西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その19

…「孫悟空供、我々に降参しろっ!!さもないと、…三蔵法師を今すぐ殺すぞ」

七星宝剣を抜いて、孫悟空達を大喝する金角大王…。

「ちっ…、やっぱりな。…これじゃ、うかつに手は出せねぇ」

孫悟空は、…如意棒を構えたまま様子をうかがいます。

「兄貴、オイラい〜案が浮かんだゼ。そらっ、こっちへ来い…!」

近くにゆた…、じょうろを捕まえる猪八戒

…「そっちこそい〜のか、これで条件は対等。人質交換だ、…早くお師匠さまを解放しないと。この妖女を、ヒドい目に遭わすぞ…!!」

化け術は得意ですが…、じょうろには力はあまりありません。

…「ふっふっふ、それがど〜した?じょうろは、…我が妹に間違いはない。しかし、三蔵法師の肉を喰らわば…。我が一族はことごとく栄える…、たかが妖女一体の命と引き換えに出来よ〜か!」

…じょうろにとって、この言葉は少なからずショックでした。

「兄さん、…銀角大王はあ〜ゆってるけれど。じょうろさんを人質に取ってれば、妖怪もカンタンには攻めて来れないみたいだから…。一度ここは撤退しよ〜…、そして改めて"何か"策を考えよ〜よ」

孫悟空に、小さな声で提案する沙悟浄

「わかった、…現在はそれが得策だ。この場に居座っても、決着はつかんだろ〜…。おいっ…、お前ら。…おれさまこの場は、お前らを見逃してやるコトに決めたぞ!!だからもしおれさま達を追って来れば、…じょうろは返してやらんからそ〜想ってろ」

孫悟空達は、金角・銀角両大王率いる妖怪達に背中を見せず…。慎重にしかも時間はかけずに後退し…、そのまま蓮華洞を脱出します。

…「筋斗雲、やって来い!」

空の彼方から、…孫悟空の足許に筋斗雲はすっ飛んで来ました。

「弟達よ、早く乗れ…!!バカっ…、も〜じょうろなんてど〜でもゆいんだ」

…こ〜して孫悟空は、三蔵法師こそ助け出せませんでしたが。猪八戒沙悟浄の救出に成功し、…三匹そろって戦いの準備を始めます。一方で残されたじょうろは、少々呆気に取られてゆました…。

「あのお猿さん達…、あたしを特に傷つけなかった」

…それにもまた、ショックを受けたじょうろです。

「ど〜してなの、…あたしがあなた達をだまして。それで、三蔵法師まで捕まっちゃったのに…」

「おぉじょうろさま…、ご無事でしたかおいたわしいコトです。…金角・銀角両大王さまも、それはそれはご心配なさってますよ」

じょうろは、…妖怪達に護られて蓮華洞に戻りました。

「あたし戻りました、お兄さま…」

金角・銀角大王に…、ひざまずくじょうろ。

…「おぉそ〜か、よかったな」

金角・銀角両大王は、…それだけ口にすると。孫悟空達を捕らえる為の、作戦会議を続けます…。

「あぁ…、お兄さまにとって。…あたしは、ど〜でもい〜コトなんだわ」

じょうろは、…何となく気がついてしまったのでした。金角・銀角両大王が求めているのは、あくまで力であり…。手下の妖怪達は…、その力を恐れてゆるから従っている。…それは、じょうろがこの。蓮華洞に抱いてゆた幻想を、…粉々に打ち砕いてしまいます。「みんな仲良し」、じょうろはそ〜想ってゆたのです…。だから…、三蔵法師達を捕らえるのにも進んで協力したのでした。…だから、今のじょうろはモチベーションをすっかり失ってしまったのです。