芭蕉扇を振り下ろす…、馬の頭をした妖怪。炎の渦が巻き起こり、真っ直ぐに孫悟空と沙悟浄に向かって来ます…。
「危ない兄さん、…ゆくよ水とんの術!!」
…降妖杖で、地面を突く沙悟浄。するとゴボッと水が溢れ…、孫悟空と沙悟浄の周りを水の壁が取り囲みました。しかし、孫悟空の三本の頭の毛までは間に合いません…。炎にあおられ、…焼けてちりぢりになってしまいます。
…「ど〜した、いつまで我慢できるかな?」
馬の頭をした妖怪は…、何度も芭蕉扇をあおぎました。だんだん辺り一面火の海となり、妖怪もだいぶ巻き込まれています…。
「兄さん、…この場はぼくの術で何とかなる。…でもあの芭蕉扇は、さすがに天の宝物だ。火を押し返すのは…、ちょっと無理かな」
地面を突いては、水を湧かせる沙悟浄…。
「残ってる妖怪は、…あと10体ぐらいか。…芭蕉扇さえ何とか出来れば、押し切れるんだが。ん…、そ〜だ!」
孫悟空は如意棒を構えると、「大きくなれっ」と唱えました…。みるみる大きくなる如意棒、…「もっともっとだぞっ」と孫悟空が何度も唱えると。…そのウチに、孫悟空の100倍の大きさになってしまいます。
「な、何ぃ…、あれは一体何なんだ!!?」
「よっこら、よ〜っい…!」
トンデモ大きい如意棒を倒し、…そのまま馬の頭をした妖怪を押し潰す孫悟空。
…「あんなモノを振り回されたら、我々はすぐ全滅だぞ!!早く逃げるんだ…、バカ芭蕉扇を忘れるな。あれが無かったら、金角銀角両大王さまに俺たちは殺されてしまうっ…!」
残った妖怪達は、…芭蕉扇を抱え。…火を避けながら、懸命に逃走しました。しかし…、妖怪の陣地は。沙悟浄の水とんの術で、徐々に鎮火してゆきます…。
「ちっ、…ツまらねぇ。…何体か、逃しちまったな。弟悪いが…、お師匠さまのトコまでは歩ってくれ。おれさまは、ちょいと筋斗雲で天まで一っ飛びして…。やっつけた妖怪共を、…お縄にしてもらうよ〜要請してくっから」
…あッとゆ〜間に、筋斗雲で飛び去る孫悟空。それからしばらくして…、沙悟浄は三蔵法師を守る猪八戒の陣地まで戻りました。
「沙悟浄、妖怪達との戦いタイヘンご苦労だったね…。しかし私には、…一つだけ気になるコトがある。…あなたと孫悟空は、卑怯な真似をしたりしなかったろ〜ね?妖怪を戦いで降すのも…、み仏に仕える立派な修行のウチなのだから」
「はい、…ぼくは全くしてゆません。…でも兄さんは、不意打ちで妖怪の将軍を引っ叩きました」
やがて…、戻って来る孫悟空。三蔵法師は、沙悟浄から聞いたお話を問いただしました…。
「お師匠さま、…お言葉を返すよ〜で申し訳ありません。…しかし、けんかのコトならばおれさまの領分。不意打ちを卑怯だ…、とお師匠さまは仰いますが。いざ戦いの場に臨んでは、武人は常に気を抜いてはゆけません…。ましてや命を賭けてゆるのですから、…不意打ち程度仕かけても仕かけられても理の当然なのです。…それをダメだなどと仰られては、おれさまままごとでもしてるしかなくなってしまいます」
自らの戦いについての哲学を述べる…、孫悟空。
「悟空や、私は戦いについてはよくわからない…。しかしあなたの語る考えには、…うしろめたいトコロはないよ〜だ。…それならば、私は、あなたの言葉を信じるとしよ〜」