正華楼の赤いチャーシュー

「あらお帰りなさい、…私も少し前に家に着いたばかりなのよ。」

…良太は千葉県野田市中野台にある、自宅のアパートの扉をくぐった。

すると妻であるつぐみの笑顔が出迎えてくれた…、良太は革ジャンを羽織ったまま手を洗うと電気ケトルのスイッチを入れる。

「あら上着も脱がずにどうしたの、部屋が寒い…?ごめんなさい、…私今日残業でホントに今帰ったトコだから。」

…Konoのとフィルターとペーパーをカチャつかせながら、背中で良太は語った。

「つぐみコーヒー飲んだらラーメン食べに行かないか?…、おごるよ。」

つぐみは小躍りして喜ぶ…。

「ありがとう良太さん、…今日は何だか疲れちゃって。…そうしてもらえると助かるわ、でも割り勘でいいのよ。」

お湯が沸き…、ドリップを始める。

「いいんだ今日は、ぼくがおごるそう決めてるから…。」

 

良太の淹れたコーヒーを飲みながら、…二人は和室のちゃぶ台で向かい合って座ってゆる。

…「今日はずい分お客さんが多くてレジ打つのタイヘンだったわ、ウチのスーパーのお客さんお年寄りがほとんどだから。お月見で…、何かと物入りなのね。」

良太は、煙草に火を点けた…。

「ぼくんトコの施設でも、…新聞紙を丸めたお月見団子なんか飾ってるよ。…さすがに本物はね、のどに詰まらせるとまずいから。」

…つぐみもずっと母親の介護をしてゆたから、事情はよくわかる。

「気分だけでも…、だいぶ違うわ。私の母もあなたのそんなトコロを…。」

良太は一度キッチンに向かい、…フィルターに残ったコーヒーをマグ・カップに空けた。

…「いや、もうレク係は終わりなんだ。」

驚いて…、目を丸くするつぐみ。

「どうして…、あなたレク大好きだったじゃない?」

良太はコーヒーを一気飲みすると、…つぐみに告げた。

「さもうゆこう、明日も仕事だろ…?」

 

良太とつぐみは…、連れ立って「正華楼」とゆ〜近所のラーメン屋さんまで歩いて来た。

…「いらっしゃい、お好きなお席にどうぞ♪」

高校生ぐらいの可愛らしい女性が、…愛想よく出迎えてくれる。

席に着くと、良太はつぐみにゆった…。

「ぼくはもう決まってるから…、君はどうする?」

…つぐみは、一応メニューに目を通したが。

「私もいつものでいいわ、…すいませ〜ん。」

先ほどの店員さんが、メモを手にして席までやって来る…。

「私は五目かた焼きそば…、良太さんあなたは?」

…良太はかつてつぐみに見せたコトが無い、威厳を湛えてこうゆった。

「チャーシューメン大盛りで、…それから餃子一人前ね?」

つぐみはハンマーで後頭部を撃ちつけられたような気分だった、結婚してからあれだけお金に関して…。

自分に厳しくだからラーメンしか頼まなかった良太がチャーシューメンを頼むなんて!!…、(ちなみに餃子は二人で一人前を食べるのだ正華楼は盛りが大きいから)

…「良太さん今日はどうしたの、チャーシューメンだなんて急に?」

良太は煙草に火を点けると、…気持ちよさそうに吹かした。

「いやね、ぼく今度副主任に昇格するコトになったんだ…!だからそのお祝いさ…、手当ても少しだけど着くから。」

…つぐみの胸にある種の感動が訪れた、誰よりもがんばってるのに不遇だった良太さんが。

遂に社会的に評価される日が来たのだ、…それは妻として。

つぐみにとっても何よりのコトだったろう、思わずつぐみは…。

「店員さん…、生ビールを一つお願いします!…いいのよ良太さん、今日は私が出すわ。」

だから良太は、…ニコニコしながら二本目の煙草に火を点ける。

 

テーマ曲…

「スウィート・ソウル・レヴュー」 Pizzicato Five

https://youtu.be/8nv2wE1nu-E

 

 

こんにちは、森沢修蔵です…。

この作品はぼくが18歳の時に書いた…、「カンテラ」とゆ〜作品のリメイクなのでした。

…「カンテラ」とゆ〜作品はどんな内容かとゆえば、このブログで少し触れた「OVERLOAD」のゼクとハウシンカが。

山小屋の中で二人っ切りになり、…ひたすら自分の得物である日本刀を研いでいるゼクと。

それを眺めてゆるハウシンカが、終始無言で一晩を明かすって感じなんですね…。

これ手前味噌ですが…、アイディアとしては非常に面白くて意欲的な作品なんですが。

…当然18歳の若造にそんなカッコいいBluesが奏でられるハズもなく、20年以上過ぎてしまいました。

この作品のテーマは、…ゆわば「陽気なBlues」。

ぼくはカルチャーの原点は、やはり1900年ぐらいから始まったBluesにあると想うのですが…。

近年この「Blues」とオーヴァー・グラウンドなポップ・カルチャーは完全に乖離してる…、と考えたワケですよ。

…「Blues」の精神とはやはり「お仕事ツラいなぁ」であり、それは旧約聖書の「創世記」で神さまが罰として「働く労苦を加えた」と記述されているコトからもやはり人間の一大テーマなんですね。

ぼくはこの「Blues」を明るくしたかった、…そして「お疲れさま」の精神に鍛え直そうと想ったのです。

それが「Blues」がも〜一度、オーヴァー・グラウンドのポップ・カルチャーに影響力を持つ…。

たった一つの道かなぁ…、な〜んて酔った勢いで大きな口を叩いてみましたねだから。