再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その29

「あっ、…やられちゃった。…やっぱり"メタル・スラッグ"は、最終面よりもこのステージ5が難しいんだよな」

今は11月の…、朝9:00。例の新宿で営業してゆる、地下のゲーム・センターで…。今日も良太は、…時間を潰していた。

…「ステージ5のボスさえ倒しちゃえば、クリアは目前だ。よ〜しも〜一息…、がんばるぞ」

この頃の良太は、時間通りにおウチを出発するモノの…。この新宿の、…地下にあるゲーム・センターで。…午前中は、たむろしてゆるコトが多い。

「よしよし…、無事"メタル・スラッグ"。全ステージ・クリアだ、ハイ・スコアにイニシャル記入して…」

1/3程残った缶コーヒーをすすり、…ゲームの終わった「メタル・スラッグ」の。…ゲーム機に座ったまま、良太は「セブン・スター」を吹かした。

「次は…、何にするか?そ〜だな、"グラディウスⅡ"にしよ〜。ちょっと、…待っててね」

…この新宿の地下ゲーム・センターで、だらだら過ごしていると。良太は…、まるで天国にゆるよ〜な心地を味わえる。この空間はまるで時間が止まったよ〜に、通い始めてから何も変わらない…。いつも同じT.V.ゲーム、…いつも同じお客さん。…複数のゲーム機から発される、ガチャガチャうるさい不協和音。そして狭い店内で…、何本も吹かされた煙草で。真っ白になった、空気…。良太は、…生まれて初めて自由を謳歌していると実感した。

…缶コーヒーの残りを、グイッとあおると。自動販売機脇にある…、ゴミ箱に空き缶を捨て。使ってる灰皿を持って、「グラディウスⅡ」のゲーム機に座る…。

「装備はどれにするかな、…ど〜にも"グラディウスⅡ"は難しくて」

…中学・高校の六年間、良太はずっと部活漬けだった。モチロン学校の帰りに…、春日部に寄って。部活の仲間と遊んだりしたが、それははっきりゆって些事である…。翌日になれば、…またハードな練習が待ってゆるのだから。…さっさと帰って眠らなければ、いくら若いとゆっても体がモたない。

「おれダメだな〜…、この3面のボス一体ど〜やって倒すんだろ?」

この新宿とゆ〜、街の空気もよかった…。妖しくて退廃な、…カオスの空気。…勝美から、Jazzのカセット・テープを借り。純平から…、「Trainspotting」を紹介されて始まった。アート・カルチャーへの憧れは、新宿の街で結実しつつあった…。

「何度やっても無理だ〜、…おっそろそろ時間かな?」

…良太が腕時計を見ると、時間は10:30になろ〜としてゆた。そろそろ大学に向かわなければ…、午後の授業にも間に合わない。地下ゲーム・センターを出て、良太は京王線の乗り口を目指す…。しかしその脳裏に、…突然。…こんなイメージが、降って湧いた。

「ここからゆっくり歩いてれば…、TOWER RECORDSがも〜開店するなぁ」

京王線の乗り口に、背を向ける良太…。歩き出した良太は、…不思議と罪悪感はそれ程感じなかった。…それよりも、新しくリリースされる。JazzのC.D.を漁れる…、そんなわくわくした気持ちで良太の心はいっぱいである。