再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その37

…良太が、フリーターになってしまい。一年ぐらいが経った、…ある春の日の「コーヒー庵」。午後4時を回った店内には、一組のお客さんがいる…。

「失礼致します…、お冷やはいかが致しますか?」

…良太がテーブルに伺うと、お客さんである長髪の男は。グラスを、…アゴで指図した。同じテーブルに、他に二人のお客さんがいるが…。いずれも…、柄はよくない。

…「店長、何とかなりませんかね?あれじゃ怖がって、…他にお客さんが来れませんよ」

店長に相談する、正社員の伊藤さん…。この三人のお客さんは…、大体午後2時頃来店され。…かなりの量を、飲食された。これだけ消費してもらえるのなら、…先ず上客なのだが。

「しょ〜がないだろ、相手はお客さんなんだから…。モノを壊したりしてるワケじゃないし…、まだ常識の範囲内だ」

…そのウチ、二人のお客さんは連れ立って。お店の外に出てしまい、…長髪の男だけが残る。こちらをチラチラ見てる気がした、良太は警戒する…。やがて入口の脇にある…、トイレに入った。

…「いらっしゃいませお客さま、何名さまでしょ〜か?」

正社員の伊藤さんが、…新しくいらっしゃったお客さんを相手にし始めた時。トイレから出て来た長髪の男は、そのままフラリと「コーヒー庵」からでてしまう…。

「待て…、この野郎」

…一瞬で血が沸き立ち、怒号と共に飛び出した良太。バレたのに気がついた、…長髪の男は慌てて走り出す。しかしみなさんご存知のよ〜に、良太はほぼ毎日走り込んでいるのだ…。通りを300m先ぐらいゆったトコロで…、追いついた良太は。…長髪の男の肩に、手をかける。

「おいお前、…お金を支払うんだ。みんな、どんな気持ちで働いてると想ってる…?」

逃げ切れないと悟った…、長髪の男は。…良太に振り返ると、その手を振り払った。

「テメェ、…多少ガタイがゆいからって。三人相手に、勝てると思ってんのか…?」

良太はいつの間にか…、先に「コーヒー庵」を出た。…柄の悪いお客さん二人に、背後を取り囲まれている。良太の胸ぐらを掴む、…長髪の男。その瞬間、良太はその腕を握り返し…。鮮やかな一本背負いで…、地面に投げ伏せた。

…「グェッ」

恐らく受け身を知らないのであろ〜、…長髪の男は。頭を打ったのか、立ちあがって来ない…。

「お前らが…、ど〜してもお金を払わないなら。…こいつの右腕をこのままへし折って、それで帳じりを合わせてやる」

倒れている長髪の男の、…良太は右腕を引きあげた。

「わかった、わかったから…。そこまではやらないでくれ…、お金払うから」

…良太の背後に回った、二人の柄の悪いお客さんのウチの一人が。財布から5000円を取り出して放る、…それを地面から拾った良太。

「ちょっとそこで待ってろ、今おつり持って来る…」

「おつりなんかいらねぇから…、とっとと消えてくれ」

…二人の柄の悪いお客さんは、そ〜吐き捨てると。長髪の男を抱え起こして、…どこかへ逃げ去る。そこに、血相を変えた店長がよ〜やく追いついた…。

「店長…、大丈夫です。…お代金は、頂戴しました」

良太は相当ゆい体つきなのだが、…店長は。それよりも、一回り背も高く体も大きい…。

「よくやった良太…、上出来だぞ。…怪我は無いな、無事か?」

店長に、…良太はコトの推移を説明した。

「警察には突き出さなくてもゆいだろ〜よ、お前にそこまで…。コテンパンにやられたら…、二度と"コーヒー庵"には近づくまい。…何、おつり?そんな余計なお金は、…レジのお金が合わなくなっちまうから。受け取れんな、お前が取っとけばゆいだろ〜…」

良太は…、店長と一緒に「コーヒー庵」まで。…歩いて帰りながら、こ〜考える。「そ〜だレジの脇に募金箱があったから、…あそこに入れればゆいや」と。