ルシファーさまお受難 5

ルシファーが自室に戻ると、コピンが泣いていました。

コピン「えーん、えーん!ダメだぁー、ルシファ〜様ぁ!天国と戦争をしちゃあ…。」
ルシファーは、一瞬顔色を失いました。
そして、こういう考えが、頭の中を一瞬で駆け巡りました。
生かしては、おけない、と。
ルシファーは、表情には出さず、何気なく話しかけました。
ルシファー「コピン、今の話、聞いていたのか…?だとすれば、まずいことになる。勿論、貴様にとって…。」
コピンは、泣きながら言いました。
コピン「えーん、盗み聞きなんて、してなーい!夢の中で、聖霊様が最も信じている天国の守護者、コノン様が言ったんだー!ルシファーは、天国と戦争を起こし、その身を滅ぼそうしている。それを止められるのは、お前だけだってー!」
ルシファーの眉が、ピクリと動きました。
ルシファー「コノン、コノン・ケルビムか!いずれ、奴と私とは、決着をつける…。まあ、今はいい…。」
ルシファーは、不思議な表情で言いました。
ルシファー「それなら、すぐに天国に戻り、キリストとコノンに、こう伝えるがいい。これから、天から地から、そして海からも軍勢が、天国に押し寄せる。せいぜい、備えておくが良い、とな。」
コピンは、いよいよ激しく泣きました。
コピン「ルシファ〜様の、大馬鹿者ー!神様と戦ったって、勝てるはずないのにー!最後には、正しい者が必ず勝利するんだからー!」
ルシファーは、初めてコピンを、怒りました。
ルシファー「コピンよ!このルシファーを、侮ってもらっては困る。もし、よしんば貴様の言う通りだったとしても、戦士が戦場で倒れて、何の悔いが残ろうか!?貴様には、真の男の、男らしさというものが、まるでわかっていない!志に殉じて死ぬ。男にとって、これ以上名誉な事はないのだ!」
しかし、コピンもまた、初めて激しく怒りました。
コピン「ルシファー!何を愚かな事を、言っているのです?あなたが、天国を相手に戦いを起こせば、それはただの犬死に過ぎません。よく、考えてごらんなさい!あなたは、誰と戦うべきなのか?あなたは、経過はどうあれ、自分の意思で、天国を離れたのです。そこには、お父様もキリスト様も、一切関わってはいない。しかし、あなたを地獄から追い出したのは、誰ですか?バァル・ゼバブに、他なりません!それならば、あなたの敵は、バァル・ゼバブであり、それに従った悪魔たちではありませんか!あなたが、本当に一戦交えるべきなのは、地獄の軍団です。」
ルシファーは、突然の出来事に驚いて、ポカンとしてしまいました。
コピンは、もういつものコピンに、戻っていました。
コピン「ルシファ〜様の、わからずやー!鼻垂れ坊主ー!うんこたれー!ハゲチャビンー!」
ルシファーは、勢いに飲まれて、何となく頷いてしまいました。
ルシファー「うむ、そなたの言う通りだ…。確かに、私が恨んでいるのは、バァルや、私を裏切ったアスタロトに違いない。よし、わかった!奴等に、目に物をみせてやろう!」
コピンは泣きやんで、また微妙な表情で言いました。
コピン「ホント?コピンちゃんの心から湧き出る真実の愛が、ルシファ〜様の頑なな心を、ついにとろかしたのね!いや、でも、コピンちゃん、女にデレデレする人ってキライ!コピンちゃん、ドSな彼氏がい〜の。もっと、いじめて!」
ルシファーは、今の言葉を、もう後悔していました。
 
その日以来コピンは、毎日鳳の城を訪ねました。
そして、何かとルシファーの世話を焼き、一日が終わると、鳳の城でお土産を買って、天国に帰るのです。
コピンは、特に隠さなかったので、その事はすぐに皆の知るところに、なりました。
そして、コピンを通じて、天国の者達は鳳の城について、鳳の白の者達は、天国について、何となく知るようになっていっのです。
キリストは、勿論備えを怠りませんでした。
天神様もまた、着々と準備を進めていました。
しかし、時間が経つにつれ、両国の間に、何となく緊張感がなくなっていって、しまったのです。
戦争の可能性は、誰の頭の片隅にも、ありましたが、人々の間には、「そんな事、馬鹿らしいなあ…。」という空気が、拡まって行きました。
コピンはコピンで、毎日ルシファーといられて、幸せでした。
ある日、二人はルシファーの部屋で、映画を見ていました。
主人公の、レナートという少年が、ずっと年上の美しい女性、マレーナに想いを寄せる、という内容の映画です。
コピンは、微妙な表情で、言いました。
コピン「ルシファ〜様!この、レナートとマレーナの関係は、まるでコピンちゃんとルシファ〜様の、ようでございますことね!ルシファ〜様も、あんな風にコピンちゃんに、純情な想いを、募らせているのかと思うと、コピンちゃんの胸は、もうドッキドキ高鳴ってしまいますぅ〜。」
ルシファーは
疲れた表情で、ボソッと言いました。
ルシファー「コピン、全ては貴様の、勘違いに過ぎん…。貴様の頭には、何一つ、真実は刻まれていないのだ。」
コピンは、輝く笑顔で、宣言しました。
コピン「いいんですよ〜、ルシファ〜様!この世界は、思った事と感じた事、その二つだけで、出来てるんです。だから、コピンちゃんがそう感じて、そう思ったなら、それがコピンちゃんの真実なんです!!」
こうして、当面の危機は、回避されたのです。
 
テーマ曲 「酒よ」 吉幾三
 
 
 
 
 
 
 
 
 
おまけ
どうも、こんにちは。
オートマールスム(白)です。
好きなオーディオ・アンプは、SANSUIです。(スピーカーは、一応JBLです。好きなんですよ、JAZZ。)
この作品の元ネタは、佐藤竜雄監督の「機動戦艦ナデシコ」。
この作品は前作と違って、思いっきりエンターテイメントしようと思って、書きました。
人間の深みや、心の傷の様なものには、立ち入らず、アハハと笑って、スッキリするような。
ルシファーは、ちょっとかわいそうなのかも、しれませんけど。
思い入れのあるキャラなので、色々な面が出せるといいですね。
唯一の悔いは、一緒に鳳の城に行ったはずの、浦島太郎を出せなかった事です。
浦島太郎はルシファーを、自分の唯一の理解者だと、思ってしたっているので、絡ませたかったんですが、コピンと二人でかきまわされてしまうと、物語がまとまらないので…。
そんな感じです。
書いてても、楽しかったですよ。
どうでもいい事ですが、コピン、というのは、本人が勝手に周りにそう呼ばせているだけで、本名はコピエルです。
それでは、さようなら👋。