再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その10

「うわっ、クレリック死んじゃった…。ど〜しよ…、このままじゃ全滅だ」

…「来福亭」で、純平と飲んでからまた数日。良太が勝美に愛を告白してから、…結局一週間が過ぎていた。

「ど〜やって、地上まで戻ったモノか…?このままじゃ…、全て無に帰すコトになる」

…勝美のついては、も〜諦めた良太である。フられた心の傷を癒すべく、…熱心に「ウィザードリィⅤ」にのめり込んだ。

「お電話よ、良太…」

何だまた純平か…、と良太は思う。…のんきなモノだ、こちらはそれドコロではない。「ウィザードリィⅤ」は、…オート・セーブだから全滅するとそこで記録されてしまい。やり直すには、も〜一度冒険者を育てあげ。全滅した地点から、死んだ冒険者を一人づつ引きあげなくてはならないのだ…。つまり…、事実上の一からやり直しである。

…「今日は初めての方、鈴代さんですって」

えっと、…良太は驚き。慌てて部屋を出ると、階段を駆け降りた…。

「良太…、騒がしいぞ静かにしろ」

…お風呂あがりに、居間でT.V.ニュースを眺めてる。お父さんから注意される、…良太はドキドキしながら受話器を耳に当てた。

「もしもし良太です、勝美さん…?」

受話器から…、ぼそぼそと「もしもし」が聞こえる。…しかし、勝美はそれ以上何もゆわない。

(あっ、…これはフられるパターンだぞ)

要するに、勝美さんは真面目な娘だから…。無視したりせず…、ちゃ〜んと連絡をくれたケド。…それは傷つけたくないからで、穏当なゆい回しを見つけよ〜としてるに違いない。

(ど〜せなら、…一思いにトドめを)

こ〜なってしまえば、もはや勝美さんより…。良太にとっては…、「ウィザードリィⅤ」のパーティである。…1ヶ月間毎日遊んで、何とかここまで育てたのだから。

「私、…あの」

良太は、下っぱらに力を込めた…。なんのなんの…、フられるぐらいお安い御用です。…ど〜せ時間さえ経てば、全ては忘れられる。

「良太さんとのお付き合いを、…お引き受けしよ〜と想うんです」

「えっ、マジで…?」

思わず口から出た言葉を…、反省する良太。

…「ごめん、へんなんゆっちゃった。でも本当にゆいの、…おれなんかで」

勝美は、またしても黙り込んでしまった…。これはど〜やら…、ホントに純平のゆった通りらしい。

…「良太さん、優しそ〜だから」

勝美の声は、…震えている。良太は取り敢えず、次の日曜日に…。デートする約束を取りつけ…、受話器を元の場所に置いた。

…「ちょっと、コンビニまでゆって来るわ」

コンビニまで自転車を走らせ、…お気に入りの「サッポロ黒ラベル」の500mℓ缶を購入し部屋に戻る。

(これは、ドえらい事態になってしまった…)

「サッポロ黒ラベル」500mℓ缶の…、プルタブをプシュッと開け。…1/4ぐらい、ゴクゴクと飲み干した。そして、…「セブン・スター」に火を点け一息吹かす。とにかく、一度落ち着かなくては…。とにもかくにも…、良太には来週の日曜日が。…楽しみでしよ〜がなかった、早くやって来て欲しい。またむずむずするモノを感じる、…「今晩もだな」良太は、「サッポロ黒ラベル」を今度は半分ぐらいまで飲ったのである…。