再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その59

グループ・ホーム「幸楽苑」に、良太が勤めて3ヶ月が経った…。近藤副主任につきっきりで見てもらった…、トレーニングも既に終え。…取り敢えず戦力として、一人に数えられてゆる。そろそろ夜勤のシフトに組み込んではど〜か、…とゆ〜お話も聞かれ始めていた。当の良太は、仲のゆいご利用者さんが出来たりして愉しくお仕事している…。

「おれは…、こんな変わった味つけじゃなくて。…もっとシンプルなのが食べたいよ、さばの塩焼きとかさ」

幸楽苑」の入居者さんの一人、…石井さんは良太にボヤいた。

「あ〜なるほど、確かにそ〜ですね…。ぼくも…、さばの塩焼きなら大歓迎だな。…何でだろ、施設のお料理は変わった味つけのが多い気がしますよ」

石井さんは、…左半身に片マヒがあって。車イスで生活してゆるが、認知症はそれ程進んでいない…。元々の利き手利き足が右なので…、少し準備して差しあげれば大抵は自分でこなせた。

…「塩焼きは、お魚が美味しくないと全然美味くないから。きっと安いお魚で味つけをごまかしてるんだろ〜、…悪い施設だ」

認知症が進んでないので、逆にゆえば施設のサービスや介護士の態度にうるさく…。みんなからは…、「厄介なご入居者さま」とうとんじられ気味だが。…良太は不思議な程ウマが合い、石井さんの介助はほとんど良太に任されている。

「あの佐藤ってヘルパーゆるだろ、…アイツはおれのコトキライなんだよ。だからおれがおトイレ終わってんのに、なかなか介助に来ないんだ…」

「そんなんないですよ…」、と良太は取り敢えずご返事しておいた。…お昼ごはんが終わったら、歯を磨いてお昼ねである。

「あっ良太くん、…そんなに歯みがき粉つけてくれるな。ちょっとだよちょっと、おれはお金あんまりないからもったいないだろ…?」

部屋に戻ると洗面所で…、良太は歯ブラシに歯みがき粉をつけて石井さんに渡した。…石井さんはこの歯みがきが長いと、介護士からは不満がもれる。

「あ〜ぁはらもいっぱいになったし、…あとはおねんねよ。考えよ〜によっては、贅沢な暮らしだな…。ま…、欲をいやぁ。…ここに黒霧島がありゃあ、良太くんに水割りを作ってもらうんだが」

利き足である右足は踏ん張れるので、…車イスからベッドへの移乗も力はほとんど必要ではなかった。

「良太くんちょっと待ってくれ、左脚の角度が悪い…。それだとあとで痛むんだ…、直角より少し開くぐらい。…そ〜そこそこ、やっぱり良太くんだな」

そんな石井さんは、…ある日良太にこ〜語る。

「良太くんは、言葉遣い丁寧なのはゆいんだけれども…。少し丁寧過ぎるな…、一緒に暮らしてるみたいなモンだし水臭いじゃないか」

…この石井さんの発言は良太にとっての、「サービス」とゆ〜概念をブッ壊した。3年以上「コーヒー庵」でアルバイトして、…良太なりに「接客」を勉強し。そのうえでの、ここ「幸楽苑」での態度である…。

(でも…、ゆわれてみれば)

…例えば、近藤副主任はもっとフランクな言葉遣いであった。それは、…他の介護士も同様である。良太からすると、「それは失礼なんじゃないか?」と想えるケースもあるが…。「これはよく考えてみる必要がある…」、と良太は。…「介護に於ける入居者さまとの精神的な距離」について、本格的に考えを巡らせていくコトになる。