再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その31

ピピピピ…、新宿のDisk Unionで。中古のJazz C.D.を眺めてゆた、良太の携帯電話に着信が入る…(ちょ〜どこの頃、…携帯電話が一般に普及し始め。…良太も、つい最近手に入れたばかりだ)。手に取って液晶画面を眺めると…、アルバイト先の「コーヒー庵」からである。「もしもし」と電話に出ると、相手は正社員の伊藤さんだ…。

「もしもし、…ぼく伊藤だけど今電話大丈夫?」

…「ちょっと待って下さい」、と良太はお店の外に出る。

「あの〜…、申し訳ないんだけれども。遅番の悠紀ちゃんが、急に熱出しちゃったらしくて…。今日来られないってゆ〜んだ、…良太くんに代わりに頼めないかな?」

…腕時計を確認する、良太。今からすぐ帰れば…、何とか間に合いそ〜だ。

「ゆいですよ、任せて下さい…」

良太は、…それだけ答えると携帯電話を切る。…ため息を吐く、良太。賢明な読者さん達は…、すでにお気づきかもわからないが。良太が新宿にいる、とゆ〜コトは…。今日は、…これから(本来ならも〜)大学のある日なのだ。

…「しょ〜がないよな、だってさ」

自分が悪いコトをしてるとは…、良太は想わない。しかし大学に通う、お金を出してくれてゆる…。両親には、…罪悪を感じた。…それでも、くよくよ考えてる時間は無い。素早く行動しなければ…、「コーヒー庵」の遅番に間に合わなくなってしまうのだ。急いで、新宿駅に向かう良太…。

何とか、…「コーヒー庵」の遅番の時間に間に合い。…業務をこなして帰ろ〜とする、良太に店長は声をかける。

「時間あるか…、良太?」

明日の予定は、特にない…。「大丈夫ですよ」、…と良太は返事をした。

…「それなら、休憩室で待ってろ」

それだけゆ〜と…、閉店業務に取りかかる店長。「セブン・スター」を休憩室で吹かす、良太だったが…。あまりに退屈なので、…正社員の伊藤さんを手伝いを買って出る。…良太は、床をモップがけし始めた。

「ぼく…、今日"何か"ヘマしましたかね?」

店長のゆいつける、用事の内容がわからない良太は…。正社員の伊藤さんに、…尋ねる。

…「いや、何も問題なかったよ。それよりもむしろ…、突然呼び出して。来てもらっちゃったんだし、お礼の一つもゆえばゆいのに…。でもあの性格だから、…悪いね良太くん」

…各テーブルのお砂糖とミルクを、良太が補充していると。休憩室から…、店長に呼ばれた。

「おれが作ったんだ、これ食って今日はゆっくりやすめ…」

テーブルのうえには、…ハムと卵だけのシンプルなチャーハンがのってゆる。…一口食べて、良太は泣きそ〜になった。高校生活の最後に…、県大会で一本負けを喫してから。何にも打ち込めなかったが、遂に自分の居場所を見つけたのである…。

「何だ、…美味しそ〜な香りがすると想ったら。…ぼくの分は無いの、店長?」

正社員の伊藤さんが…、灰皿を片手に。煙草を吹かしながら、休憩室に入って来た…。

「お金払うなら、…食わせてやるぞ。…これも、お店の経費だからな」

フライパンを洗いながら…、店長は語る。