…蓮華洞を越え、平頂山を下る三蔵法師一行の前に。雲に乗って、…太上李老君がやって来ました。
「じ〜さま、ど〜した…?金角・銀角両大王の盗んだ天の宝物は…、天の義勇兵に持たせてやったろ。…まだ、"何か"用があるのか」
雲に乗った太上李老君のうしろから、…二人の童子が姿を現します。
「わしはな、お主らに謝らなけれならんコトがある…。これお前達…、取り敢えず謝っときなさい」
…二人の童子は、深々と頭を下げ謝りました。
「三蔵法師さま、…タ〜イヘンご迷惑をおかけして申し訳ありませんでしたぁ!!」
沙悟浄には、ピンと来たよ〜です…。
「ぼく…、わかりました。…その二人が、金角・銀角両大王だったってゆ〜んでしょ?」
それを聞くと、…孫悟空と猪八戒は荷物をその場に投げ捨て。慌てて、それぞれの武器を構えました…。
「いやいや違うんじゃよ…、よく聞いておくれ。…わしは、南海に住まわれる観音菩薩さまに頼まれておったんじゃ。"あなたのその二人の童子を、…私に少し貸して下さい。それで私は、三蔵法師達に果たして…。遥か西天まで…、ありがたいお経を受け取りにやって来る。…固い決意があるのか、試みますから"とな」
「何だと、…このじじい!そんなの、さぎじゃねぇ〜か…!!」
太上李老君を引っ叩こ〜と…、孫悟空は筋斗雲を呼びますが。…あいにく、やっては来ません。
「ふむふむ、…ど〜やらお主より。筋斗雲の方が、礼儀をわきまえておるよ〜じゃの…。では…、三蔵法師殿とんだご苦労を。…まことに申し訳なかった、西天までこれからも。苦しい旅が続くであろ〜から、…くれぐれもお体を大切になさられるよ〜」
太上李老君のお言葉を、竜馬から飛び降り…。地面に平伏して…、拝聴する三蔵法師だったのです。
…一方、こちらは天の玉帝の前に立つじょうろ。
「ではじょうろよ、…あなたへの判決をもうしわたす」
じょうろは、目を伏せました…。
「はい玉帝陛下…、何なりとお申しつけ下さい」
…厳かな口調で、語り出す天の玉帝。
「あなたはこれまで、…金角・銀角両大王の命に従い。幾人をもだましたぶらかして来た、そして何より…。今回三蔵法師殿、猪八戒、沙悟浄を…、生命の危機にさらせたコト全くもって許し難いよって」
…天の玉帝は、表情を緩めます。
「じょうろさん、…あなたには。この天の宮殿に住まう、西王母さまの召使いの役を課したいと想うがど〜か…?」
驚いて…、面をあげるじょうろ。
…「いや、あなたはまだ許されたワケではない。勘違いがあってはいけないからゆっておくが、…もし西王母さまのみ元で。働きが悪いよ〜なら、改めて牢に接がれるコトとなる…。だから西王母さまのゆいつけに従い…、一生懸命働きなさい。…そしたら、いずれはあなた許されてこの。天の宮殿に、…住まう者となるだろ〜」
じょうろは、床に突っ伏しました…。
「あなたは…、確かに悪さをして生きて来たよ〜だが。…見なさい、この三蔵法師殿からの陳情書。こんなにも、…長〜いのだよ」
天の玉帝の前に置かれた、三蔵法師から宛てられたじょうろへの陳情書は…。巻き物三巻分…、まるますあったのです。
…「あの三蔵法師殿から、ここまで頭を下げられては。それに私自身も、…この何日かあなたと話してみて。ど〜やら、本当に改心したのだろ〜とそんな気がしてゆる…。私からの裁きは以上だ…、下がりなさい」
…立ちあがり退出しよ〜とするじょうろの大きな瞳には、これまた大粒の涙が光ってゆました。
おわり
泣きはらしたじょうろの大きな瞳のテーマ…
「とっておきタイム」 Gentle Forest Jazz Band
おまけ
こんにちは、…すすぎ雅之です。
「西遊記〜一人と三匹の愉快な旅」も、これにて完結です…。
ぼくは現代に発表されてゆる作品の…、多くの主人公像に不満があるんですね。
…ぼくは英雄を書きたい、やっぱりみなさんがその生きざまを見た時に。
「すごいな立派だな」、…と想って下さるよ〜な。
それで、「アーシャ南の大陸に舞う」のアーシャちゃんも…。
「西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜」の孫悟空も…、あ〜ゆうキャラクター造形になったんです。
…次回作は、「介護士」を主人公にしたいと構想中。
アーシャちゃんや孫悟空みたいに、…特別な能力の無い主人公に。
いかに英雄性を持たせるか、かんばってこの新たな課題に取り組みたいと存じます…。
ところで…、ぼくは「アーシャ南の大陸に舞う」の連載を開始して以来。
…割とプライヴェートそっちのけで、創作活動に打ち込んでまいりました。
ちょっとその辺で、…片づけないといけないコトが溜まっちゃってるので。
しばらくおやすみをいただきます、「西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜」第二十八話」でちょっと予告してるんですが…。
ぼくの考えた創作料理のレシピのページなども制作したいので…、もしぼくの物語を楽しみにして下さってるから方がいらっしゃったなら。
…申し訳ありません、しばらく(そんなに長くではありませんが)やや脇道に逸れて活動させてもらいますよ。