再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その30

「メリー・クリスマス…、勝美さん。今年も一年、ありがと〜…」

生ビールのジョッキを、…片手で掲げ差し出す良太。…勝美はそこに、生ビールのグラスでカチンと触れて二人は乾杯する。

「色々ありましたけれど…、あとわずかですね」

12月24日の夕方6:00、良太と勝美は「来福亭」でクリスマス会を開いてゆた…。新宿の街に、…気の利いたお店を知らないでもない良太だが。…あまり遅くなると、勝美さんのご両親が心配するだろ〜とゆ〜のと。都内のお店で実際食べてみて…、ご近所の「来福亭」のお味が相当美味しいコトを知ったのである。

「ウチでクリスマス会なんて、バカゆってんじゃないよ…」

「来福亭」のダンナさんは、…初め良太の頼みを一も二もなく突っぱねた。

…「いやでもさ、例えば春日部とか。都内のお店なんかより…、ダンナさんの方が腕がゆいんだ。ほらおれが何度か連れて来た、あの娘勝美さんってゆ〜んだケド…。勝美さんも、…この"来福亭"の味がお気に入りで。…だから、やってもらえないモンかなぁ?」

頭を下げる良太に…、「来福亭」の奥さんが助け舟を出してくれる。

「やってあげたらゆいじゃない、良ちゃんがよく連れて来る娘でしょ…?あなたの味を望んで下さってる、…ってゆ〜んだから。…お客さんは大切にしないと、可愛いらしい娘よね。ダメよ良ちゃん…、浮気なんかしたら」

奥さんの加勢に、「来福亭」のダンナさんも遂に折れた…。

「そこまでゆ〜んじゃ、…しょ〜がねぇ。…じゃあ良太、一人1500円だな。それで…、四皿出してやる。ゆいか、飲み代は別だぞ…?」

脇で聞いていた、…純平も興味津々である。

…「おれの時も頼むよ、ダンナさん。このお店安くて美味しいから…、女性口説くのに打ってつけだ」

「お前は、飲酒運転止めてからだ…」

そんなワケで、…テーブルのうえに。…最初のお皿、ギョーザ、シューマイ、春巻きの。点心盛り合わせが…、運ばれた。

「テニス・サークルってゆっても、ほとんど遊びなんですね…。みんな、…テニスしたいのか飲み会したいのかわからないぐらい」

…勝美は、大振りのシューマイを。小皿にのせて…、はしで崩す。

「私は、最初の一杯だけ…。ビールお付き合いしたら、…あとはウーロン茶でごまかしてますから」

…生ビールのジョッキを、良太はぐいぐい傾けた。お酒で勢いをつけて…、プレゼントを渡す作戦だ。

「勝美さん、これおれからのクリスマス・プレゼント…。気に入ってくれたら、…嬉しいな」

…開けてもゆいか尋ねる勝美と、うなずく良太。勝美が包装を丁寧にはがすと…、中から出て来たのは。白地に濃い青とオレンジの、あのスカーフである…。

「これ、…あの時銀座のお店で。…良太くん、高かったでしょ?」

良太は…、生ビールをぐいぐい飲んだ。

「あのあと、お給料が出たら…。すぐ一人で銀座にいったんだ、…そしたらまだ。…残ってたから、買って取っといたんだよ」

思わず…、顔をほころばせる勝美。

「ありがと〜、良太くん…」

それだけを、…口にした勝美である。…しかし心の中では、これで会えない時間もさびしくない。と…、想ったのだ。