…「良太、あなた一体。この一年間何やってたの、…この成績はど〜したってゆ〜の?」
3月の後半に入り、遂に今年一年の…。成績表がおウチに送られて来た…、そこでは良太が。…本来履修すべき単位の、1/3ぐらいしか。習得できてないのが、…明らかになったのである。お母さんは、思わず悲鳴のよ〜な声をあげた…。
「…」
…良太は、黙った。もちろん、…当の良太には。いずれこ〜なると、当然少し前からわかり切ってゆる…。
「あなたが…、大学に通うのにどれだけ。…お金がかかってると思うの、こんなんじゃこれ以上お金は出せません」
リビングの、…時計に良太は目をやった。そろそろ、アルバイト先の「コーヒー庵」に…。出勤しなくてならない…、それに今話してもらちは開くまい。
…「取り敢えず、おれも〜アルバイトだから。お話は、…また帰ったらにしよ〜よ」
そ〜伝え、「コーヒー庵」に自転車で出発する良太…。それにしても…、「コーヒー庵」から帰って来るまでには。…今後ど〜するのか、自分の中ではっきりさせておかなくては。
「コーヒー庵」でアルバイトが始まり、…途中お客さんもハけ。一段落すると、正社員の伊藤さんはホールへの…。出入り口のかげで…、煙草を一服し始めた。
…「伊藤さんは、大学どこ出てるんですか?」
失礼かな?とも想うが、…良太は何の気なく正社員の伊藤さんに聞いてみる。
「え、埼玉大学…。どう…、すごいでしょ?」
…煙草から煙をもくもくさせながら、答える正社員の伊藤さん。
「いやホントですね、…国立大学じゃないですか」
煙草はまだい〜かな、と良太はまだ吹かさなかった…。
「良太くん…、知らないでしょ。…ぼく頭ゆいんだから、大学出るまではそりゃあエリートだったのさ」
良太は、…内心「確かに」とうなずいてゆる。正社員の伊藤さんの、お客さんの細やかな…。ニーズをキャッチする力は…、経験の違いを差し引いても真似出来るモノではない。
…「ちなみに、店長はどこなんです?」
余計なコト聞くと、…怒られるから。良太は、声のトーンを落としてコッソリ尋ねた…。
「あの人は…、大学なんて出てない出てない。…高校すら、出てないから。中学卒業したら、…すぐどこかのお店で修行に入って。それ以来、料理一筋(今はコーヒーだが)だよ」
正社員の伊藤さんは、手にした灰皿で吸がらをもみ消す…。
「実はぼく…、今年全然単位採れてないんですよね」
…正社員の伊藤さんに、現在自分の置かれてる状況を良太は打ち明けた。
「そりゃ、…よくないね。大学くらい出といた方が、あとあと"何か"と便利だと思う…。まぁ…、ぼくがゆっても説得力無いケドも。…もしかして、大学サボって働いてるんじゃないよね?」
良太は、…笑ってごまかす。
「いらっしゃいませ、お客さま…」
正社員の伊藤さんに…、唱和する良太。…心の中は、すっきりしている。大学なんてやめてしまお〜、…何の夢も希望もないのに。お金ばかりかかって、本当にバカみたいじゃないか…?そして…、自分の就きたいお仕事が見つかるまでは。…この「コーヒー庵」に、お世話になればゆいのだ。