女性にはご用心!?

…冨坂航一(とみさか こういち)は小学6年生、両親と茨城まで二泊三日で海に遊びに来た。

「そら、…も〜海が見えてくるぞぅ」

お父さんがゆ〜と、航一はイヤフォンを外し車の窓を開ける…。

「潮の香りだ…、いいね」

…車の中は潮の香りでいっぱいになる、お母さんはのびをすると。

「そ〜よこれこれ、…晴れてよかったわね」

その時、航一のおなかがグゥ〜と鳴った…。

「おなかすいたか…、そこに喫茶店があるからよろうただその前に」

…お父さんは、車をガソリン・スタンドに停めた。

「ちょっとガソリン入れてくから、…お前先に席取っとけ」

航一は車を降りると歩き出した、茨城の海だから観光名所になるよ〜な美しさはない…。

でも航一は充分感動してゆる…、何せ年に一度の家族旅行だ。

…喫茶店「Parker」の扉を、力を入れてグイッと引く。

カランカランとベルが鳴り、…出て来たのは自分と同い年ぐらいの女の子だ。

「いらっしゃい、あらウチのお店は子供さんお一人ではちょっと…」

航一は「可愛い💖」と想った…、栗色の三つ編みつぶらな瞳。

…それに小ぶりな唇に、とがったあご。

「キミだって子供じゃない、…お父さん達はあとから来ます」

女の子はニッコリ笑うと、「私はここん家の娘なのそれに中学生」とゆい店の中に案内してくれた…。

航一はテーブルに着くと…、再びイヤフォンを耳に挿れる。

…「すご〜い、これってカセット・テープ?」

彼女がテーブルの上に置いてある、…ウォーク・マンを覗き込む時その香りが香った。

「お父さんからもらったんだ…、中のカセット・テープもお父さんが造ってくれるの」

航一がイヤフォンを外すと、彼女はゆ〜…。

「ちょっと、…聞かせてみてもらってゆい?」

…航一は「うぅ」と想った、もしかしたら声に出てゆたかもわからない。

航一からイヤフォンを受け取ると…、女の子はハシャいで聴き始める。

「すご〜い、何かシューシューゆってる…」

そのウチに別なお客さんが入って来て、…彼女は挨拶するとそちらにゆってしまった。

 

…宿で一晩過ごし、家族で海まで遊びに来る。

砂浜にパラソルを立てて…、お母さんはそこで休んでゆた。

航一もさすがにも〜6年生だから、お父さんに付きっきりってワケでもない…。

浮き輪に掴まって、…波の上をぷかぷかやってゆる。

…「お〜い、あんまり沖までゆくなよ」

そ〜してお昼に近くなった頃…、航一はお父さんとお母さんのトコロまで戻った。

「航一一旦シャワー浴びろ、お昼は市場まで車出して海鮮丼だぞ…」

海鮮丼は今回の家族旅行の目玉である、…航一も是が非でも食べておきたかったが。

…「ぼく、昨日の喫茶店がい〜な」

しかしお父さんとお母さんは半ば海鮮丼目当てでここまで来てるのだ…、それを折れろとゆ〜のは無理な話である。

家族で話し合った結果、もし喫茶店「Parker」のマスターがお父さんとお母さんが戻って来るまで航一を預かってくれるのならとなった…。

航一とお父さんはシャワーを浴び、…家族は車で喫茶店「Parker」へ向かう。

…お父さんがマスターに事情を話すと、マスターはくったくなく快諾してくれた。

「お前何を考えてるのか知らないが…、俺たちは急がないからな。泣いても知らないぞ…!」

お父さんはそ〜ゆうと、…お母さんを乗せて車で走り去る。

…航一は、スパゲッティ・ミートソースとアイス・コーヒーを頼むとまたウォークマンをナップ・ザックから取り出した。

 

スパゲッティ・ミートソースを運んで来た女の子は…、お皿をテーブルに置くと小声でゆ〜。

「ね、私に会いに来てくれたの…?」

航一の頭の中は爆発しそうだったが、…何とか顔を真っ赤にしながらも。

…「そ〜だよ」、と返事をした。

彼女は航一と視線を合わせず…、うつむきながら。

「2時になったらお昼休みだから、その時話すね…。大丈夫、…市場まで結構あるから。…そんなに早く、帰って来られないモノ」

航一はスパゲッティ・ミートソースを食べてしまうと…、アイス・コーヒーをチビチビ飲みながら音楽を聴いて過ごした。

お金の心配は無い、…お父さんは先に払ってゆってくれたから。

…女の子は、忙しそうに店内を歩き回ってゆる。

「なかなか忙しいんだな」…、航一は想う。

店内にお客さんが航一一人になるコトはかった、航一と同じ観光客っぽい家族や地元の人っぽいお客さんが…。

割と入れ替わり立ち替わりやって来る、…「彼女の話って何だろう?」

…航一はぼんやり考えてみるが、想像もつかないのだった。

やがて2時になり…、お店は「準備中」となる。

マスターはあと片づけを簡単に終えると、奥へ引っ込んでしまう…。

女の子はアイス・コーヒーを二つ持って来て、…テーブルに乗せた。

…「これはサービス」

航一は…、「こ〜ゆうトコが可愛いんだよな」と想いながら受け取る。

女の子は相変わらず航一と視線を合わせない、そしてこ〜口火を切った…。

「私のお父さん、…私を愛してないの。…だから私を連れて逃げて、いいでしょ?」

航一は…、たまげて椅子から転げ落ちそうになる。

…しかしそれは間違いの元なのだが、こ〜考えた。

「ここで逃げたら、…男が廃る!!」

 

翌朝4:30に宿を抜け出し、女の子が指定した通り最寄りの駅に向かった…。

航一は方向感覚は鋭かったし…、遠かったがほとんど一本道だったから迷うコトはない。

…1時間かけて辿り着いた駅には、女の子が既に来てゆた。

彼女は自転車に鍵をかけると、…航一の方に振り向く。

「取り敢えず、終点までゆきましょ…」

航一は旅行のお土産を買ったりする為のお小遣いを1000円持ってゆたから…、それで切符を買った。

…始発の電車に乗り、二人は並んで腰かける。

航一の頭の中を、…こんな考えがグルグル巡る。

「ぼくは、これから働かなくちゃいけない…。彼女を養ってゆく為に…、でも子供でも出来るお仕事って何があるだろう?…何でもゆい、取り敢えずお金になれば。選んでなんていられない、…どんなお仕事でもがんばらなくちゃ!」

 

テーマ…

「This cold」 John Frusciante

https://youtu.be/Gs6PPYKLsU8

 

終点まで着くと、誰にでも予想がつく通り警察が待ってゆて…。

二人は無事保護された…、パトカーの中で警察官はそれとなく「どちらがゆい出しっぺなのか?」聞いた。

…その時航一は、特に深く考えずに「だって彼女可愛い💖から」と答えてしまう。

結果、…航一はありとあらゆる関係する大人から盛大に叱られるコトになった。

だが不思議と後悔はない、「まぁゆいってコトよ♪」そんな感じである…。

家族は海から帰り…、やがて夏休みも終わり。

…二学期が始まって少しした頃、お母さんが。

「航一、…あなたに手紙よ。あら、差出人が書いてないわね…」

航一が開くと…、そこにはこんな書き出しがある。

…「全部私の、お父さんへのいたずらだったのそれなのにだから」