良太が、レッド・ウィングの赤いブーツを買ってから数日後の夜…。部屋で…、勝美から借りたJazzのカセット・テープを聴いてゆる良太。…すると外から、クラクションの音がする。良太は、…サンダルをつっかけおウチから出た。緑色のコペン、純平である…。
「少し待っててくれ純平…、まだ慣れなくて」
…車の窓が開き、純平が顔を覗かせた。
「よぅ良太何の話だ、…まぁゆいそこに停めてる」
純平は、車を動かして邪魔にならないトコロで停車する…。おウチの玄関に戻った良太は…、買ったばかりの。…レッド・ウィングの赤いブーツに、足を通して靴ひもを結び始めた。レッド・ウィングに限らないが、…一般的にブーツをはくのは。時間がかかる、ましてや初めてならなおさらであろ〜…。別に不器用でもない良太だったが…、結局5分ぐらいかかってしまった。
…「ホントに遅かったな、何してたんだ?」
良太は、…緑のコペンのドアを開けると。車内のライトが灯り、足を挿し入れる…。
「これだよ…、純平ど〜想う?」
…シートにもたれかかる良太、純平は初め何のコトだかわからないよ〜であったが。良太は、…足先を指で差し示した。
「なかなカッコゆいじゃないか、ど〜した勝美さんか…?」
わざわざ見てもらったモノの…、実際には照れくさい良太。
…「そ〜だよ、少しはカッコつけないとと想って」
純平は大笑いする、…ひとしきり笑うと真面目な顔に戻ってこ〜ゆった。
「それでゆいんだよ、お前にも遂に春が訪れたってワケだ…」
車を発車させる純平…、灯りは消えレッド・ウィングの赤いブーツも闇に紛れる。
…「悪いケド、ちょっとこれかけるぞ」
良太は、カー・オーディオに手を伸ばし…。純平のかけてゆたフィッシュマンズを止めて…、勝美から借りたカセット・テープをセットして再生ボタンを押した。
「何だよこれ、…Jazzじゃないか。お前、音楽に大して興味無かったろ〜…?」
純平に…、勝美のお父さんがJazzを好きで。…今度、カセット・テープを作ってもらうお話などをする。
「良太、…お前ゆい娘見つけたな」
緑のコペンは、夜の16号を下っていく…。二人は…、Jazzの調べをバックに。…いつものよ〜に、世の中がいかに退屈でツまらないか?ありとあらゆる言葉で、…こきおろした。とある24時間営業の、ファミリー・レストランまでやって来ると…。純平は駐車場に停車させ…、二人は中に入る。…大して美味しくもない、お代わり自由のコーヒーを。二人分注文すると、…良太は「セブン・スター」。純平は「マイルド・セブン」に、それぞれ火を点ける…。
「良太おれも面白いモノを持ってきてる…、見せてやるよ」
…バッグから、一冊の書籍を取り出しす純平。良太が目をやると、…タイトルは「Trainspotting」とあった。
「おっよさそ〜じゃないか、読ませてくれ…」
オレンジ地に白抜きの…、タイトル・ロゴ。…びしょ濡れになった、ユアン・マクレガー演じるマーク・レントン。何もかもが、…良太の心を惹く。
「最近まで、映画が渋谷で演ってたらしいんだが…。それはも〜終わっちまったんだ…、だがうわさじゃこの原作の方が。…断然面白いらしい、悪いが貸してはやれん。おれが、…まだ読み終わってないからな。もし読みたければ、おれが読み終わるまで待つか…。そ〜じゃなければ…、自分で買ってくれ」
…パラパラと、ページをめくる良太。マーク・レントン達の、…先ゆきの見えない未来と。それを、ドラッグで紛らわすしかない現実…。良太は…、自分の現在の状況をそこに見て取った。