「おれはら減っちゃったな…、昼めし食お〜よ勝美さん。何か、食べたいモノある…?」
そごうの書籍売り場をあとにした二人は、…特にあてがあったワケではないから。…おしゃべりしながら、大宮の街をぶらぶらしていた。
「じゃあ…、モス・バーガーにしません?私、好きなんです…」
良太は何でもよかったから、…勝美の案内でモス・バーガーへと向かう。
…「モス・バーガー着いたら、良太さん何食べます?」
歩きながら…、良太に質問する勝美。
「おれ、モス・バーガー入ったコトないんだ…。いつも、…ミスター・ドーナツなの」
…勝美は、足を止めて振り返った。
「えっ…、それなら。ミスター・ドーナツでも、構わないですよ…」
頭を、…ぽりぽりかく良太。
…「いや、味とかで選んでるワケじゃないんだ。ミスター・ドーナツって…、コーヒーおかわり自由だから。煙草吹かしながら、何時間も居座るのにちょ〜どゆいんだよね…」
良太は、…勝美にモス・バーガーへの道案内を促す。
…「勝美さんの食べたいモノに付き合うよ、おれも初めてで楽しみだしさ」
そこからまた…、しばらく歩きモス・バーガーに入店した。
「てりやきチキン・バーガーが、大好きなんです…。私モス・バーガーではいつも、…てりやきチキン・バーガー食べてるんですから」
…レジ前に掲示してある、メニュー表とにらめっこする良太。
「じゃあ…、モス・チーズバーガーにしよ〜っと。この、オニ・ポテって美味そ〜だね…」
二人はレジに並んで、…それぞれのお金を支払い。…番号札を受け取ると、テーブルの席に座る。
「モス・バーガーのお店って…、何となくおシャレだなぁ。おれ、少し緊張する…」
良太は、…そ〜笑って。ポケットから「セブン・スター」を取り出すと、火を点けて吹かした。…しばらく勝美と、二人でお話をしてるウチに。やがて…、注文の品がテーブルに届けられる…。
「あっ何これ、…美味いジャン」
…一口かじつりついて、思わずもらす良太。
「よかった…、私もモス・バーガーは美味しいと想うんです。ちょっと、お高めですケド…」
勝美は、…美味しそ〜にてりやきチキン・バーガーをほおばった。
…お昼ごはんが済んだあとも、特別にゆくトコロも無かったから。二人は…、そのままモス・バーガーの店内でおしゃべりに興じる。勝美の語る言葉の中で、強く良太の印象に残ったのは…。
「私音楽は、…お父さんから。…Jazzのカセット・テープ作ってもらって、そればっかり聴いてるんですよ」
良太は…、「Jazzを聴く」勝美のその趣味のよさに、新鮮な感動を覚えた…。
「すごいね、…勝美さんJazzわかるんだ」
…恥ずかしそ〜に、勝美は手を振る。
「そんな大したコト…、ありません。ただ、ウチは私が生まれる前から…。お父さんの趣味で、…おウチの中でずっとJazzがかかってただけなんですから」
…良太の心は、「今だぞ」と告げた。
「あのさ…、おれカセット・テープ。自分で買って用意するから、もし手間じゃなかったら…。お父さんに頼んで、…おれの分も作ってもらえないかな?」
…勝美は、共通の話題が出来るコトを悦ぶ。
「もしよかったら…、お試しでお貸ししますよ。確かバッグの中に、一本入ってたハズだから…」
バッグの中から、…カセット・テープを取り出す勝美であった。