再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その24

「こんにちわ初めまして、岡崎良太ですよろしくお願いします…」

茶店「コーヒー庵」の店舗裏側にある…、職員用通用口を良太は潜る。

…「おいっ伊藤、良太が来たから対応してやれ」

キッチンにゆる、店長はすぐに気づき…。ホールで接客している…、正社員さんを呼んだ。

…「お〜待ってたよ良太くん、ぼくはホールをまとめてる伊藤。君のトレーナーを務めるから、…取り敢えずユニフォームに着替えて。これ、あとで読んどいてね…」

正社員の伊藤さんは…、良太にユニフォームと社訓の小冊子を渡す。…すぐにユニフォームに着替え、店内に出る良太。

「色々話さなきゃならいコトは、…あるんだケド。論より証拠で、演ってみた方が早いから…。今コーヒー二つ…、お客さんに運ぶのね。…着いて来て、見といて」

キッチンから、…店長の声が響いた。

「コク深いコーヒーとほどよいバランスのコーヒー、入ったぞ…」

キッチンとホールを接ぐ…、カウンターにホット・コーヒーが二つ置かれる。

…「ゆくよ、良太くん」

丸いトレーを片手に取り、…正社員の伊藤さんは。ホット・コーヒーを二つのせて、歩き出す…。向かう先は…、テーブルに向かい合わせに座る。…ビジネス・スーツを着た、サラリー・マン風の二人だ。

「お待たせ致しました、…コク深いコーヒーのお客さまこちらになります」

コーヒー・カップの取手を右側にし、テーブルのうえ…。左側に座る…、お客さんの前に「コク深いコーヒー」を。…音も無く静かに、サッと置く。それを右に座る、…お客さんにも繰り返し。カウンターの前に、戻る正社員の伊藤さんと着いていく良太…。

「ぼく…、ちょっと煙草吹かすから」

…店内と休憩室を結ぶドアの前が、ちょ〜ど影になってゆて。お客さんからは見えない、…灰皿を手に。そこに立つと、正社員の伊藤さんは煙草に火を点けた…。

「コーヒー・カップは…、取手が右側になるよ〜にね。…あとは、音を立てないぐらいかな。カンタンでしょ、…次のお客さんは良太くんに運んでみよっか?」

しばらくすると、主婦とおぼしき三人組の女性達が…。「コーヒー庵」にやって来る…、正社員の伊藤さんは席に案内する。…主婦とおぼしき三人組の女性達は、おしゃべりしながら。メニューに目を通し、…やがて呼び鈴を鳴らした。

「良太くん、一応全部見といて…。いずれ時間帯によっては…、一人でお任せするコトもあるから」

…良太を連れて、注文を取る正社員の伊藤さん。カウンターの前に戻り待っていると、…キッチンから店長が二人を呼ぶ。

「さわやかな酸味のコーヒー二つとレモン・ティー、出るぞ…」

正社員の伊藤さんは…、にこっと笑った。

…「よしっ、じゃあ演ってみよ〜か。先ず、…そこの丸トレーを取って」

カウンターのうえに、丸トレーを置くと…。お客さんの飲みモノ三つを…、丸トレーにのせて。…良太は、丸トレーの両端を両手で支えて持ち上げる。主婦とおぼしき三人組の、…お客さんの待つテーブルの脇に立つと。お客さんに、正社員の伊藤さんは声をかける…。

「お客さま…、こちらの岡崎は今日が勤務始めてでして」

…すると、奥の席に座る女性が気がついたよ〜だった。

「あら、…岡崎さん家の良太くんじゃない」

良太は、あいさつを済ませると…。正社員の伊藤さんの指示に従い…、お客さまにお声がけする。

…「お待たせ致しました、さわやかな酸味のコーヒーのお客さま」

うっ、…と想う良太。全然、声が出てない…。

「それ…、私の」

…手を挙げるお客さんの前に、良太はホット・コーヒーを運んだ。カチャリ、…しまった。緊張してしまって、体が思うよ〜に動かない良太である…。