再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その14

「ど〜しょうど〜しょう…、やっぱカッコゆい」

一年ぐらい前に、エッチ💘なグラビア目当てで…。何の気なしに1号だけ買った、…週刊プレイ・ボーイのあるページを。…繰り返し繰り返し、熱心に眺める良太。

「勝美さん…、悦んでくれるかな?」

そのページには、当時流行したアメリカン・カジュアルの…。ファッション・スタイルが紹介されていて、…その中の、あるアイテムがことさらに良太の心を惹いた。

…「よし決めたぞ、今すぐ買いにゆこ〜」

良太には…、お金が無いから。全身の装いを、全て変えるのは不可能である…。だったら、…せめてこの一点だけでもとゆ〜思惑だった。

…お財布を開けて、キャッシュ・カードが入ってるのを確認すると。ジーンズとよそゆきのTシャツに着替え…、自転車に乗って駅前に漕ぎ出す。

「緊張する、うわ〜…」

駅前の月極駐輪場に自転車を停めると、…銀行に向かった。…途中少しでも緊張をほぐそ〜と、コンビニで「お〜いお茶」を購入する。

「いよいよだぞ…、覚悟を決めるんだ」

銀行に入り、A.T.M.の前に立つと…。ディスペンサーに、…キャッシュ・カードを挿入し。…暗証番号を入力した。

(3万円…、と)

3万円は、良太の貯金総額の半分をゆうに超える…。

「さぁゆくんだ、…も〜あと戻りは出来ないんだから」

…3万円を大切にお財布にしまうと、そのまま姫宮駅から。上りの各駅停車に乗り込み…、目的地を目指した。

「良太、ど〜したの大丈夫…?急に、…そんなに高いモノを買って」

東武伊勢崎線に揺られながら、良太の頭には。このお買いモノの結果を…、心配するお母さんの顔が思い浮かんでゆる。

電車が春日部駅に到着すると、一度ホームに降り…。改めて、…快速に乗り換えた。

…お袋に、ど〜言い訳したモノか。良太には…、考えがつかなかい。わかりやすく説明すれば、"恋人が出来てカッコつけたかったから"となるだろ〜が…。それでは、…何も良太の心情に触れてはいない。

…(うまくゆえないけれど、これは勝美さんの為なんだ)

良太としたら…、そこを汲んでもらいたいのだ。だがそれをゆったら、お袋は…。

「も〜少し安い"何か"を、…プレゼントしてあげたら?…贈りモノは、金額じゃないのよ」

とか何とかゆ〜であろ〜…、良太が自分なりに考えた「これは勝美さんの為なんだ」、とはこ〜ゆう考え方である…。

「自分がカッコゆくあるコトで、…少しでも勝美さんに満足してもらいたい」

…だが、良太はそれを敢えて口にはしなかった。それを口にすれば…、まるで自分が偽善者になったよ〜な気がするからである。

車窓から覗く、外の景色は…。建物の密度が一気に高まる、…電車は既に東京都を走っているのだ。

…(お袋と付き合い始めた時、親父は一体ど〜したろ〜?)

親父は…、男親だから良太の買いモノごときに。口出しなどしない、それはともかく…。親父には、…これとゆって趣味らしい「何か」はなく。…せいぜいお仕事のあとに、お気に入りのウィスキー。マッカランの12年を…、ロックでちびちびやるだけであろ〜。

「親父がこれまでに飲んだお酒の方が、余程高いさ…」

良太は、…上野駅で下車した。…駅から出ると、夕暮れの上野駅周辺は。お客さんを呼び込む声や外国人観光客など…、雑多ながら独特の活気がある。上野の地理について、何の知識もほとんど持たない良太であったが…。目的地の店舗は、…上野でも割と大きくそのうえ。…何軒か存在していたから、適当に人ごみに流されながら。歩くウチに…、程なく辿り着いた。

「いらっしゃいませ〜、店頭に出てゆなくてもサイズは在庫にもありますから…」

そ〜良太の目的地とは、…ABCマートである。…お店の中をうろついて、お目当ての品を見つける良太。ドキドキしながら手に取り…、眺めてゆるとさすがの貫禄だ。

「レッド・ウイングのブーツは、作りが大きいですから…。少し小さめでも、…全然はけますよ」

…迷ってると思われたのだろ〜、魅入られている良太に店員さんが声をかける。そ〜なのだ…、良太が一大決心で買い求めに。わざわざ上野まで来たのは、レッド・ウイングの赤いブーツを買う為なのだから…。良太は、…その店員さんにサイズを合わせてもらい。…レジで3万円差し出す、そして2、3千円のお釣りを受け取ると。片手にABCマートの…、白く縁取られた黄色いビニールの袋を下げ。日も暮れかかってゆる、上野のあとにする…。これが果たして成功なのか、…良太にはわからない。…しかし、良太の胸には確かな喜びが芽生えていた。