西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その7

猪八戒は九歯のまぐわ片手に…、とぼとぼ山道を登ります。すると、しげみにびわがなってゆました…。

「へっ、…こりゃゆいやな。…弟分のゆった通りだ、きっとオイラが。兄貴にいじめられてばかりゆるから…、仏さまもかわいそうにお想いになって巡り合わせて下さったに違いない」

びわの実を、両手でもいで夢中で食べる猪八戒…。

「しゃくしゃく、…美味いなぁ。…全く美味い、オイラ食べられるモノなら何でも大好きさ!!」

びわの実をつぎつぎにもいでは食べしてると…、いつの間にか鎧兜に身を包んだ。妖怪達に、取り囲まれてゆるのに猪八戒は気がつきます…。

「おぅ、…テメェ。…一体全体何者だ、さてはあの三蔵法師とかゆ〜坊主の。お供の一人じゃ…、あるめぇな!」

猪八戒にも、すぐにピンと来ました…。

(ははぁ〜ん、…こいつらが兄貴の見て来いっちゅうた連中だな?)

…しかし困ってしまいます、何故なら猪八戒の手にはまだ。食べかけのびわの実がのこってるのですから。

「何ゆってんだい…、オイラこ〜してここでびわ食ってるだけさね。…お前さん達こそ一体何者だい、さては金角・銀角両大王の使いっ走りだな?」

見ると妖怪達は10体程…、そのウチの一体が猪八戒に槍を突きつけました。

「それは、我らの任務にとって…、最重要機密、それを知られたからには、ゆかしては帰せんぞ…!!」

ちょ〜ど手に残ったびわを食べ終わると、…種をブッと吐き。…槍を手にした妖怪の、ひたいにぶつけてやる猪八戒

「ぶ、無礼者め…、ただでは済まさ」

そこに、九歯のまぐわをぶる〜んと一振りする猪八戒…。たちまち、…妖怪の槍はへし折られてしまいます。

…「ゆいか、聞いて驚け!!オイラはな…、彼方の西天まで。ありがた〜いお経をいただく為に、遥かな旅を続ける…。かのえら〜い三蔵法師お師匠さまの二番弟子、…猪八戒その猪よ!」

…妖怪達は大慌てで、中には腰を抜かしてるのもいました。

「え〜い…、者共うろたえるな!!偵察の任務のハズが、思わぬ大モノを捉えたわい…。こいつを引っ捕らえよ、…そ〜すれば褒美は想いのままぞ!」

…妖怪達は手を出しあぐねてゆましたが、少し離れたトコロにいる3体が。弓を引き絞って…、猪八戒に矢を射かけます。

「おいおい、矢ってゆっても…。そんなへろへろなんじゃ、…オイラには通用しないゼ」

猪八戒は、九歯のまぐわをぐるぐる回し。放たれた矢を、打ち落としました。

「かかって来ないのかい…、それならオイラの方からゆくぞ!!」

九歯のまぐわを大きく一振りする猪八戒、するとも〜妖怪達の3体が…。続いても〜一振りすると、…また3体がバタバタ倒されてしまいます。

「畜生…、なんてばか力だ!撤退々々、虎徹将軍にご報告にあがる…」

残りの妖怪達は、…ほうほうの体で下りてきた山道を引き返して行きました。

…「口ばっかりで、何ちゅうコトなかったな。これなら…、兄貴の方がよっぽどおっかねぇや。オイラ、ビクビクして損した…。さて、…残りのびわでも食うか」

猪八戒は、やっつけられてひっくり返ってる。妖怪達が目に入り…、ある考えが湧きます。

「待てよ、いつまでもここでもたもたしてると…。兄貴に、…如意棒で引っ叩かれかねないな。」

…倒れてる妖怪の中で、イチバン体のおおきいのから。鎧と兜を脱がせると…、自分で着てみる猪八戒

「よしよし、これなゆいだろう…。こいつで一つ、…妖怪の陣地に忍び込んでやれ。…それなら、兄貴の癇癪玉も治るだろ〜」

猪八戒は…、おおきなおなかが鎧に収まらないので。そのまま、出しっ放しにしておきました…。

「ホントは、…オイラのおなかまだいっぱいじゃないんだ。…愛しいびわちゃん、帰りに必ず食べてあげるからね」

はみ出したおなかのまま…、九歯のまぐわを手に取ると。猪八戒は、妖怪達の集う陣地目指して…。再び、…山を登り始めます。