再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その62

「あれっも〜そんな時間、…そろそろ起きなくっちゃ」

…時刻は午後三時、良太のお部屋で目覚まし時計のアラームがピ・ピ・ピと鳴る。

「全然眠れてないケド…、今晩ホントに大丈夫なんだろか?」

今日は飯高主任との、初めての夜勤だ…。少しでも寝ておこ〜と、…午前中からお布団の中で目をつぶる良太だが。…体が慣れてゆないので、全く寝つけなかった。

「先にお湯沸かしとくか…、その間に色々やっとこ」

お水の入ったやかんをガス・コンロにかけてから、ひげをそって顔を洗う良太…。お母さんの意見を取り入れて、…この日の為に新しい水筒を買ったのである。…そこに少しでも眠気を覚ます為、インスタント・コーヒー「マキシム」を濃いめに淹れて持ってくつもりだ。

「これでよし…、とじゃあゆってきま〜す」

お母さんからお弁当を受け取ると水筒と一緒に、バック・パックに入れ…。グループ・ホーム「幸楽苑」に向かって、…良太は走り出しす。

…良太は30分程走って、午後四時には「幸楽苑」に到着した。夜勤の始業は午後五時からだが…、何といっても初めてなのだし。出来るだけ、飯高主任より早く入っておきたい。更衣室で良太が着替えてゆると、何だかカタカタ音がした…。

(これは隣のお部屋からだな、…パソ・コンのキーボード叩く音じゃないか)

…別に不審でもないので、ゆっくり着替え。それから隣の職員用休憩室を覗くと、飯高主任は既に来ていたのである。

「こんにちは良太くん…、も〜来てたんだずい分早いね」

良太に気づいた飯高主任は、目線を良太に向けあいさつを済ませると再びノート・パソコンに向き直った…。

「早いのは飯高主任じゃないですか、…ど〜されたんです?」

…良太としては、何とな〜く休憩室に入りずらい感じだ。

「うんちょっと仕あげたい書類があるんだ…、あっ気にしないでくつろいでもらって」 

そ〜はゆわれても、まさか飯高主任がノート・パソコンでお仕事なさってるわきでボンヤリしてるワケにもゆかない…。「煙草吹かして来ます」、…と飯高主任に告げると。…良太は自動販売機で缶コーヒーを買い、喫煙所にいった。

(さすがに主任さんともなると…、課せられる業務が色々タイヘンなんだな)

ポケットから「セブン・スター」を取り出すと、火を点けて吹かす良太…。30分ぐらいすると、…飯高主任も「マルボロ」を吹かしに一度出て来る。…良太は、特にするコトもなく冬空を見あげ時間を潰した。

さて良太が「幸楽苑」に到着してから…、50分ぐらい経ったので。良太は、そろそろお仕事だと休憩室に向かう…。休憩室のドアを開けると、…携帯電話のアラームが鳴る中飯高主任は仮眠を取っていた。

…「ごめんごめん、寝過ごすトコだった。ぼく煙草一本だけ吹かして来る…、すぐ戻るから」

良太に起こされた飯高主任は、そ〜ゆうと施設の外に出る…。そして2、3分ぐらいすると、…すぐに戻って来た。

…「じゃあ夜勤は先ず引き継ぎからだから、会議室にゆこ〜か」

会議室は…、更衣室の反対側にある。飯高主任のあとに続いて、良太も会議室に入った…。

「こんにちは飯高主任、…あっそ〜なの良太くんは今日が夜勤デビューなのね」

…会議室には安藤ケア・マネージャーと、日勤の介護士それからナースさんが待っている。「遅くなりましたすいません…」、と頭を下げる飯高主任。それからすぐ、引き継ぎが始まった…。

この「引き継ぎ」とゆ〜のは、…日勤から夜勤。…夜勤から日勤に、一日二回行われる。どこの職場にもある…、朝礼や夕礼とゆ〜ヤツだ。どこでもそ〜であるよ〜に、介護施設の場合も業務について連絡や伝達がおこなわれるのであるが…。入居者さんの健康状態が主で、…体調や食事の摂取量それに排尿便の回数などなのだ。…大げさではなくそれは時に入居者さんの生命に直結するので、良太はまとまらないなりに。必死にメモにペンを走らせる…、一方の飯高主任は慣れてゆて要点をスラスラまとめた。