ルシファーさまお受難 3

コピンは、微妙な表情で言いました。

コピン「コピンちゃん、これから愛して愛してやまない、ルシファ〜様の為に、お掃除をさせていただきますです。」
コピンは、持ってきたバスケットから、ハタキを取り出しました。
そして、あっちへパタパタ、こっちへパタパタやり始めたのです。
ルシファー「やめんか、コピン。こら、大きなお世話だ!」
ルシファーの部屋は、お世辞にも綺麗だとは、言えませんでした。
体が悪いせいもありましたが、ルシファーはどちらかというと、散らかっている方が、落ち着くタイプだったのです。
コピンは、お掃除の天才でした。
散乱しているものが、ゴミなのか、必要なものなのか、直感でわかってしまうのです。
そして、必要な物がどの様に配置されていれば、使う人にとってわかりやすいのかも、想像出来てしまうのです。
しかしルシファーは、コピンのそんなところが、大嫌いでした。
ルシファーは、必要な物がなくなっても、一向に構わなかったのです。
なくなれば、また用意させればいいからです。
ルシファーは、むしろそうある事が、王者としての威厳を、自分にもたらすのだと、信じていたのです。
ルシファー「コピン、もういい…。もう勘弁してくれ…。」
コピンは、微妙な表情で言いました。
コピン「あれあれ〜?どうしましましました、ルシファ〜様。コピンちゃん、未来の旦那様である、ルシファ〜様の為に、一切合切、違った、一生懸命がんばってるんですよ〜。コピンちゃんの事、抱き締めたくなりました〜?いや、今はダメ!恥ずかしいから。」
ルシファーは、頭を抱えました。
 
ちょうど部屋が片付いた頃、天神様の配下の者が、ルシファーのための新しい包帯と、膏薬を持って来ました。
配下「ルシファー様、包帯の交換の時間です。」
ルシファー「うむ、そうか…。では、頼むぞ。」
ルシファーは、羽織っていた着物を脱ぎ、美しく引き締まった肉体を、露わにしました。
コピンは、微妙な表情で言いました。
コピン「それ、コピンちゃんがやる〜!」
ルシファーは、ギョッとしました。
ぶっちゃけ、コピンに肌を触られるのは、あんまり嫌だったのです。
ルシファー「いや、いいのだ、コピン。この薬はな、あまり良い香りとは言えない…。女であるそなたが触るには、ふさわしくないぞ。」
コピンは、微妙な表情で言いました。
コピン「コピンちゃん、コピンちゃん以外の人がルシファ〜様に触れるの、嫌だぁ〜。コピンちゃんだけが、触れていいの。あなた、わかりますですよね?」
そう言ってコピンは、配下の者を追い出してしまいました。
そうして、ルシファーの包帯を、取り外しにかかりました。
コピンは手際よく、そして優しく外しました。
そして、クリクリクリクリ、丁寧に膏薬を塗り込んでいきました。
ルシファーは、コピンのそんなところが、大嫌いだったのです。
確かにコピンは、丁寧で優しくルシファーに触れます。
でも、何だかやけに、くすぐったいのです。
それにルシファーは、大のくすぐったがりでした。
ルシファー「やめろ、コピン!ハーハッハッハ。くすぐったい、誰か、誰か助けてくれ!ハハッ、ハッハッ、ハハハハー!」
コピンは、微妙な表情で言いました。
コピン「こら、ルシファ〜様!そんなに転げ回った、薬が濡れませんですよ〜。子供じゃないんですから、少しは我慢。戦士たるもの、何事も我慢がかんじんで〜す!」
ルシファーは、のたうちまわりました。
 
包帯が取り替え終わると、コピンはお弁当を取り出しました。
コピン「ルシファ〜様!ルシファ〜様の、第一の僕であるこのコピンちゃん、真心を込めて、溢れる愛を詰め込んで、このお弁当を、作ったんですよ。どうかどうか、ご賞味くださいまし〜!」
それは、重箱に三段ある、おせち料理でした。
ルシファー「コピンよ…、今は正月ではない。なぜ、このようなものを、それもこんなに作るのだ…?」
コピンは、微妙な表情で言いました。
コピン「これはこのコピンちゃんの、ルシファ〜様への愛の結晶なので〜す。だから、全部たべてくださ〜い。因みにコピンちゃん、今お腹減ってません。だから、あ・な・た。きゃ〜、言っちゃった!全部、あなたが食べていいの。わっかりました〜?」
ルシファーは、コピンの料理が、大嫌いでした。
ルシファーはの好きな食べ物は、カツ丼やカレーライスでした。
でもコピンは、いつも薄味の、出汁を効かせた上品な料理ばかり、作ってくるのです。
ルシファーが箸をつけずにいると、コピンが箸で料理をつまんで、ルシファーの口に、突っ込み始めました。
コピン「ルシファ〜様、きっとどれも美味しそうで、選べないんですね。コピンちゃん、恥ずかしい!人が聞いてたら、どうするの?ラブラブだって、皆んなに知れ渡っちゃう…。美味しい?どんどん食べて。ほら、美味しい?」
ルシファーは抵抗しましたが、コピンはまるでわんこそばの様に、次から次へと、口に料理を運んできます。
ルシファー「モゴモゴ、ンガグッグ!」
コピンは、微妙な表情で言いました。
コピン「ルシファ〜様!口に食べ物が入ってるのに、喋ろうとするなんて、マナー違反ですますよ。あ、もしかして、コピンちゃんに、愛を告げようとしたのかしら?そんな、こんな時に…。じゃあ、お弁当の次は、コピンちゃんを、た・べ・て!いやん、楽しすぎる〜!」
ルシファーの腹は、もうはちきれそうでした。