「おつかれさまでした、それではかんぱ〜い…」
ここは幸手市の国道4号沿いにある…、焼き鳥屋さん「とりよし」…良太はグループ・ホーム「幸楽苑」で働く仲間と、今日は飲み会だ。
「今日はタイヘンでしたね、…近藤副主任。田代さんの転倒事故があったから、ナースさん何てゆってました…?」
共に飲んでゆるのは…、近藤副主任と安野さんである。安野さんは女性の介護士で、良太と同じぐらい身長のある。…背の高い細身の女性だ、細身だとはいっても。運動神経抜群なので、…並の男よりずっと移乗などもうまいのだ。
「本当にびっくりしたよ、やっぱり常に誰か一人ついてないとダメかな…。ナースさんは大丈夫とゆってたけれど…、お年がお年だから何があるかわからないモノ」
…心配そ〜にしながらも、生ビールをグイッとあおる近藤副主任。
「おやつ直前のあの時間は、…意外と忙しいんですよ。みんな、自分のお仕事に気を取られた隙にでしたから…」
ねぎまを串から外して…、安野さんははしでツまんででゆる。
…「危機管理に対する考え方として、ヒヤリ・ハットの回数が増える程。事故の可能性は高まる、…とはゆわれてるんだ。で確かにそれはわかってる、でも人員も限られてるし…」
良太は…、二本目の「セブン・スター」に火を点けた。
…「ぼくはその時、桜井さんのおトイレ介助してたんです。だから現場は見てないんですが、…それだけじゃダメなんですよね。ちゃんと、全体の流れを把握してないと…」
それからも、三人でお仕事についてお話していると…。「とりよし」の戸がガラガラ開き…、新たなお客さんがやって来る。
…「あれ、飯高主任じゃないですか?」
安野さんが気がつき、…手を振って合図した。
「あぁ、ぼくが呼んだんだ…。色々とお話したいコトが溜まってて…、お仕事時間じゃ足りないから」
…テーブルにつくと、上着のポケットから「マルボロ」を取り出す飯高主任。
「みんなこんばんは、…お邪魔しちゃって悪かったね」
飯高主任に、近藤副主任近藤副主任はメニュー表を手渡す…。
「取り敢えず生ビールもらお〜かな…、すいません生ビール一つ」
…店員さんに差し出されたおしぼりで、飯高主任は丁寧に手を拭った。
「良太くん、…飯高主任とはあんまり面識ないでしょ。飯高主任は、ほとんど夜勤だからねぇ…」
飯高主任は店員さんから生ビールを受け取ると…、軽く一飲みする。
…「人手が足りなくて、申し訳ない。お昼に起きてるコトは、…近藤副主任に任せっ放しで。本当なら自分で日勤やって、自分の目で確認しないと…」
まだ日勤にしか入っていない良太と…、月に8回は夜勤をこなす飯高主任は。…朝夕、日勤と夜勤が入れ換わる際に顔を合わせはするモノの。ちゃんとお話したコトはなかった、…飲み会の話題は自然飯高主任への報告になっていく。お話が一段落したトコロで、飯高主任は良太の方へ向いた…。
「そろそろ夜勤ど〜かな…、良太くん。…お願いしないと回らないんだ、ぼくがトレーニングするからさ」
良太は気持ちを引き締める、…これで遂に一人前なのだから。