…「おかしいな、戻って来ねぇや」
孫悟空は、…イライラしたよ〜に地面を如意棒でド突きます。
「偵察の途中で、一人でお斎にでも預かってるんじゃないの…?」
九歯のまぐわを一応手にしてはゆるモノの…、座り込んですっかりリラックス・ムードの猪八戒。
…「バカゆってんなよ、お前じゃないんだから。もしかしたら、…先まで見にゆき過ぎてるのかも知れん。弟、お前ちょっと呼び戻して来い」
「イテテ…、ヒドいや兄貴は。…わかった、わかったからゆきますよ」
猪八戒は、…自分のおしりをなでなで出発しました。
「おい駆け足だぞ、悟浄に追いつかなくちゃ意味ないんだからな…!!」
慌てて走り出す猪八戒…、しかしそれも孫悟空が見えてる間だけのコトです。
…「全く兄貴と来たら、人遣いが荒いよ。偵察なんて自分で筋斗雲に乗って、…さっさと戻って来りゃい〜んだ。あ〜はらが減ったなぁ、おっあれは何だ…?」
ブツブツひとり言を口にしながら…、山道を登る猪八戒の目に。…「峠のわんこそば屋」とゆ〜看板を掲げた、小屋が入ります。
「わんこそばか美味そ〜だな、…ぶひぶひ。でもお金持ってるのは沙悟浄だし、それだって大した額じゃないから…」
そこに…、かっぽう着に身を包んだじょうろが小屋から出て来ました。
…「お兄さん、とってもタイミングがバッチ・グ〜!今ウチの"峠のわんこそば屋は、…創業記念で。な、な、なんと、何杯食べても無料の大々々サービス…!!」
猪八戒は…、だらしなく笑いました。
…「そ〜か、弟分のヤツここに立ち寄ってたから遅くなったんだ。よし、…オイラも入ってみよ〜。何兄貴だってあとで教えてやれば、喜んでやって来るだろ〜よ…」
「ほいっ…、お客さま一名さまご案な〜い!」
…じょうろに誘われるまま、猪八戒は"峠のわんこそば屋ののれんをくぐり。席に着いて、…わんこそばを待ちました。
「お客さん、ほいっわんこそば一丁…!!」
最初の一杯を…、するするすする猪八戒。
…「なかなかゆいお味だね、こんな山の中に出店してるのはもったいない」
じょうろは、…すかさず次の一杯を猪八戒のお椀に盛ります。
「ウチは、支店なんですよ…。本店は唐の都にあるんです…、ほいっ一丁!」
…何ともゆえず、満足そ〜な猪八戒。
「こっちは、…精進中でね。なかなか満足に食事にありつけないから、たまにはしっかり食べさせてもらえるのはありがたいよ…」
じょうろは…、次々と猪八戒のお椀にわんこそばをブッ込みました。…始めこそ上機嫌な猪八戒でしたが、次第に雲ゆきが怪しくなって来ます。
「おネーちゃん、…も〜86杯目だよ。そろそろ、ゆいんじゃないの…?」
しかし…、じょうろはわんこそばをよそうのを止めません。
…「ほいっお客さん、ほいっ一丁ほいっ一丁!!」
さすがの猪八戒でも、…おなかはも〜パンパンでした。
「オイラのお袋は、ゆったんだ…。出されたモノは全部平らげなさい…、それが作って下さった方への礼儀よと」