…アーシャは、サイクロプスの引く車に乗せられ。そのまま、…出迎えの僧と共に「竜の角」まで連れて来られました。
「さっさと、降りろ…!!」
出迎えの僧は…、アーシャにムチをピシャリとくれます。
…「失礼致しました、申し訳ありません」
本当なら、…アーシャはこんなユルいムチはいくらでも防げるのでした。しかし、今はソーナの代役…。悔しさをこらえ…、黙ってムチを受けたのです。…出迎えの僧の後ろについて登ってゆくと、やがて「竜の角」の大広間に出ました。
「ボヘムさま、…ただ今無事ソーナさまをお連れしました」
「おぉ、我が花嫁ソーナ…!遂に…、私の愛を受け入れる決心をしてくれたのだね」
…ボヘムと呼ばれる闇に堕落した僧は、何だかなよなよして少しもアーシャのタイプではありません。
「よしソーナ、…すぐに酒宴の準備をさせよ〜!!さ諸君座に着いてくれたまえ、祝杯だ…!」
アーシャは…、ボヘムに近づくとそっと耳打ちします。
…「あなた、早く二人切りになりたいの」
それを聞いたボヘムは、…好色にニヤリとしました。
「ソーナ、私の愛がそんなに待ち切れんか…?ゆいだろう…、たっぷり可愛がってやる。…諸君酒宴はまた後日とする、取り込み事ができたのでな」
ボヘムに仕える、…僧やモンスター達はみな不満そ〜でしたが。逆らうコトは出来ず、すごすご引きあげてゆきます…。
「ではアーシャ…、寝室へ参るとしよ〜。…その前に、誓いのキスを済ませんとな。これでお前は、…飽きるまで私のモノだ」
ボヘムはアーシャに近寄り、そのヴェールをあげよ〜とします…。
ガツン…、その時でした!!
…アーシャは、ボヘムに膝蹴りを入れます。
「グェっ、…な、何をする」
うずくまるボヘムの、胸ぐらを掴んだアーシャは…。そのまま…、豪快に一本背負いで投げ飛ばしました!
…ここで、少々解説させていただきます。何故アーシャは、…あんな言葉を口にしてまで。ボヘムに、酒宴を開かせまいとしたのでしょうか…?それは崇高にして勇気みなぎる…、アーシャらしい考えがあってのコトなのでした。…酒宴を開けば、ボヘムは必ずお酒に酔うでしょう。お酒に酔わせてしまえば、…アーシャが勝つのは実にたやすくなるハズ。しかし、アーシャは伝説の勇者として尊くて清い神さまに…。身も心も捧げてゆましたから…、それは卑怯者のするコトだと。…あえて、さけたのです。
「貴様何者だ、…さてはソーナではないな!!」
花かんむりとブーケを投げ捨て、スカートとヴェールを引きちぎったアーシャは…。「ぴゅ〜い」と口笛を吹き…、ぺぺに合図を送りました(ぺぺはどんなに離れてゆても心でアーシャの口笛を聞き取るのです)。
…そして、「カリフの剣」を引き抜き魔法の盾を構えて大きな声で名乗りました。
「私は、エスタハーンのアーシャ…!あなたの悪行を、…私は見逃してはおけません!!」
ボヘムは、よろめきながら立ち上がると…。優男だった表情が…、敵意と反感に醜くゆがみます。
…「おのれ〜、貴様が伝説の勇者と呼ばれるアーシャか!私の手で血祭りにあげてくれる、…そ〜すればあのザハスに代わって。聖なる山アルクロドは、私に支配されるのだ〜…!!」
ボヘムが呪文を唱えると…、大広間に魔法陣が浮かび上がりました。…そこから現れたのは、何とあのブラック・ドラゴンです!ブラック・ドラゴンは、…古に伝わる勇者ブックに倒されたドラゴンよりは、一回り小ぶりですが。それでも…、充分に危険な敵に違いありません。
「ボヘム、あなたがどんなモンスターを喚んでも…。私は背中を見せたりはしません、…さぁかかってらっしゃい!!」