アーシャ南の大陸に舞う その16

…アーシャがぺぺと控え室で待っていると、扉が開き。小間使いの僧が、…お辞儀をして入って来ました。「僧正さまのご準備が整ったのかな?」、と想うアーシャ…。

「お茶のおかわりは…、いかがですか?」

…アーシャは、手をふりふり遠慮をします。

「大丈夫です、…それより僧正さまはいかがされました?」

小間使いの僧は、丁寧な口調で受け応えしました…。

「も〜少々お待ち下さい…、じきご修行も終わりますから」

…それだけ伝えると、頭を下げて退出します。

「せっかくだから、…ゆっくりさせてもらおうかぺぺ?これを逃したら、次はいつになるかわからないし…」

アーシャがうとうとし始めた頃…、再び控え室の扉が開きました。

…「タイヘンお待たせ致しました、僧正さまも是非早くお会いしたいとの仰せです」

小間使いの僧に案内され、…渡り廊下を通って本堂に向かうアーシャとぺぺ。本堂の神さまの像の前は、アーシャとぺぺをいまかいまかと待つ僧達で溢れ返ってゆます…。

「お待ちしておりましたアーシャさま…、私が僧正のネルムです。…ま、ま、こちらにお座り下さい」

…ネルムは、藍色の鮮やかな僧衣を羽織ってゆました。アーシャとぺぺは、…促されるまま座ぶとんの上に腰を下ろします。

「不肖この私、僧正などとよばれておりますが…。まぁ大した者ではありません…、ごくつろぎ下さいアーシャさま。…今、お茶を運ばせますから」

アーシャが「せっかくですが」と口にしかけると、…ネルムはそれを手で制し。

「ご遠慮召されるなアーシャさま、伝説の勇者であらせられる以上…。本来なら盛大におもてなしたいのですが…、あいにくとここはお寺ですからな。…それは、大祭の時に」

すぐアーシャとぺぺの前に、…それぞれお茶が運ばれて来ました。

「その代わりとゆってはなんですが、ウチのお茶はちょっとこの辺では味わえませんぞ…。何しろ一大産地である…、ヌーテノア地方から直に取り寄せてますから」

…ほっこりするアーシャ、それはお茶が美味しかったからだけではなく。

ネルムが、…気性の難しい人では無かったからでもあります。

「ど〜ですかアーシャさま、南の大陸は…。まぁ中央大陸とは何もかも違いますから…、勝手の違いに戸惑われてなどおりませんか?」

アーシャはお茶を飲み干し、お茶碗を置きました…。

「とんでもありません、…南の大陸は食べ物や飲み物が美味しくて。…どれも、初めて味わうとは想えません」

ネルムは…、ハッハッハと快活に笑います。

「水がキレイなのです、この大陸は…。そして量が豊富でもある、…人々の暮らし振りは慎ましいモノですが。…とはゆえ、それが何よりでしょう?それこそ…、まさしく神さまの恩寵ですからな」

「そろそろ」、と想い本題を切り出すアーシャ…。

「ところでネルムさま、…この聖なる山アルクロドに兆す闇の気配について」

…その時です、顔を怒りで真っ赤に染めた僧が。一人…、本堂に怒鳴り込んで来ました。

「僧正さま、わしは断じて認めませんぞ…!!伝説の勇者などと呼ばれておっても、…所詮は女性に過ぎませぬ。…我らが聖なる山アルクロドに、決して入れてはなりますまい!」

アーシャは…、あまりに突然だったのでぽかんと呆気に取られてしまいます。

「ムムッ、よくよく見れば…。お主こそ、…伝説の勇者アーシャとやらではないか!!…ならば、手間が省けるとゆ〜モノだ。聖なる山アルクロドに…、女性が登るなど言語道断!さぁさ、早急に荷物をまとめられよ…!!」

ネルムは、…怒れる僧に顔色一つ変えません。

…「ちょうどゆい、ダンツお主にも話さなければな。座りなさい…、お主にアーシャさまとぺぺさまのご案内を引き受けて欲しいのだ」

「えっそれはちょっと!」と、アーシャは想いました…。