…「さっすが勝美さんやっぱ片づいてるね、おれのお部屋とは大違い」
春になって大学を卒業し、…晴れて保育士となった勝美は。実家の近くで一人暮らしを始めた、良太は勝美の住むアパートに遊びに来たのである…。
「良太くんが遊びに来てくれるから…、片づけたんです。…普段は、こんなにキレイじゃありません」
勝美のお部屋は至ってシンプルで、…目立つのはパラッパのぬいぐるみぐらいだ。
「おっノート・パソコンだ、おれも憧れるケド使い途ないし…」
机のうえにあるノート・パソコンを…、開く良太。
…「それお仕事で使うんです、自分で持ってると"何か"と便利だから。インターネットにも接がってますよ、…やってみます?私その間に、お昼ごはん準備しちゃいます…」
初めてのインターネットに…、良太は興味津々である。…Sonny Rollinsとかスイング・ジャーナルとか、適当に言葉を選んでは検索した。
「今日のお昼ごはんは、…良太くんが食べたがってたから揚げにしました。…たれ漬けに挑戦してみたんですがケド、このレシピインターネットで調べたんですよね」
勝美はテーブルのうえに…、たれ漬けのから揚げと千切りキャベツののったお皿。それにごはん、お味噌汁、ぬか漬けを並べる…。
「おれも〜おなか空いちゃって、…いただきま〜す」
…お味噌汁をすすると、そのままたれ漬けのから揚げにかぶりつく良太。
「こ〜していつも…、勝美さんのごはん食べてるジャンおれ?そ〜すると、だんだんコンビニエンス・ストアとかファミリー・レストランなんかで…。食べらんなくなっちゃってるんだ、…あ〜ゆうトコのはみんなしょっぱくて。…ぬか漬けもホント美味しい、これも手作りでしょ」
パクパクもりもり…、良太は勝美の倍以上食べるのだ。
「ぬか床を実家からわけてもらって来たんです、ウチのはおばあちゃんの頃よりもっと前から使ってますから…」
冷蔵庫からおかわりの生茶を運んで来て、…勝美は良太の湯呑みに注ぐ。
…「あ〜美味かった、おなかいっぱいだぁ」
おかわりのごはんまで…、ごはん粒一つ残さずたいらげると。良太は食器を流しに持ってゆき、それから勝美のお部屋をいったん出て…。「セブン・スター」を一本吹かした、…良太が戻ると勝美はキッチンで洗いモノをしている。
…(あっ、これはいけない)
食器を洗う勝美に…、思わず催してしまう良太。「ここには他に誰もいない」、…と頭の中をグルグルさせてゆると勝美が振り返った。
「良太くん、そこのソファで少しお昼ねしたらど〜ですか…?」
その勝美のゆい方が…、また警戒をかんじさせない。…それが良太のグルグルする頭を、正気に戻した。しかし、…良太の中にはもやもやした気持ちが残る。ソファに横になりながら良太は想う、「こりゃあ今晩も勝美さんのご厄介になるコトになる」と…。