「はぁっはぁっ…、実際走ってみると。そこそこゆい距離だな、まぁでも高校時代に比べれば…」
「幸楽苑」の面接を受け、…無事採用された良太は。…本日初出勤、早速ランで施設まで通う。
「今ぐらいの季節は…、ホント走ってて気持ちゆい。冬になっちゃうと、また体がなかなか温まらないから…」
季節は、…夏を回って既に秋だ。…良太は、現在22歳である。
「おはよ〜ございます…、岡崎良太出勤しました」
「幸楽苑」の入り口をくぐり、事務所にあいさつする良太…。良太に気がついた事務所の職員は、…職員用通用口まで案内してくれた。…ナンバー・キーの暗証番号を教わり、中の男子更衣室に入る。
「あの〜すいません…、煙草はどこで吹かしたらゆいですか?」
着替えても、まだ20分程時間があったので…。事務所の職員に良太は尋ねた、…職員用通用口のそばに灰皿があるらしい。
…「ここで煙草吹かしてたら、すぐみんなと顔見知りになっちゃうなぁ」
「幸楽苑」の敷地に入って職員用通用口までの通り道に…、灰皿は置いてあった。良太が「セブン・スター」を吹かしてると、二人程女性の職員が出勤して来る…。「おはよ〜ございますよろしくお願いします」と、…良太があいさつしていると。…先日の、近藤副主任がやって来た。
「おはよ〜良太くん…、今日から出勤だったね。しばらくの間、ぼくがトレーナーとしてつくから…。あゆいよ、…ゆっくり吹かしてて。…まだ時間あるでしょ、終わったらあとで食堂に来て」
お言葉に甘えて…、良太は根元まで煙草を吹かし切る。それから緊張して食堂に向かうと、みんなは忙しそ〜に動き回ってゆた…。
「良太くん、…早速ごめん。…この時間は、みんな朝ごはん終わって。寝てもらわなきゃならないから…、そこの田代さんを見守って。ちょっと待ってて、気をつけてね油断すると立ちあがっちゃう…」
それだけ伝えると、…近藤副主任は入居者さんの一人と。…おトイレに入っていく、残された良太は田代さんと一対一である。
「おれはよォ…、車イスなんていらねぇんじゃねぇか?」
「ど〜ゆう意味?」と疑問を持つ良太だが、まさかそのまま従うワケにもゆかない…。
「田代さん、…車イスに座ってらっしゃれば。…安全ですから、無理しちゃいけません」
良太は言葉で制しよ〜とするが…、田代さんは聞く耳持たない。
「待ってろ今やって見せっから、ホレ見てろ…」
そ〜ゆうと田代さんは、…よろよろしながら立ちあがってしまった。…慌てて体を寄せて、腰と肩を支える良太。
「離せ離せよ…、おれは一人で平気なんだ」
田代さんは不穏な空気をかもし出す、しかし良太は…。「これは手を出すコトはない」と勘で
読む、…そしてさらに体を寄せてピッタリ密着させた。
…「いや〜良太くん、ご苦労さま。はい田代さんおトイレゆくよ…、ちゃんと座ってね」
田代さんと、二人で抱き合うよ〜に立ち尽くす良太に…。近藤副主任が気がついてくれる、…実際には5分ぐらいだったのだろ〜が。…良太には一時間ぐらいに感じられた、近藤副主任は。田代さんの肩を抑え…、車イスに座らせてしまう。それは力には力なのだが、決して力任せではないのだ…。