先生達のお気持ちは、すごく嬉しいんですが」

先生は…、悲しそ〜な顔をする。

「あら、本当に残念…。でも介護福祉士の資格は、…ホーム・ヘルパー2級をここで取って。…実務を積んでからでも、試験で間に合うから。是非がんばってね…、良太くんみたいにやる気あるコが増えないと。介護業界はよくならないし、何よりご利用者さまが窮屈な想いをされてしまうモノ…。現在の気持ちをわすれないで、…良太くん」

…事務室を退出すると、良太は非常階段の喫煙所に向かった。「セブン・スター」をポケットから取り出して火を点けると…、何とも味わい深いなと想う。

 

再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その47

「Quality of Lifeは、略してQ.O.L.と呼ばれます…。これはご利用者さま一人々々の…、人生への満足度を示しますが。…それは、必ずしも物質的な対象に限定されません」

春日部にある福祉の学校に通い始め、…授業を受ける良太。大学生だった頃は授業とゆえば大体うわの空だったが、今は真剣だ…。

「現在の介護に於いて最も重要視されるのが…、Q.O.L.だとゆっても過言ではありません。…ご利用者さまの、生きがいや自己実現をどのよ〜に達成するか?が求められているのです。それでは、…そろそろ休憩時間に致しましょ〜」

授業一コマの50分は、良太にとってあまりにアッとゆ〜間である…。介護士をどこかで…、「肉体労働の延長」と思い込んでた良太には。…見るコト聞くコト新鮮で、なる程「介護士は興味深い」と想えた。

教室はビルの3階にあり、…その非常階段が喫煙所として設けられてゆたのだが。良太が「セブン・スター」を吹かしていると、他の生徒達も集まって来る…。

「あ〜かったりぃ…、ごたくはい〜から早く資格だけくれねぇかな」

…その中の一人、40代ぐらいの男はそ〜つぶやいた。

「ホントだよ、…介護なんて誰がやりたくてやるかっつ〜の」

そのつぶやきに、20代後半の男が相づちを打つ…。「聞きずてならない…」、パッと感じる良太だがど〜にもならない。

…「私は面白いよ、これからビジネスとして期待出来る分野だしね」

二人の男の話に、…こギレイな老人が混ざった。

「私は、建設業でずっと営業やってたんだ…。定年退職してウチにゆてもやるコトがなくて…、せっかくなら働こ〜と考えて」

…40代の男は、こギレイな老人に向かって返事をする。

「おじいさん、…お金持ってるんでしょ?どこで働いてたのか、知らないけれど…」

煙草の煙を吐き出す…、こギレイな老人。

…「会社名は出せないケド、まぁそこそこ知られた会社で。私は営業部長だったから、…あるモノはあるよ」

それを聞いて、20代後半の男はうらやましそ〜な目で見詰めた…。

「それなら面白いでしょ…、他人ゴトだモノ。…おれらはこれから食ってかなきゃならんのですから、そんな気持ちのゆとりはありません」

聞きたくなくても、…やり取りは自然耳に入って来る。「これも現実なんだ」、良太は考えていた…。介護業界の人手不足には…、働き手を選ぶ余裕はない。…だから自然、ありとあらゆる人々がありとあらゆる場所から集まって来るのだ。それを気に食わないとゆ〜のであれば、…良太が引き退る他はない。

「ケア・マネージャーの資格を取っちゃえば、そこそこ稼げるんじゃないの…?」

こギレイな老人は…、ど〜やらそれなりに事情に通じてゆるよ〜だ。

…「いや、そんなに儲からないみたいですよ何件も抱えて、…忙しい割には」

「ここの講師だって、ケア・マネージャーでしょ…?そんなに儲かってたら…、講師なんてやってないでしょ〜」

…とは考えるモノの、やはりゆい気分にはなれない。何にせよさっさと吹かしていってしまお〜、…と良太は決めた。

「そ〜いやそ〜だ、それならおれ…。先生に直接聞こ〜かな…、手取り幾らぐらいですか?って」

…40代ぐらいの男の話を、楽しそ〜に聞くこギレイな老人。

「それはさすがに教えてくれないんじゃないかね、…私も多少興味はあるが」

苦しみにあえぐよ〜に、20代後半の男は語る…。

「家族がいるから…、やっぱり25万は欲しいんだ。…でもそ〜なると、よほど忙しいトコでないと」

…良太は「セブン・スター」が半分ぐらいまで燃えると、もみ消して教室に戻った。残りの時間は…、先程の授業の復習に充てる。

再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その46

「休憩室に来い…、良太」

良太は、いつものよ〜に「コーヒー庵」でアルバイトしてゆる…。すると、…突然店長から呼び出された。…時刻は夕方4:00を回った辺り、店内には誰もお客さんは来ていない。正社員の伊藤さんに…、「店長に呼ばれました」と声をかけ良太は休憩室に入った。

「座れ…」

休憩室のちゃぶ台をはさんだ、…反対側を示す店長。…ど〜やらお叱りではないみたいだ、もしそ〜ならも〜とっくに火が点いてゆる。

「一服しながら…、話を聞くんだ」

良太は座って、「セブン・スター」をポケットから取り出した…。何も、…店長はいわない。…一本目に火を点けた「セブン・スター」が燃え尽きる頃、口を開く店長。

「お前…、ウチで正社員にならないか?」

良太は、度肝を抜かれた…。思わず、…も〜一本煙草に火を点ける。

…「お前は使いモノにはならんが、取り敢えずは真面目にやるからな。社長にまだ話してないんだが…、おれから直に推薦する」

混乱してしまって、何をゆったらゆいのか頭がまとまらない…。そんな良太に、…店長は続けた。

…「この場で決めろ良太、そ〜でなければ必要ない」

良太の頭の中に…、この三年間「コーヒー庵」で起こった様々が巡る。だが考えがまとまるより先に、ゆわば反射的に答えていた…。

「ぼく、…介護士になると決めてるんです」

…すぐに、店長は立ちあがる。

「そ〜か…、それならがんばれ。それが、お前の選んだ道だから…」

良太は一人取り残され、…しばらくぼんやり煙草を吹かしてゆたが。…やがて勤務中であると思い直し、吸い殻をもみ消すとホールに戻った。

「店長…、何のご用だった?」

まだ、お客さんは来ていないよ〜である…。煙草を吹かしながら、…正社員の伊藤さんは良太に話しかけた。

…「いやぁ、ぼくそろそろ"コーヒー庵"を辞めさせてもらお〜と考えてるんです」

びっくりする…、正社員の伊藤さん。

「えっえっ、ど〜したの…。ぼくのコト、…キライになった?」

…良太は、カウンターにもたれかかった。

「何ゆってるんですか…、ぼく介護士目指してて。今度福祉の学校に通おうと想ってるんですよ、その資金が貯まったらです…」

正社員の伊藤さんは、…ほっとおちついたよ〜である。

…「よかった、それなら助かる。良太くんには…、フツーのアルバイトのコの。3人分ぐらい働いてもらってるから、いなくなるとシンドいなぁ…。店長、…ど〜するつもりなんだろ〜?」

…ど〜にもお客さんがやって来そ〜にないので、良太も改めて。「セブン・スター」を取り出して…、火を点けた。

「ぼくが辞める前に、一度店長と三人で飲みにいきませんか…?お店終わったら、…軽く近くのお店で」

…にっこり笑う、正社員の伊藤さん。

「おっ…、それゆいね。遅くなっちゃうけれども、たまにはゆいよねぇ…。最近飲んでないからぼくも、…よしよしパーッとやろ〜」

…良太がお店でかけていた、Jazzのカセット・テープの。回転が止まる…、それもこれもあと数える程なのだ。

 

 

 

 

再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その45

「あっ勝美さん、…おはぎあんがとね。…あれみんな、次の日には食べちゃった。すんごい美味しかったから…、またよろしくね」

勝美がおはぎを持って来た日から、翌翌々日と…。良太は「コーヒー庵」でアルバイトし、…明けて三日目の夜。…勝美さんに電話する、今日はアルバイトおやすみだ。

「勝美さん…、おれ介護士目指そ〜と想うんだ」

いつもの話題なら、「コーヒー庵」でのアルバイト中にでも…。携帯電話をかければゆいのだが、…良太は今回しっかりお話したかったのでやすみの日まで待ったのである。

…「えっ」

良太の告白に…、勝美の返事は止まった。

「おれさ、子供の頃ば〜ちゃんにものすごく可愛がってもらったんだ…。その恩返しが出来ないウチに、…亡くなっちゃって。…介護士になれば、ば〜ちゃん孝行になるかなって。あれ…、勝美さん泣いてる?」

受話器の向こうからぐずる音が聞こえ、気がつく良太…。

「うん、…ちょっと。…でも大丈夫です、悲しいからじゃありません」

勝美は…、嬉しかったのだ。確かに良太は、人一倍アルバイトをがんばっているし…。「コーヒー庵」で働くのに、…モチベーションも感じてゆるだろ〜。…でもそれは、良太にとって一生を捧げるお仕事ではない。出会ってから…、良太はいつも勝美に優しかった。でも、やっぱり男の人って…。志を立てて実現し、…そしてそれを誇りに胸を張ると。…勝美のイメージを説明すれば、そんな感じである。だから…、良太が一生を費やせる夢を見つけたコトに。勝美は、涙が溢れて悦びを感じた…。

「ど〜やら、…資格を取るには。…福祉の学校に3ヶ月ぐらい通うみたい、お金は。10万円ぐらいだね…、すぐには用意出来ないから貯金しないと」

良太は、高校時代に柔道で一度挫折を味わっている…。遊んでゆる今の良太だって、…勝美はイヤではない。…でも、「何か」に燃えている良太はもっとだろ〜と想うのだ。

「ごめんなさい…、でも良太くん優しいから。おじいちゃんやおばあちゃんも、きっと喜びますよ…」

勝美からホめられて、…良太も嬉しい。

…「そ〜かな、他にも理由はあるんだ。例えば…、ケッコウ介護士って力仕事あるみたいなんだよね。ほら、おれそ〜ゆうの得意だから…。女性が多いみたいだケド、…それならおれも少しはお役に立つかな?とか。…それに、勝美さんが保育士になったら。共通の話題が出来るんじゃないかな…、とかさ」

受話器片手に、うんうんうなずく勝美…。

「そ〜ですね、…お相手させてもらうのが。…乳幼児かお年寄りかの、違いだけですから。保育士も…、オムツ変えたりミルクあげたり。似てるかもわかりません、そしたら私も楽しいです…」

話しながら、…良太も勝美もずい分。…気分が盛りあがった、良太にしてみると。勝美さんに対して…、ずっと恥ずかしい想いがあるのだ。でも、それはも〜過去になりつつある…。

 

再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その44

勝美さんの作ってくれた、山盛りのおはぎは…。結局良太も…、一度には食べ切れなかったので。…良太のおウチの冷蔵庫にしまわれる、良太のお父さんとお母さんも。勝美さんのおはぎを二、三食べてみて、…「勝美さんはたいそうなお料理上手だな」と納得してくれた。

さてその晩、翌日はまた「コーヒー庵」に出勤なので…。夜10:00には…、お布団の中に入る良太。

…「明日になれば、また勝美さんのおはぎが食べられるぞぅ」

そ〜良太は、…ウキウキしながら横になる。ところがおはぎを食べたせいか、うとうとしながら良太には亡くなったば〜ちゃんが思い出された…。

良太のお母さんは…、良太が子供の頃。…甘いモノに限らず、お菓子の類を与えるのをイヤがった。それは、…「体に悪いから」とゆ〜理由があってなのだが。とはゆえ、良太だって子供である…。やっぱり…、甘いモノの一つも欲しかった。

…「良ちゃんは、何か食べたいモノあるかい?」

良太がお父さんとお母さんと、…ば〜ちゃん家にいく前の晩。電話で受話器越しに、ば〜ちゃんは良太に尋ねる…。

「おれ…、何でも甘いモン食いてぇなば〜ちゃん」

…そ〜ねだる良太に代わって、お母さんがば〜ちゃんに釘を刺した。

「お母さん、…良太にあんまりお菓子なんかあげないでくださいね。添加物とか何とか、何が入ってるかわからないから…」

それなら…、とば〜ちゃんはおはぎをた〜っくさん手作りして用意したのである。…お父さんに似て、良太は子供の頃から体格がよかったから。それはそれは、…ば〜ちゃんのおはぎをよく食べた。その一件以来、ば〜ちゃんは良太が遊びに来る度…。うんとおはぎを作って…、振る舞ってくれたのである。

…「良ちゃん、おなかいっぱいになったら。伸ちゃんとファミコンしておいで、…スーパー何とかブラザーがあるから」

ば〜ちゃんは、お母さんの弟さんと一緒に住んでゆた…。そしてお母さんの弟さんには…、良太と歳の近い。…伸ちゃんとゆ〜子供がいて、伸ちゃんはファミコンを持っている。良太だってもちろんファミコン好きなのだが、…やはりお母さんが。「目に悪いでしょ」、と買ってもらえなかった…。

「良太…、ファミコンは一日一時間よ。…お母さん、良太を甘やかしちゃ困ります」

…お母さんは気をもんだよ〜だが、ば〜ちゃんはとゆえば。

「たまにはゆいじゃないか、…良ちゃん好きなだけ遊んでおゆき」

と、気楽に構えてゆる…。つけ加えるなら…、良太は食べる量も人の倍だが。…体を動かすのも大好きなので、お母さんが心配するまでもなく。一時間経たずに、…ファミコンに飽きて。伸ちゃんを引き連れ、表に遊びにいってしまうのだった…。

「ば〜ちゃんは…、現在どこにゆるんだろ〜?」

…お葬式の時のお坊さんは、「人間は死んだら犬やトンボそれにすすきみたいな自然の生き物に生まれ変わって」「また人間として生まれて来るのを待つんだ」、…とゆっていたのを思い出す。ば〜ちゃんは、良太に…。「良ちゃんがお勤めしたら…、その初めてのお給料でば〜ちゃんに"何か"美味しいモノをごちそうしておくれ」…と語ってゆた、それが果たせなかったのは良太には悔いである。

(ば〜ちゃんのシアワセの為に、…おれに出来るコトはないだろ〜か?)

良太はうつ伏せになって、両ひじを突き…。上半身を起こすと…、「セブン・スター」に火を点けた。…すると、一つの考えがまとまる。

「そ〜だ、…介護だ」

ば〜ちゃんが、既に亡くなってしまったのなら…。他の人のば〜ちゃんに孝行すればゆい…、ば〜ちゃんにしてあげられなかった色々を。…よそのば〜ちゃんにしてあげれば、おれの気持ちは充たされるに違いない。そ〜、…良太は考えた。