赤ん坊は一つの揺りかごに、並んですやすや寝ていました。
母親は、そのすぐ脇でうたたねしていました。
すると、そこに天使が降りてきました。
天使の名は、ケルビム。
天国の門を護る、天使です。
ケルビムは、母親に告げました。
ケルビム「この左側の赤ん坊、この者の魂は清らかである。故にこの者は、これから天国に於いて私と一つになる。」
ケルビムは、赤ん坊を抱きかかえました。
ケルビム「そしてこの者は、人間達の王になる。何も持たぬ故に、誰からも戴かれる王に…。」
すると母親は、泣き叫んで言いました。
母親「この子は、私の大事な子です。どうか私を憐れに思って、私達を引き裂かないで下さい!」
ケルビムは赤ん坊と共に、飛び去りました。
その時、右側の赤ん坊は、夢を見ていました。
赤ん坊の夢の中では、堕天使ルシファーが、何者をも顧みず、大空を自由に翔けていました。
赤ん坊は、ルシファーを真っ直ぐに見詰め、ルシファーもそれに気が付きました。
目が合うと、ルシファーはニヤリと笑い、呼びかけました。
ルシファー「小僧、世界が欲しいか?」
赤ん坊は、頷きました。
ルシファー「それならば貴様は、これより先、一度たりとも笑うな。そして、人間の女に心を許すな。それが守れるならば、貴様に人間共をくれてやる。貴様は、人間共の王になるだろう。誰からも恐れられ、何者にも従わぬ王に…。」
ルシファーは、天高く飛び去りました。
赤ん坊は目を覚まし、薄気味悪く笑いました。
それを見た母親は、背筋が寒くなって、呟きました。
母親「何て嫌な、笑い方だろう…。こんな子は、私の子供ではない。この子が、いなくなればよかったのに…。」
「N.D.(Mr.Yukiya#3 mix)」 mono
見よ!
今、悲しみが大地を覆い、苦しみが雲となって、空を曇らす。
星々は涙を流し、その雫は、人々の足元を濡らすだろう。
山々は、怒りの噴煙を上げ、人々はその光景に胸を熱くする。
神の大いなる意図は、人間には全く理解されずに、荒野に打ち棄てられている。
その時、あの忌まわしき堕天使は、地に降り立ち、呪われた言葉を吐く。
「神とは、所詮虚構である。誰も、その姿を見た者はいない。人間は力によって、自らの望む物を手に入れるのだ。力とは、私である。私は諸君らに、こう言おう。汝が欲せざる所を、自らに為せ、と。トリアーの描いた、アンチクライストの様に…。」
同じ日同じ時、ケルビムは、キリストに問う。
何者を天国は受け入れ、何者を天国は拒むのか、と。
キリストは、神の叡智を持ってこう答える。
「ケルビムよ、考え過ぎるな…。奥田民生さんは歌っている、何もないな、誰もいないな、と。大丈夫だ、お父様のやる事に間違いはない。聖霊もな。お前は自分が、正しいと思った通りにやるんだ。そうすれば、自然と上手くいく…。詩人は、本当にいい詩を書く。お前も、口ずさんでみなさい。ぼくらの自由を、ぼくらの青春を…。」
祝福されし英雄と、呪われし勇者、そして神意に導かれた幼子の、最後の物語が今、始まる。
「ファイアー・エムブレム〜火魔装ね黒騎士😸〜」 Akihabara Electric Circus